農学部の1つのコース・公務員試験の採用職枠などで「農業土木」という言葉を目にすることがあります。
あまり聞き慣れない言葉であると思いますが、農業・農村環境に対して大きな影響を与える分野の1つです。
今回は、農業土木とはなにか、どういう分野なのかをまとめてみます。
農業土木とはなにか?
農業土木とは農業に関する土木分野で、土木技術によって「農地の生産性の向上・農家の労働力低減」を図ります。
日本では、水田農業が軸となり社会基盤が形成された背景で、農業と土木が密接になりました。
その中で、農業土木は土・水を農業に利用できるようにする技術から、農民の住環境の整備など、独自の技術として発展しました。
札幌農学校(北海道大学の前身)における土木学・農業物理学、駒場農学校(現在の東京大学農学部)の農業土木学から、現在の農業土木が体系化されました。
整備内容としては、様々なメニューがあり
- 圃場整備
- かんがい排水施設整備
- 農道整備
- 農地防災整備
- 中山間地域総合整備、農村振興総合整備
など幅広い知識が必要になります。
呼称の違い
農業土木とは主に技術を指しますが、似たような言葉がいくつかありますので紹介したいと思います。
農業土木の別称として
- 土地改良
- 農業農村整備
- 農業農村工学
などがあります。
土地改良
農業土木でも、「農用地の改良・開発などの土地条件の改善」、「用排水路の整備などの水理条件の改善」を図るための基盤整備のみを指します。
簡易な土地改良を事業として、行政に代わり行う農業者の公共団体を「土地改良区」と呼び、農業土木に携わる公務員を「土地改良職員」と呼ぶなど、土地改良を称するものがあります。
土地改良によりできた施設を「土地改良施設」と呼び、農業のための用水施設・排水施設・道路・その他農業をするにあたり有益な施設・農村での生活を快適にする施設のことを指します。
農業農村整備
農業土木≓土地改良のような性格を持ち続けてきましたが、社会の近代化に伴い、農業を基幹的産業として発達していた農村の荒廃が進み、農家が住みにくく、農業に担い手も確保しにくくなりました。
そのため、農業の生産性の向上に加えて、「農村の振興を総合的に図る」必要が生じました。技術・分野・事業として領域を広げていく必要があり、従来の土地改良的農業土木に農村振興を足しこんだ「農業農村整備」という言葉が使われ始めました。
「集落道整備・防火水槽整備など農村地域の整備」、「生き物保全等の自然環境との調和」などの近代化に伴い生じる農村環境の整備が行われています。
農業農村整備事業の内容・種類の詳細について、下記でまとめていますのでご参照ください。
参考ページ:農業農村整備事業の内容・種類について
農業農村工学
農業土木≒農業農村整備に変化してきた過程から、土木技術だけのハード面の整備から農地の集積・集約化などのソフト面の整備も行われるようになりました。
「土木」という言葉が3k「きつい (Kitsui) 」「汚い (Kitanai) 」「危険 (Kiken) 」を想像させ、土木技術の担い手になることを阻害していると言われ始めました。
学問としても成熟してきたこともあり、農業農村工学と呼ぶようになりました。
現在、農業土木の学会も「農業農村工学会」となりました。
大学などの「農業土木」という学科・学部名称も無くなりつつあり、「生産環境科学」「生物環境工学」「地域環境工学」など名称を変更しています。
農業土木の性格も変わってきたこともありますが、土木分野が学生に人気の無いことなども関係しているおり、色んな分野に隠れながらひっそりと学問が残っております。
技術士においては農業部門「農業農村工学」になっており、詳しいことは下記をご参照ください。
まとめ
今回は、農業土木とはなにか、どういう分野なのかをまとめてみました。
「のうぎょうとぼく」の中では、農業土木に関する豊富な記事を書いています。
農業土木について勉強できる本については下記にてまとめていますので、ぜひご覧ください。
参考ページ:農業土木の勉強におすすめな参考書・問題集を紹介!