概論

日本における農業土木の歴史 〜近代〜

農業土木は、自然に存在する土・水を、農業に効率的に利用できるように発達した土木技術です。

水田農業を軸に、日本の農業の発展に大きな影響を与えました。

農業の歴史を振り返りながら、農業土木の技術進歩の遍歴を確認するため、

  • 古代
  • 中世
  • 近世
  • 近代
  • 現代

にわけてまとめてみました。

今回は、近代での農業土木について紹介させていただきます。

地租改正

明治政府は、全国の土地について統一的な基準で全ての地籍を把握し、その土地に税を課すため、1873年に地租改正を実施しました。

土地所有者による地籍調査・地価調査により、府県が地券台帳を作成し、地券台帳から土地所有者に地券を発行し土地の証書としました。

これによって、江戸時代に地子を免除されていた武家地・町地なども課税の対象となりました。

収穫量の代わりに収穫力に応じて決められた地価を課税対象として、税率は地価に対する一定率、収穫物ではなく金納に切り替わりました。

農作物の豊凶により税収が変動しないため、農民にとっては凶作時のリスクが高まる、納税が困難な土地は政府に没収されたことなどから、伊勢暴動・真壁暴動など地租改正反対一揆が頻発しました。

しかし、地租改正について長期的な視点では2点良いことがあります。

  • 地租が一定であるため、収穫を増やすことで農民の手取りが増えること。
  • 金納であるため、栽培する農作物が自由になったこと

このため、反収の増加に資するための高収益作物導入・土地生産性の向上のための農地造成が実施される起点になります。


水利組合の設立

水路

1871年に行なわれた廃藩置県により、全国に261あった藩の代わりに「府・県」が置かれ、さらにその下に「群」「市町村」が置かれました。

定められた市町村は水利構造に当てはめられて実施されたものではなかったため、「井組・水組」に変わる新たな水利組織が必要になりました。

そこで、1880年に制定された区町村会法で水利士功会の設立が認められ、1890年に制定された水利組合条例で水利組合・水害予防組合の設立が認められ、1908年には水利組合法が制定されました。

普通水利組合は灌漑・排水を目的とする組合、水害予防組合は水害防御を目的とする組合です。

普通水利組合は1949年の土地改良法の制定により土地改良区に改称され、水防予防組合だけ残っています。

大規模な開発事業

明治政府による中央集権的な施策の結果、国営で大規模な開発事業が実施されるようになりました。

安積疏水・明治用水など、数千〜万haの受益面積を持つ大きな農業土木工事が施工されています。

また、北海道開拓も推進され、道路・港湾・鉄道の整備、鉱山開発などが進み、クラーク博士を招いて設立した札幌農学校・官園によって開拓技術者の養成と洋式農法の導入が図られました。


耕地整理法の制定・改正

明治時代から地租改正による農業の自由化・欧米農業技術の輸入により、土地改良・農法改良が飛躍的に推進されます。

個人による小規模な畦畔改良から、集団的な区画整理が行われます。

畦畔改良を中心として『静岡式』田区改正を中心とした『石川式』が考案・実施されました。

静岡式では、区画の整形化・正方位化による効率的な正条植えの実施、畦畔の撤去による水田面積の増加が目的です。

石川式では、区画の拡大・整形化と排水改良による乾田化・牛馬耕の導入、道路の直線化による資材運搬作業の効率化が目的です。

そこで、1899年に制定され、耕地の交換分合・整形にのみ重点が置かれた耕地整理法は、1905年の改正で事業範囲に灌漑排水が加えられます。

現代の農業土木事業の根幹を成す基盤制度がこの時期に確立しました。

まとめ

今回は、近代での農業土木について紹介させていただきました。

勉強に使用した本をこちらでまとめさせていただいております。

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