ポンプ設備の性能管理とは、ポンプ設備に必要な機能・性能を長期にわたって維持させる行為です。
ポンプ設備の性能レベルを健全度で表し、レベルに応じた対策を検討するため、以下の手順で性能管理がされます。
- 日常点検
- 機能診断調査
- 機能診断評価
- 機能保全計画の策定
- 機能保全(長寿命化対策)の実施
経年劣化によりポンプ機能の低下が生じるため、これらの性能管理が必要になります。
今回、経年劣化による性能低下についてまとめます。
目次
ポンプ設備の経年劣化による性能低下について
引用:農業水利施設の機能保全の手引き「ポンプ場(ポンプ設備)」農林水産省
ポンプ設備を構成する機器・部品等は、回転により発熱する部位と水に接触する部位等を有しており、使用時間とともに摩耗や腐食等の劣化の進行により故障が発生し、やがては設備全体の性能が低下します。
製造された時点には、様々な計器・機械類との取合せにより、故障が多く散見されます。
それらに対処したあとに徐々に劣化が進行し、設計上の許容範囲を越えたときに故障として現れます。
一般的に使用時間の経過とともに、
- 初期故障
- 偶発故障
- 摩耗故障
の順に推移して、劣化も次第に進んでいきます。
故障率を図に示した故障率曲線をバスタブカーブと呼びます。
ポンプ設備の劣化要因

ポンプ設備の劣化要因には、以下のものがあります。
【ポンプ設備の劣化要因】
- 機械的要因(機械的応力・振動)
- 熱的要因(異常な温度上昇)
- 電気的要因(電気化学反応による腐食)
- 環境要因(外線劣化・反応性物質・吸湿による加水分解・微生物による腐食)
- 複合的要因
ポンプ設備の劣化現象

ポンプ設備の劣化現象には、以下のものがあります。
【ポンプ設備の劣化現象】
- 摩耗
- 腐食
- 変形
- 緩み・剥離・脱落・移動
- 焼損
- 亀裂・破損
- 漏洩
- 詰まり・付着
- 振動・騒音
- 作動不良
- ディーゼル機関始動・作動不良
- 溶断・断線
- 接点不良
- 絶縁不良(短絡・漏電)
- 電動機始動・作動不良
摩耗

ポンプ設備の摩耗は、以下が原因により生じます。
【摩耗の原因】
- 過大荷重
- 過大振動
- 相対滑り
- 異物混入
- 異物付着
- 変形
- 発錆
- 潤滑不良
腐食

ポンプ設備の腐食は、以下が原因により生じます。
【ポンプ設備の腐食原因】
- エロ―ジョン
- 全面腐食
- 部分腐食
- 電食
- 環境
エロージョンは、材料硬さ(硬さ異常)・流速・周速・キャビテーションが原因です。
全面腐食は、使用環境(水分、塩分等)・防錆低下が原因です
部分腐食は、使用環境(水分、塩分等)・鋭敏化(オーステナイト系ステンレス鋼の溶接時における組織変化)・デボジットスケール(付着した腐食生成物等)が原因です
電食は、使用環境(水分、塩分、異種金属接触等)が原因です。
環境は、紫外線・オゾン・塵埃の影響のことです。
変形

変形は、以下が原因により生じます。
- 温度不均一
- 材料劣化
緩み・剥離・脱落・移動

緩み・剥離・脱落・移動は、上記の摩耗・腐食により生じます。
焼損

焼損は、焼付きとも呼ばれ、以下が原因により生じます。
- 異物混入
- 保全不良
- 潤滑不良
亀裂・破損

亀裂・破損は、以下が原因により生じます。
【亀裂・破損の原因】
- 脆性亀裂・破壊
- 延性亀裂・破壊
- 疲労亀裂・破壊
- 応力腐食亀裂・破壊
- 加工亀裂・破壊
脆性亀裂・破壊は、過大応力・残留応力が原因です。
延性亀裂・破壊は、過大応力が原因です。
疲労亀裂・破壊は、過大繰り返し応力・残留応力が原因です。
応力腐食亀裂・破壊は、残留応力・隙間腐食・鋭敏化が原因です。
加工亀裂・破壊は、繰り返し応力・紫外線・オゾン・塵埃が原因です。
漏洩

