単位体積質量試験は、「土の単位体積重量・湿潤密度・乾燥密度」を求める試験で、地山・盛土などの現場において行われるので、現場密度試験とも呼ばれます。
単位体積質量試験には、以下のような3つの方法があります。
による方法があります。
今回は単位体積質量試験(RI法)の試験方法と結果についてまとめます。
単位体積質量試験(RI法)とは?
RI法(RI試験)は、γ線・中性子線をRI計器で読み取り、γ線で密度計測、中性子線で含水量計測を行う試験です。
不安定で放射線を放出して他の核種に変わるアイソトープ(isotope:同位体)をRI(Radio Isotope:ラジオアイソトープ)と呼びます。
RI計器(RI測定器)で用いられるのはγ線と中性子線で、γ 線はコバルト-60から、中性子線はカリフォルニウム-252から放出されます。
放射線の種類について
放射線は、物質と作用して、原子・分子を電離する能力のある高速の粒子線および極めて波長の短い電磁波のことをいいます。
放射線の主なものには、次のようなものがあります。
α線
α線は高速で飛ぶ「α粒子」の流れで、陽子2個と中性子2個によって構成される粒子です。
原子が「α崩壊」を起こしたときに放出されます。
α線は強いプラスの電気を帯びており、周囲の元素が持つ電子を引き離し、陽イオンに変える力(電離作用)を持っています。
α粒子は大きいため原子の隙間を通り抜けることができないので、透過作用は低く、紙1枚で遮断することが可能です。
外からα線を浴びても皮膚で守られるので人体に害はありませんが、α線を放出する物質を体内に取り込むと、電離作用が強いため人体に強い影響を及ぼします。
β線
β線は高速で飛ぶ電子の流れです。
マイナスの電気を帯びており、周囲の元素が持つ電子を引き離し、陰イオンに変える力(電離作用)があります。
人工的に電子を加速させてつくったβ線のことを「電子線」といいます。
β線は電子なので、透過作用は大きく、体内からでも体外からでも人体に影響を与えます。
アルミニウムなどの薄い金属板や、1cmほどのプラスチック板で遮蔽することが可能です。
γ線
γ線は非常に波長が短い(エネルギーの大きい)電磁波で、光の一種です。
可視光の1万倍も高いので、人間が感知できることはできません。
光なので、質量も電荷も大きさもありませんが、透過作用が高く、1mほどのコンクリート壁や鉛などの板でなければ遮断することはできません。
そのため、ガンマ線が人体に侵入しても、体を傷つけるのは一部で、大半は衝撃もせずにそのまま突き抜けます。
X線は、γ線とは発生の機構が異なり、原子核外での電場や軌道電子が関与した結果生じるものですが、電磁波という観点からγ線≒X線といえるでしょう。
中性子線
中性子線は高速で飛ぶ中性子の流れのことです。
原子炉の中でウラン燃料などが核分裂した際に放出されるなど、人工的なものから発生します。
中性子は電気的に中性なので、周囲に電気エネルギーの影響を与えません。
中性子線の透過作用は非常に強いため遮断するのは難しいのですが、中性子と同じくらいの質量の物と衝突させると遮ることができ、水が中性子線を遮るのに有効です。
また中性子線は、当たった原子を放射性同位体に変えてしまうという性質があります。
中性子線はそのエネルギーにより、以下の4つに分類される。
- 高速中性子(0.5MeV以上)
- 中速中性子(0.1〜500keV)
- 遅い中性子(0.1keV以下)
- 熱中性子(物質の熱運動と平衡にある中性子で、20℃で0.025eV)
試験器具(RI計器)について
RI計器には、散乱型・透過型があります。
散乱型RI計器は、線源が地表面にあるため、測定前の作業が測定面の平滑整形だけで作業性が良いですが、地盤と計器底面との空隙の影響を受けやすいので注意が必要です。
透過型RI計器は、線源が長さ20cmの線源棒の先端付近にあり、測定時には線源棒の挿入作業を伴うので散乱型に対して少し測定作業時間が長くなりますが、盛土面と計器底面との空隙の影響は比較的受けにくい。
γ線による密度計測について
γ線が原子の外殻電子に作用し、エネルギーの一部をその電子に与えてその電子をはじき出し、自らはエネルギーを減じて進路を変える現象を、コンプトン効果(散乱)と呼びます。
密度計測では、このコンプトン効果を利用した試験です。
γ線エネルギーEγ=0.3MeV〜2.0MeVの範囲では、物質とγ線の相互作用はコンプトン効果のみといえます。
γ線は物質中でコンプトン効果を繰り返し、エネルギーを失って最後は光電効果を起こして原子に吸収されてしまいます。
γ線と物質の相互作用によりEγが減少する割合を表す計数を質量吸収係数といいます。
この質量吸収係数はEγ=0.3MeV〜2.0MeVの範囲で、水素原子を除き主要元素間でほぼ同じ値となり、土の元素構成によらず同じ反応を示します。
線源から発生するγ線による応答をRρとすると、Rρは次式のような校正式で表されます。
Rρ=(Σ・ρ・r)²・exp(−Σ・ρ・r)
Σ:質量吸収係数
ρ:密度
r:線源と検出器の離間距離
この区間の曲線は、近似的に指数関数で次のように表すことができます。
Rρ=A・exp(−B・ρt)
A、B:校正定数(RIメーカーでの制作納入時)
ρt:湿潤密度
土の湿潤密度はこの式を用いて導き出します。
中性子線による水分計測について
中性子とほぼ質量の等しい陽子(水素原子核)と衝突した場合のみ、その速度をほぼ失い、熱中性子となります。
中性子線による水分計測は、熱中性子を測定することにより、地盤中の水素原子の量から含水量を把握する試験です。
散乱型・透過型で手法が異なりますので、別々に説明します。
散乱型の場合
一般に中性子検出に使用される³He検出管で測定できるのは熱中性子だけです。
放射線源から放射された中性子より生じた熱中性子は、土中の水分が多ければ生成率が大きくなり、少ないと小さくなります。
散乱型水分計の校正式は次のように表すことができます。
Rm=A+B・ρm+C・ρm²
Rm:水分計の計数率比
ρm:含水量(g/cm³)
A、B、C:校正係数
透過型の場合
土中の水分(水素原子核)と衝突しないで、線源から地中を透過してきた熱中性子を測定対象にしています。
地中の水分(水素原子核)との相互作用で減速・生成した熱中性子は測定対象外であるため、吸収材で遮断します。
透過型の水分計の校正式は次のように表すことができます。
Rm=A・exp(−B・ρm)
Rm:水分計の計数率比
ρm:含水量(g/cm³)
A、B:校正係数
まとめ
単位体積質量試験(RI法)の試験方法と結果についてまとめました。
他の単位体積質量試験についてもまとめさせていただいてますので、詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。
紹介させて頂いた知識は土木施工管理技士の試験にも出てくるほど重要な知識です。
勉強に使用した書籍をまとめていますので、ご参照ください。
参考文献
試験所技術資料第213号:RI計器で土の密度・水分量をはかるしくみ(測定原理と校正曲線の作成)昭和59年3月日本道路公団試験所
地盤工学会「地盤調査法」
地盤調査の方法と解説. 地盤工学会
地質調査要領―効率的な地質調査を実施するために.全国地質調査業協会連合会