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適応進化における「r-K選択説・r-K戦略」について

適応進化における「r-K選択説・r-K戦略」について
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生物が誕生して、成長・繁殖を遂げて最後に死亡するまでのサイクルを生活史と呼びます。

自然選択が長く働き続けると、生物の適応度が最大化し、生物の形質は環境に最も適応したものに進化します。

しかし、ある形質を進化させると別の形質を犠牲にしてしまう、形質間おける拮抗関係(トレードオフ)が生じます。

適応進化における「r-K選択説・r-K戦略」についてまとめます。

「r-K選択説・r-K戦略」について

「r-K選択説・r-K戦略」 ロジスティック式 dN/dt=rN(1ーN/K)

個体数が非常に少ない状態から個体数が増加するとき、その変化はS字状の曲線(シグモイド曲線)に従います。

個体群の成長速度はロジスティック式によって説明されます。

dN/dt=rN(1ーN/K)

N:個体数
t :時間
r :内的自然増加率
K:環境収容力

ここから、R.H.MacArthurとE.O.Wilsonが、種内競争によってどのような生活史が進化するのかを大まかに予測する仮説として「r-k選択説」(r-k戦略説)を提唱しました。

r選択とは、種内競争が激しくないときに、個体の潜在的な増殖能力を高めるように作用し、内的自然増加率を大きくする自然選択です。

内的自然増加率は、密度が低いときにどれだけ急速に個体群が増殖できるかを表します。

K選択とは、種内競争が激しいときに、種内競争を勝ち抜くように作用し、K環境収容力を大きくする自然選択です。

環境収容力は、特定の環境条件下で生息できる最大密度のことです。

r選択・K選択の特徴

r選択K選択
気候不規則に大きく変化安定・周期的
死亡率密度に依存せず、壊滅的に密度に依存
種内競争穏やか厳しい
進化する形質高い内的自然増加率高い競争力
速い成長遅い成長
早い繁殖遅い繁殖
小さな体大きな体
一回繁殖多回繁殖
小卵多産大卵小産
短い寿命長い寿命

r選択者は競争能力を犠牲に潜在的な繁殖能力を高め、K選択者は潜在的な繁殖能力を犠牲にして競争能力を高めます。

r選択者は生態系の初期段階でよく見られる種で、一年生の草本・昆虫などのパイオニア種が当てはまり、K選択者は極相に達した段階でよく見られる種です。

環境要因以外にも、一般的に大型の生物は親による子の保護を発達させ、少数の子を確実に育てるため、K選択者になりやすい傾向があります。

ある形質については相反する性質を持つため、環境条件・系統的制約のもとで自然選択をしていきます

r選択・k選択の違いがわかりやすい「小卵多産・大卵小産」の詳細については、下記記事にてまとめていますのでご参照ください。

r選択・K選択のグラデーション

トビバッタ

実際の生物は、r選択~K選択のグラデーションの中に存在します。

種ごとに大まかな傾向はありますが、個体差・地域差があるのが普通です。

さらに、環境によって発現する表現型を変化できる「表現的可塑性(phenotypic plasticity)」を持ち、環境に合わせて戦略を使い分ける種もあります。

例えば、トビバッタは、生息密度が環境シグナル「合図(cue)」になり、表現型可塑性が発現し、低密度下で「孤独相」・高密度化で「群生相」になります。

表現的可塑性の詳細については下記記事でまとめていますのでご参照ください。

まとめ

自然環境

適応進化における「r-K選択説・r-K戦略」についてまとめました。

生態学についてより深く勉強するのに、おすすめの書籍をまとめていますのでご参照ください。