地下水位低下工法の井戸方式として
- ディープウェル工法
- ウェルポイント工法
- スーパーウェルポイント工法
などの具体的な工法が挙げられます。
今回この中でも、ウェルポイントについてまとめさせていただきます。
目次
ウェルポイント工法の方法・特徴について
ウェルポイント工法は、真空ポンプにより地下水を揚水する工法です。
ライザーパイプの先端にウェルポイントと呼ばれるストレーナ濾過網を持った吸水管を取り付け、地盤に小さな井戸を多数打ち込んで、ポンプで真空吸引して揚水し、地下水位を低下させる強制排水させます。
負圧を利用した強制排水なので水位低下効率は高く、水位低下量約3.5m、設置間隔約0.8m〜2.0m間隔で、揚水高さは約6〜7mです。
透水係数が小さい土質(10-4cm/s〜10−5cm/s)にも適用できますが、砂地盤で実施されることが多いです。
ウェルポイント工法は、以下の部分構成で行われます。
【ウェルポイント工法の部分構成】
- 取水部:ウエルポイントポンプ、ライザーパイプ、スイングジョイント
- 集水部:ヘッダーパイプ(5mものが一般)
- 排水部:セパレータータンク、真空ポンプ・ヒューガルポンプ
- 計器類:真空計、水量計
- 工事用機器:ジエットポンプ
排水ポンプ(ヒューガルポンプ)と真空ポンプ(バキュームポンプ) で構成されており、モータ駆動方式の違いによって分離型と複合型に大別されます。
- 分離型 : 排水ポンプと真空ポンプが分離され、2台のモータで個々に駆動する方式
- 複合型 : 排水ポンプと真空ポンプがユニット化され、1台のモータで駆動する方式
複合型は防音ケースに収められ、防音型として使用されることが多い。
ウェルポイントの施工方法・施工手順
ウェルポイントの施工方法・施工手順は以下の通りです。
【ウェルポイントの施工方法・施工手順】
- 工事地域にヘッダーパイプの布設及び接続する。
- ウエルポイントポンプ(真空及びヒューガルポンプ)を設置する。
- ジェットポンプを設置する。
- ウエルポイントをジェットにより地中に埋設する。
- 埋設したウエルポイントをヘッダーパイプにスイングジョイントで
連結する。 - ヘッダーパイプの真空テストを行い、外部からの空気の進入を防止
する。 - ウエルポイントを1本ずつスイングジョイントのコックを開き揚水
する。 - ウエルポイントからの揚水がヘッダーパイプに満ちるとセパレータ
ータンクに溜まり、接続したヒューガルポンプでチャッキバルブを通して放流する。 - 真空度は徐々に上昇して所定の真空度となり、排水量は減少して大
体初期の排水量の1/3位で安定する。 - 工事終了まで運転を停止することなく機械設備を管理する。
ウェルポイント工法の効果
ウェルポイント工法の効果は以下のことが挙げられます。
- 地下水位の低下:ドライワークによる土木工事の容易(水圧、土圧の軽減)からくる土留工事の簡素化、安全、工期の短縮、ひいては工事費の軽減
- 土の剪断強度増加:切取(掘削)、盛土法面の安定と、掘削底面の地盤強化
- 圧密有効圧の増加:浮力の減少による地盤強度の増加
- 負圧の減少:軟弱地盤改良の圧密促進強化
稼働を停止すれば、通常の定水位・自然水位まで元通りになります。
影響範囲の算出
シーハルトの式を適用します。
R = C × S × √( K ÷ 100 )
R : 影響半径(m)
C : 定数
S : 水位低下量(m)
K : 透水係数( cm/sec )
排水量の算出
排水量の算出には、
- 軸対称浸透流モデル排水量(Q1)
- 2次元浸透流モデル排水量(Q2)
の2つが必要になります。
総排水量=軸対称浸透流モデル排水量Q1+2次元浸透流モデル排水量Q2
軸対称浸透流モデル排水量の算出
Q1={π × K ÷ 100 × ( H × H – h × h )}/ ln ( R ÷ r )×60
Q1: 排水量(m3/min)
K : 透水係数(cm/sec)
H : 自然水位高(m)
h:所要低下水位高(m)
R : 影響半径(m)
r : 仮想井戸半径(m)
2次元浸透流モデル排水量の算出
Q2 ={K ÷ 100 × ( H × H – h × h ) × ( Lx – Ly )}/R×60
Q2: 排水量(m3/min)
K : 透水係数(cm/sec)
H : 自然水位高(m)
h:所要低下水位高(m)
R : 影響半径(m)
Lx: 掘削領域長(m)
Ly: 掘削領域幅(m)
ウェルポイント1本当たり揚水量の算出
ウェルポイント1本当たり揚水量qw’は地盤の透水係数と比例関係にあります。
施工実績などを参考にして、ウェルポイント1本当たり揚水量を設定します。
ウェルポイントの所用本数の算出
Nw =(Q × α)/(qw’ ÷ 1000)
Nw : ウェルポイント所要本数(本)
Q : 総排水量(m3/min)
qw’: ウェルポイント1本当たり揚水量(ℓ/min)
α : 安全率(揚水量割増率) α=(初期排水量)÷(定常時排水量)
ウェルポイント打設間隔の算出
Lp = Lh ÷ Nw
Lp : ウェルポイント打設間隔(m)
Lh : ヘッダパイプ延長(m)
Nw : ウェルポイント所要本数(本)
ヘッダパイプはウェルポイントに沿って配管されるため、パイプ延長はウェルポイント の打設位置によって変動します。
施工規模・土質などを考慮しながら、ウェルポイント打設位置を決定した うえで、ヘッダパイプ延長を設定します。
したがってウェルポイントの打設間隔を決定するには、適切な設計計算と豊富な実務経験が必要です。
ウェルポイント打設間隔は0.8m~2.0mになります。
ウェルポンプ所要台数の算出
- ウェルポンプ排水能力に基づく所用台数(Np1)
- 集水可能距離に基づく所用台数(Np2)
のいずれか多い方をウェルポンプ所要台数とします。
ウェルポンプ排水能力に基づくウェルポンプ所要台数
Np1=(Q×α)/(E×β)
Np1: ウェルポンプ所要台数
Q : 総排水量
E : ウェルポンプ公称排水能力
α : 安全率(排水量割増率)
β : 安全率(ポンプ排水能力補正率) β=(実排水能力)÷(公称排水能力)
集水可能距離に基づくウェルポンプ所要台数
Np2 = Lh ÷ Lhp
Np2: ウェルポンプ所要台数
Lh : ヘッダパイプ延長
Lhp: 集水可能距離
まとめ
ウェルポイント工法の方法・特徴についてまとめました。
地下水低下工法についての詳細は、下記の記事でまとめていますのでご参照ください。
紹介させて頂いた知識は土木施工管理技士の試験にも出てくるほど重要な知識です。
勉強に使用した書籍をまとめていますので、ご参照ください。