農業農村整備事業は、「農業生産基盤の整備・保全」と「農村整備」の2つの性格を持つ事業内容があります。
農村整備については、農村地域全体に資するため税金を投入する点は理解されやすいです。
しかし、私有財産である「農地」の生産性を高めるため、多額の税金が投入される点においてあまり納得されません。、
事業費の50%~100%が補助され、個人経営の発展としては破格の値段が補助されます。
私有地である農地の整備などの農業に税金が使われる理由として、国の根幹を支える食糧生産を守るためという当たり前な理由以外に、以下の3点挙げることができます。
【私有財産の農地整備に税金が入る理由】
- 理由①:世代を渡って利害関係者が存在するため
- 理由②:共同事業の参加者を募るため
- 理由③:多面的機能を発揮するため
理由①:世代を渡って利害関係者が存在するため

農業の根幹になっているのは、「土地・水」です。
土地・水の改変は不可逆的で、世代を超えて長期的な効果をもたらします。
投資効果も長期にわたって発揮され、短期的利益のみが求められるものではありません。
例えば、区画整備されて使いやすい農地になった場合、自身だけでなく何世代後の農家も使いやすくなります。
費用を投資する時点の利害関係者のみに負担させることは妥当ではないため、公的補助を実施しています。
理由②:共同事業の参加者を募るため

農業は集団性・地域一帯性を無視することができません。
水は上流から下流に順番に流れ、農道は近隣の農地との接続が必須です。
抜本的な土地改良事業が実施するには、共同事業の参加者を募ってボトルネック無く地域全体での整備が求められます。
また、土地改良法に則ると、受益農業者15名以上による事業申請、受益農業者の2/3以上の同意による地域の総意のもとに実施され、同意しなかった受益農業者も強制的に事業に参加させられます。
税金による金銭的援助を行うことで、同意・不同意関係なく公平な整備をしなければなりません。
理由③:多面的機能を発揮するため

農業農村整備は、農業生産基盤の向上だけではなく、農地の多面的機能を発現します。
【農地の多面的機能】
- 国土の保全
- 水源の涵養
- 自然環境の保全
- 良好的な景観の形成
- 地方文化の伝承
この多面的機能は、農業者のみではなく、多くの国民が受益することができます。
多面的機能を経済的価値に代替できるものではなありません。
そのため、税金を用いて公共事業で多面的機能を守っていく必要があります。
まとめ

私有財産の農地整備に税金が入る理由についてまとめてみました。
「のうぎょうとぼく」の中では、農業土木に関する豊富な記事を書いています。
農業土木について勉強できる本については下記にてまとめていますので、ぜひご覧ください。
参考ページ:農業土木の勉強におすすめな参考書・問題集を紹介!