漏洩は、以下が原因により生じます。
【漏洩の原因】
- 取扱い不良
- 材料劣化
- 異物混入
- 摩耗
- 腐食
- 亀裂
詰まり・付着

詰まり・付着は、以下が原因により生じます。
【詰まり・付着の原因】
- 保全不良
- 液体の仕様不良
- 取付け不良
- 機構不良
- 異物混入
- 異物付着
振動・騒音

振動・損音は、流体的要因・機械的要因により生じます。
【振動・騒音の流体的原因】
- 流速分布の不均一
- 圧力脈動
- キャビテーション
- カルマン渦
- 空気吸込み渦
- 水中渦
- 空気吸込み
- サージング
- 水撃作用
- 目詰り
【振動・騒音の機械的原因】
- 組立不良(芯出し不良、バランス不良、締付け力不足、歯当り不良)
- 構造・剛性不良(配管反力・モーメント、サポート不良)
- 異物混入
- 潤滑不良
- 危険速度
- 自励振動
- 共振
- 変形
- 摩耗
- 基礎・支持台の不良・劣化
- トルク変動(欠相時)
- 負荷側の不平衡
- 断線電圧の不平衡
- ブラシの接触不良
- 二次回路の不平衡
作動不良

作動不良は、開動作不良・閉動作不良・機械的不良が原因により生じます。
開動作不良・閉動作不良
- コンタミネーション(汚染物、異物の混入)
- スティック(カジリ、キズ発生等)
- 流体圧力異常
- 駆動装置不良
- 機構部破損
機械的不良
- 駆動装置不良
- 機構部破損
ディーゼル機関始動・作動不良

ディーゼル機関始動・作動不良は、以下が原因により生じます。
【ディーゼル機関始動・作動不良の原因】
- 始動装置不良
- 燃料ポンプ不良
- 燃料切れ(燃料劣化)
- 始動空気圧不足
- 軸受焼損
- 吸排気弁不良
- シリンダ・ピストン焼損
- 燃料噴射ポンプ不良
- 燃料・吸気フィルタ目詰り
- 排気管・消音器詰り
溶断・断線

溶断・断線は、以下が原因により生じます。
【溶断・断線の原因】
- 過熱
- 配線不良
- 締付け不良
- 不完全投入
- 過負荷
- 異常電圧
- 短絡絶縁破壊
- 異常電圧
- 機械的破壊
- 汚損
接点不良

接点不良は、以下が原因により生じます。
【接点不良の原因】
- 異常消耗
- 過負荷
- 開閉頻度多
- チャタリング
- 腐食性ガス
- 汚損
- 接触不良
- 組立不良
- 機構部破損
- 接点脱落
- コイル断線
- 吸引不良
- 汚損
- 発錆
- 異物混入
- 保全不良
- 溶着
- 過熱
- 過負荷
- 突入電流大
- 炭化物付着
- 接触面荒れ
- 摩耗
絶縁不良(短絡・漏電)
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絶縁不良(短絡・漏電)は、以下が原因により生じます。
【絶縁不良(短絡・漏電)の原因】
- 絶縁低下
- 汚損
- 吸湿
- 焼損
- 保全不良
- 絶縁劣化(絶縁物の劣化・亀裂)
- 振動
電動機始動・作動不良

電動機始動・作動不良は、以下の原因により生じます。
【電動機始動・作動不良の原因】
- 電源不良(電圧・周波数異常)
- 断線接続不良
- 回転子不良
- 過負荷
まとめ

ポンプ設備の経年劣化による性能低下についてまとめました。
ポンプ設備は経年劣化によって必然的に性能低下しますが、適切な点検・診断・保全計画を実施することで寿命延長やトラブル防止、省エネルギー運転が可能です。
ポンプ設備の「性能管理」全体については、下記の記事でまとめていますのでご参照ください。
参考ページ:ポンプ設備の「性能管理」の方法・特徴について
「のうぎょうとぼく」の中では、農業土木に関する豊富な記事を書いています。
農業土木について詳しく学べる本について別でまとめてますので、興味があれば参照ください。
参考ページ:農業土木の勉強におすすめな参考書・問題集を紹介!