裁荷重工法は、計画地盤に対して計画荷重以上の荷重(裁荷重)を与え、圧密沈下を促進させて地盤を安定させた後に裁荷重を除き、改めて盛土・構造物を築造する工法です。
裁荷重工法における地下水位低下工法には、排水管方式・井戸方式の2つの工法があります。
今回、井戸方式についてまとめさせていただきます。
目次
地下水低下工法における井戸方式の方法・特徴について
井戸方式は、地下水の汲み上げ区画を鋼矢板・シートパイル等で囲った上で、小口径の浅い井戸を数カ所設置して、地下水をポンプで汲み上げて、道路側溝に流す方法です。
排水管方式のように、道路を掘り返す必要がなく、施工することができます。
事前に所定の地下水位に低下させても、圧密沈下量が少ない地盤であることを確認しておく必要があります。
工法としては
- ディープウェル工法(DW工法)
- ウェルポイント工法(WP工法)
- スーパーウェルポイント工法(SWP工法)
があります。
地盤条件
下記の条件を満足する必要があります。
- 比較的水が速やかに流れる透水性が高い地盤であること
- 揚水試験などにより井戸と井戸の間の地盤までの水位が低下することを確認できていること
- 下部に軟弱な粘土層がある場合でも圧密沈下量が大きくないこと
- 井戸の深さは地下水位を下げる深さまでで留めること
注意点
井戸とポンプの設置となるため、工事費用は比較的安いが、井戸を密に掘る必要がある場合には、 そのための場所の確保が必要となります。
水位低下はポンプに依存するため、ランニングコストが高くなり、ポンプの消耗により一定周期で取り換え費用も発生します。
下部粘土層の圧密沈下を予測し、各井戸の汲み上げ速度の調節により、不同沈下とならないような制御への検討が必要です。
ディープウェル工法(深井戸排水工法・DW工法)
ディープウェル工法は、重力により地下水を集め、水中ポンプで揚水する工法です。
水中ポンプにより井戸内の水位を低下させ、地下水を集めます。
施工性がよく維持管理が容易であり、重力排水の代表的な排水工法です。
透水性のある地盤の深い位置にある排水において最も多く採用されており、一般に透水係数が10ー3cm/s以下では適用範囲外です。
それは透水性の低い地盤の場合、設置本数が多くなり、水位低下に長時間が必要となるからです、
井戸設置間隔は約15〜20m間隔で、揚水高さは10〜100mです。
ウェルポイント工法(WP工法)
ウェルポイント工法は、真空ポンプにより地下水を揚水する工法です。
負圧によりウェルポイント部の圧力を低下させ集水します。
透水係数が小さい土質(10-3cm/s〜10−4cm/s)にも適用できますが、砂礫層・排水量が多い場所については適用できません。
負圧を利用した強制排水なので、水位低下効率は高いが、水位低下量は約3.5mである。
設置間隔は約0.8m〜2.0m間隔で、揚水高さは6〜7mです。
ウェルポイント工法の詳細について、下記の記事でまとめていますのでご参照ください。
スーパーウェルポイント工法(SWP工法)
スーパーウェルポイント工法は、重力に加え真空ポンプでも地下水を集め、水中ポンプで揚水する工法です。
地盤に負圧を生じさせるためDW工法よりも揚水能力が高く、少ない本数で地下水位を低下させることができます。
透水係数が小さい粘性土においても地下水位低下が可能です。
地下水位の低下後において、地下空気を回収できるため、不飽和工法としても検討できます。
不飽和工法との組合せ
地下水位低下後に残る下部液状化層について、ポンプを使って地下水位を短期的に上下させて空気混入させ不飽和化を図ることにより、液状化強度が増し、液状化の発生を抑制する方法を組合せます。
土粒子内に空気を注入し、飽和度を90%程度にすることで、土粒子内の空気が液状化発生時の過剰間隙水圧を低下させます。
また、ポンプではなく、下部液状化層までドレーンパイプを挿入して、水圧消散により支持力の低下を抑制します。
不飽和後は地下水位を戻すため、地下水位を低下させ続ける維持管理が不要です。
また、井戸方式と同様の同様な施設設置に加え、空気吸引と注入の装置だけが必要になるだけで施工しやすいです。
まとめ
地下水低下工法における井戸方式についてまとめました。
地下水低下工法についての詳細は、下記の記事でまとめていますのでご参照ください。
紹介させて頂いた知識は土木施工管理技士の試験にも出てくるほど重要な知識です。
勉強に使用した書籍をまとめていますので、ご参照ください。