軟弱地盤対策工法として、
- 表層処理工法
- 緩速載荷工法
- 抑え盛土工法
- 置換工法
- 軽量盛土工法
- 載荷重工法
- バーチカルドレイン工法
- サンドコンパクションパイル工法
- 振動締固め工法
- 固結工法
が挙げられます。
軽量盛土工法では、以下の材料が利用されます。
- EPS(発泡スチロール)
- FCB(気泡混合軽量土)
- 発泡ウレタン
- 発砲ビーズ混合軽量土
- 水砕スラグ
- 焼却灰
- タイヤチップス
- 石炭灰
軽量盛土工法では、主にEPS(発泡スチロール)・FCB(気泡混合軽量盛土)、発泡ウレタンが主流です。
今回、EPS土木工法についてまとめます。
目次
軽量盛土工法におけるEPS(発泡スチロール)土木工法について
EPS(Expanded Poly-Styrol)土木工法は、大型の発泡スチロールブロックを積み重ねて盛土体を構築します。
軽量盛土工法として、軟弱地盤上で安全に盛土を実施することが可能です。
ブロックを緊結金具を用いて結合させながら積み重ね、不陸の調整や荷重の分散・有害物の浸透防止のために高さ3.0mごとに15cmのコンクリート床板を設けます。
1972年にノルウェーで開発・1985年に日本で導入され、EPSブロックの特徴を生かして、「荷重軽減工法」・「土圧低減工法」の大きく2つに分けられます。
特に、EPS開発機構が「EDO-EPS工法設計・施工基準書(案)」・「EDO-EPS工法認定ブロック品質管理要領」に基づいて認定したEDO-EPSブロックを、基準書で指定された緊結金具で一体化した超軽量盛土工法のことを、「EDO-EPS工法」と呼びます。
道路の盛土工事に用いられることが一般的です。
軟弱地盤上での盛土以外にも、橋台・擁壁・地中構造物背面の裏込め材として活用されます。
EPSブロックとは
EPSブロックは、外観的にはどれも同じような形状・形態ですが、その製造過程や原料グレードによって、分子構造・物性・工学的特性・耐久性が大きく異なります。
品質管理が不十分だと単位体積重量や圧縮強度が不均一になり、局部的な応力集中の発生要因となります。
従って、一般に流通する保温材・断熱材・間詰材としてのEPSと区別して、品質が十分に保証されているものを使用する必要があります。
例を挙げると、EPS開発機構が「EDO-EPS工法設計・施工基準書」・「EDO-EPS工法認定ブロック品質管理要領」に基づいて認定したEDO-EPSブロックが用いられることが多いです。
EDO-EPSブロックには、その品質・特性を保証するためにEPS開発機構の「認定シール」(縦15cm 横15cm)が貼付されており、全国の成形工場の品質管理状況を定期的に調査されています。
試験結果・評価内容は、以下の項目がEDO-EPS工法設計・施工基準書に詳しく示されております。
【EDO-EPS工法設計・施工基準書の項目】
- 形状
- 単位体積重量
- 圧縮特性(圧縮強さ)
- クリープ特性
- 摩擦特性(EPSと砂、EPS同士、EPSとモルタル:0.5)
- 変形係数
- ポアソン比(約0.1)
- 動的特性
- 耐熱性
- 燃焼性
- 耐久性(耐土中微生物)
- 耐薬品性
- 吸水性
- 環境に与える影響
EDO-EPSブロックの製造会社と認定製品名
製造会社 | EDO-EPSブロック 認定製品名 |
㈱カネカ・カネカケンテック㈱ | カネパールソイルブロック・カネライトソイルブロック |
㈱JSP | スチロダイヤブロック |
積水化成品工業㈱ | エスレンブロック |
太陽工業ジオテクノサービス㈱ | タフブロック |
デュポン・スタイロ㈱ | ライトフィルブロック |
浮力対策用・排水対策用など様々な機能を持ったEPSブロックがあります。
緊結金具
緊結金具は、相互のズレ防止・積み上げ精度の確保・地震時安定性確保などのために設置されます。
ブロック相互を一体化する金具で、ブロック相互にまたがって設置でき、
- 局部的なめり込みが生じない面構造
- 応力作用時にブロックの変形に追従できる複数の爪構造
を有した形状を特徴としています
交通荷重などの繰返し荷重下においても変形追従性が確認されており、地震時などの過度の繰返し変形挙動に対しても複数の面的な爪構造により、部材のゆるみが生じない構造となっており、レベル2規模の地震においても安定性が確認されています。
