ポンプ設備の性能管理とは、ポンプ設備に必要な機能・性能を長期にわたって維持させる行為です。
ポンプ設備の性能レベルを健全度で表し、レベルに応じた対策を検討するため、以下の手順で性能管理がされます。
- 日常点検
- 機能診断調査
- 機能診断評価
- 機能保全計画策定
- 機能保全(長寿命化対策)実施
今回は、この中の「機能保全計画策定」についてまとめさせていただきます。
目次
ポンプ設備の性能管理における機能保全計画策定の方法・特徴について
機能保全計画は、診断時点より40年を基本とする検討対象期間に設備の性能を維持していくための計画である。
そのため、機能保全計画を策定する前に、保全対策が必要となる時期・方法から設備全体としての対策実施の要否・時期を明らかにするため、機能診断調査・評価の結果を用いて、性能低下予測を実施します。
性能劣化予測から、性能指標が検討対象期間に管理水準の範囲に留める対応方針を比較検討し、適切な機能保全コストを踏まえた機能保全計画を策定します。
故障等の危険度が高く早急に対策を検討する装置・部位等は、性能低下予測のプロセスを経ることなく機能保全対策の実施シナリオの作成検討を行います。
性能低下予測
引用:農業水利施設の機能保全の手引き「ポンプ場(ポンプ設備)」農林水産省
設備全体としての性能低下予測を行うことが必要となるが、ポンプ設備は様々な部位で構成され、その耐用年数も多様です。
部位によっては余寿命管理を行うことが適さない部位などもあり、部位毎に個別評価する必要があります。
個別評価結果をもとに設備としての余寿命を予測し、重要度や劣化の影響度が高い部位の余寿命を参考に総合的に判断します。
余寿命予測においてはS-3になるまでの期間の予測を行い、診断結果によりS-3以下と評価されたものについては、余寿命予測は行いません。
機能保全計画の策定
機能保全計画の策定は、機能保全コストの最小化に着目し、「設備機能の維持・対策実施の合理性・設備重要度との適合性・維持管理の容易さ」などを総合的に勘案し策定します。
設備を構成する装置・部位毎の重要度区分から対策実施の優先度・保全方式の検討を行うことが重要です。
機能診断評価結果を踏まえ、当面必要となる機能保全対策の検討・劣化傾向等を把握し、将来的な対策検討も行います。
シナリオ作成や具体的機能保全対策の検討に当たっては、土木構造物の保全対策時期等との調和を図り、信頼性・管理制約条件・社会的情勢等を勘案し総合的に検討します。
検討項目
- 当面必要となる対策の検討
- 対策工範囲の検討
- 維持管理の費用の軽減・管理の容易さの検討
- 長寿命化の検討
- 地区全体としての対策の妥当性の検討
当面必要となる対策
当面必要となる対策とは、機能診断の結果を踏まえ速やかに行う必要がある対策のうち、直
接的・具体的な対応が可能であるものです。
機能診断によりS-3・S-2となっていることが判明し、この劣化に対して必要となる対策を指します。
健全度評価の区分から、当面必要となる対策の検討が必要となるのは、S-3以下と判断された場合であるが、S-4以上の場合でも予防保全が必要な場合はこれに該当する。
対策工範囲の検討
ポンプ設備は多数の機器・部品から構成された集合体であり、これらが相互に有機的に機能
してはじめて設備全体が正常に機能します。
よって、機能低下した機器・部品等のみを対策の対象とするのではなく、設備全体の機能維持・性能・回復を図る観点から対策の範囲を検討する必要があります。
部品単位で交換すれば十分な場合もあるが、機器・部材単位で交換する方が作業は容易で信頼性が高く、延命化や経済性に結びつくこともある。
維持管理の費用の軽減・管理の容易さの検討
機能保全対策の実施により、
- 維持管理の費用と労力が軽減
- ライフサイクルコストの低減
に効果があるような対策が望ましいです。
また、施設管理者が行う定期点検・整備計画も含めた機能保全計画を検討することを念頭におき、各地区の日常管理上の問題点を把握したうえで、各ケースに応じた指導・助言を行う必要がある。
