原位置試験とは、現場の元の状態のままで実施する試験の総称で、現場で比較的簡易に土質を判定したい場合や、土質試験に供する乱さない試料の採取が困難な場合に実施する試験です。
原位置試験には以下の方法があります。
今回は現場透水試験の試験方法と結果についてまとめます。
現場透水試験とは?
現場透水試験は、単一のボーリング孔あるいは単一の井戸を利用して、地盤の自然水位(被圧水頭)・透水係数kを求める試験です。
ボーリング孔の先端に地下水が流入するストレーナー部分(試験区間)を設け、孔内の水位を人工的に変動させ、その後の水位状況を測定します。
試験方法については、「非定常法」と「定常法」の2種類があります。
- 非定常法:水位を一時的に低下・上昇させて平衡状態に戻るために必要な水位変化を測定
- 定常法:揚水・注水により水位を一定にするために必要な流量を測定
透水係数10-4cm/s以下の地盤では非定常法が、透水係数10-4cm/s以上の地盤では定常法が適しているといわれています。
現場透水試験の試験手順について
現場透水試験で一般的に実施される「非定常法」の試験方法・手順について示します。
【現場透水試験非定常法の試験方法・手順】
- 試験深度の手前までボーリングします。
- ケーシングを込む。
- スライムの除去と孔内洗浄を行う。
- 地下水を汲み出す。
- 地下水位低下後、地下水位の回復状況を測定する。
- 水位変動がなくなる平衡水位(安定水位)まで、水位を測定します。
現場透水試験を結果を用いて、透水係数kの求め方
参照:第一コンテク株式会社HP
水位(対数目盛)と経過時間(算術目盛)との関係から、初期の直線部分の傾きmを求め、透水係数kを算定する。
不圧地下水 k=0.66×d^2×log(2L/D)×m/L
被圧地下水 k=0.66×d^2×log(4L/D)×m/L
k:透水係数(cm/sec)
m:グラフの初期直線部分の傾き log(S1/S2)/(t2-t1)
d:測定パイプの内径(cm)
D:試験(透水)区間の直径(cm)
L:試験(透水)区間の長さ(cm)
透水係数による土質分類
土の種類別による透水係数の値は、概ね以下の以下の表の通りです。
透水度 | 透水係数の範囲 k(cm/sec) | 土質 |
高い | 10-1以上 | 礫 |
中位 | 10-1~10-3 | 粗砂 中砂 細砂 |
低い | 10-3~10-5 | 極微粒砂 シルト質砂 細粒シルト |
きわめて低い | 10-5~10-7 | 粗粒シルト 粘土質シルト |
不透水 | 10-7以下 | 粘土 |
透水係数と粒径D20の関係
下記に示したヘーゼンの簡易公式をクレーガー(Creager)によって実測した試料の有効径 (粒径D20)の値と透水係数の関係は以下の通りになります。
k=ChD102
Ch:定数(50~150)、D10:有効径(10%通過径)
D20(mm) | k(cm/sec) | 土質分類 |
0.005 | 3.00×10-6 | 粗粒粘土 |
0.01 | 1.05×10-5 | 細粒シルト |
0.02 | 4.00×10-5 | 粗砂シルト |
0.03 | 8.50×10-5 | |
0.04 | 1.75×10-4 | |
0.05 | 2.80×10-4 | |
0.06 | 4.60×10-4 | 極微粒砂 |
0.07 | 6.50×10-4 | |
0.08 | 9.00×10-4 | |
0.09 | 1.40×10-3 | |
0.10 | 1.75×10-3 | |
0.12 | 2.60×10-3 | 微粒砂 |
0.14 | 3.80×10-3 | |
0.16 | 5.10×10-3 | |
0.18 | 6.85×10-3 | |
0.20 | 8.90×10-3 | |
0.23 | 1.40×10-2 | |
0.30 | 2.20×10-2 | 中粒砂 |
0.35 | 3.20×10-2 | |
0.40 | 4.50×10-2 | |
0.45 | 5.80×10-2 | |
0.50 | 7.50×10-2 | |
0.60 | 1.10×10-1 | 粗粒砂 |
0.70 | 1.60×10-1 | |
0.80 | 2.15×10-1 | |
0.90 | 2.80×10-1 | |
1.00 | 3.60×10-1 | |
2.00 | 1.80 | 細礫 |
まとめ
現場透水試験の試験方法と結果ついてまとめました。
原位置試験として他の試験についてもまとめていますので、詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。
参考ページ:土質調査における原位置試験について
紹介させて頂いた知識は土木施工管理技士の試験にも出てくるほど重要な知識です。
参考までに、勉強に使用した書籍をまとめさせていただきます。
参考文献
地盤工学会「地盤調査法」
関東地質調査業協会「ボーイング孔を利用した」原位置試験についての技術マニュアル」
西垣 誠先生「単孔式現位置透水試験法の諸問題」井戸とポンプVol.28
地盤調査の方法と解説. 地盤工学会
地質調査要領―効率的な地質調査を実施するために.全国地質調査業協会連合会
ボーリングポケットブック(第5版). 一般社団法人全国地質調査業協会連合会