耐蝕性対策として,アルミニウム55%、亜鉛43.4%の合金メッキ層を有するガルバリウム鋼板を使用しています。
海岸近傍や特殊な気象条件に対応するためにステンレス製の緊結金具もあります。
1ブロックにつき2個以上設置して、ブロックを互いに固定します。
EPS工法のメリット
EPS工法のメリットは、以下のようになります。
【EPS工法のメリット】
- 材料の軽量性
- 耐圧縮性
- 耐水性
- 緩衝性
- 耐候性
- 自立性
- 経済性
材料の軽量性
EPSブロックは、体積の98%が空気からできていますので、単位体積重量は0.12〜0.35kN/m3で、土砂やコンクリートの約1/50〜1/100と超軽量です。
そのため、通常の盛土はできない軟弱地盤でも安全に施工することができます。
標準のブロックサイズは1.0×0.5×2.0mほどで人力での運搬が容易です。
軽すぎるところが問題になり、風により飛ばないように資材管理する必要があります。
耐圧縮性
EPSブロックの圧縮強度は、弾性領域である1%ひずみで定義され、許容圧縮応力は20〜200kN/m2であり、盛土として必要な強度を有しています。
塑性領域に入っても一軸圧縮力が卓越し、せん断破壊が発生しないことが特徴です。
また粘着力や内部摩擦角という概念はなく、耐圧縮材として機能を有します。
耐水性
EPSブロックは撥水性材料で、吸水はほとんどせず、一般盛土のように湿潤密度の変化もないため、施工前・施工後ともに均一な盛土品質が確保されます。
発泡スチロールが独立気泡を内蔵した発泡粒の集合体で、長期間水浸状態であってもその気泡内に水が浸入しません。
気泡があるため、地下水位以下では大きな浮力が働いてしまいますので、浮力対策ブロックを使用すること・底盤での排水溝設置などで対策できます。
緩衝性
EPSブロックは緩衝能力が高く、落石に対する緩衝効果は砂の数倍程度あります。
ロックシェッド上部のクッション材として非常に優れており、衝撃・振動を減少させる効果があります。
耐候性
EPSブロックは、土中の各種微生物や昆虫・小動物による食害・分解などの事例はありません。
また、酸・アルカリに優れた抵抗性があります。
ただし、紫外線による表面劣化はあり、ガソリンなどに溶融しますので、保管には留意が必要です。
自立性
引用:積水化成品工業株式会社
EPSブロックは上部荷重の増加による側方変形が小さく、総荷重の約10%が側圧として作用するのみで、自立性に優れています。
この特性から構造物背面に設置して、構造物に作用する土圧を大幅に低減することが可能で、片直・両直壁での高盛土として利用できます。
また、ポアソン比が0に近いため、大規模な抗土圧構造物に代わって防護擁壁程度の簡易構造物で対応できます。
施工性
大型建設機械が必要なく人力での施工が可能なため、施工速度が早く、大型機械の使用が難しい所での施工が容易になります。
また、発泡スチロールブロックは現地で簡単に切断加工できるため、地形に合わせた施工が容易で、用地を有効に活用できます。
これらの施工性から、工期の短縮が図れます。
EPS工法のデメリット
EPS工法のデメリットは、以下のようになります。
【EPS工法のデメリット】
- 油溶性
- 火気に弱い
- 地下水位対策が必須
油溶性
発泡スチロールは原油で生成されているため、油に弱いのでガソリンや重油などの有機溶剤で溶解してしまいます。
道路上での事故によって、これらが流出した際に安定性に影響を与えてしまうことが考えられます。
火気に弱い
火気に対して難燃性ではあるものの、非燃性ではない点に注意が必要です。
道路上での火災による影響を受けてしまいます。
地下水位対策
地下水位以下では大きな浮力が働くと、安定性に影響を与えてしまいます。
設計以上の雨水によって、軽量盛土体が崩壊してしまう事例もあります(失敗事例)。
浮力対策ブロックで対応ことでも限界があるので、地下水位が高い場合には地下水低下工法を合わせて施工することが重要です。
まとめ
軽量盛土工法における「EPS(発泡スチロール)土木工法」についてまとめました。
軽量盛土には他の材料が使われていて、別の材料については下記記事を参照してください。
紹介させて頂いた知識は土木施工管理技士の試験にも出てくるほど重要な知識です。
勉強に使用した書籍をまとめていますので、ご参照ください。