長寿命化の検討
長寿命化とは、一般の耐用年数を超えて供用期間を延長させることをいい、装置、機器・部
材及び部品の機能保全対策により、設備全体の延命化を図ることが必要である。
機能保全対策を検討する際、長寿命化は当然考慮すべきものだが、経済性や技術的な整合等に留意して検討する必要がある。
地区全体としての対策の妥当性の検討
同一施設のコンクリート施設との対策時期の同期化を図ることは当然のことであるが、施設管理者が管理する地区全体の対策を確認し、年度実施計画や費用負担等の面から実効性のある計画であるか確認をとる必要がある。
点検・整備計画
引用:農業水利施設の機能保全の手引き「ポンプ場(ポンプ設備)」農林水産省
余寿命は点検・整備の状態によって大きく影響を受けます。
そのため、評価された余寿命期間中、部位の性能が必ずしも満足されるわけではないので、日常管理上の問題点を踏まえたうえで点検・整備内容について適確に指導・助言することが必要であります。
施設機械設備の維持管理においては、施設管理者が行う定期点検が極めて重要であり、機能保全を進めていくうえでも、定期点検といかに関連できるかが鍵となる。
診断結果をもとに、S-3、S-2と評価された部位などの、整備・補修に関する助言、維
持管理方法等に関する助言を行い設備の機能維持を図るとともに、今後の定期点検についても助言を行い合理的な点検を確実に実施することで、機能診断調査の合理化が図られ、常に最新の設備の状況を把握することが可能になる。
設備・部位等の重要度・稼働形態などを考慮し、合理的な保全方式の選択や、点検項目・点検周期の検討を行って、効率的な点検整備計画を助言します。
点検
点検とは、設備・機器の異常・故障・疲労・劣化などによる機能損失の有無、性能低下の確
認などのために実施する目視・聴覚・嗅覚・打診・触診及び簡単な器具や測定機器を用いた計測・動作確認等、それを記録することです。
点検
- 日常点検
- 定期点検
- 臨時点検
日常点検
日常点検とは、始動前、始動中、運転中に実施する異常の有無確認や、見回り点検による
第三者事故の防止等を目的として、日常又は 1 ヶ月未満のサイクルで実施する点検のことです。
定期点検
定期点検には、「年点検」や「管理運転点検」等があり、設備等の状況把握・機能保全を図るため、当該設備の目的・機能・設置環境に対応した方法で実施します。
洪水時ポンプなどの待機系の設備は、管理運転を実施し機能を確認することが必要です。
年点検は、打診・触診・聴診及び計測等による診断を中心とした方法によるが、できるだけ定量的な点検方法により機能を確認します。
管理運転点検は、管理運転を実施して機能損失の有無を確認するものとし、前回の点検結果との相違についても注意して実施する傾向管理の実施を行います。
傾向管理は施設機械設備の劣化判定方法の一つで、機器・部品等の状態を経時的に監視・計
測して、その傾向の変化より機器の劣化進行を把握する方法です。
計測値の経年変化をグラフ上にプロット(傾向管理グラフ)し、劣化の進行具合を予測し、整備・補修・更新時期を検討する。
臨時点検
臨時点検は、水質や設備に異常が生じた際や、地震、洪水、落雷等により設備機能への影
響が懸念された場合に実施する点検です。
目視点検を中心に、当該設備の目的・機能・設置環境に対応した方法で、設備全般について点検を実施します。
整備
整備は、設備の機能を常に発揮できるよう準備を整えることをいい、点検の判定結果に基づき、設備の機能保持・復帰のために実施する
- 清掃
- 調整
- 給油脂
- 部品交換
- 修理
まとめ
ポンプ設備の性能管理における機能保全計画策定の方法・特徴についてまとめました。
ポンプ設備の「性能管理」全体については、下記の記事でまとめていますのでご参照ください。
参考ページ:ポンプ設備の「性能管理」の方法・特徴について
紹介させて頂いた知識は土木施工管理技士の試験にも出てくるほど重要な知識です。
勉強に使用した書籍をまとめていますので、ご参照ください。