機能保全

ポンプ設備の性能管理の方法・特徴について

ポンプ場は、以下の異なる機能を分担する施設・設備から構成される複合施設です。

  • 吸込水槽・吐出し水槽・沈砂池等の「コンクリート施設」
  • ポンプ室・操作室、・電気室等の「建築施設(建屋)」
  • ポンプ設備・電気設備・水管理制御設備等の「施設機械設備」

この中のポンプ設備の機能には、用排水機能や用排水量調節機能があります。

これらの機能を十分に発揮させるためには、ポンプ設備を構成する機器・部材・部品における変形・損傷・摩耗などについて性能管理を行うことが重要であり、定期的な機能診断を行う必要があります。

今回は、このポンプ設備の性能管理について、まとめさせていただきます。

ポンプ設備の性能管理の方法について

引用:農業水利施設の機能保全の手引き「ポンプ場(ポンプ設備)」農林水産省

ポンプ設備の性能管理とは、ポンプ設備に必要な機能・性能を長期にわたって維持させる行為です。

施設造成者は、ポンプの設置目的・果たすべき機能・要求性能を十分に理解し、適切な性能管理を実施していくことが重要です。

用水機場の場合、用水の必要な場所において水需要に応じた用水量を受益地等の目的地まで送配水することが目的であり、これを達成するために送配水機能・用水量調節機能といった水利用機能が必要です。

排水機場の場合、洪水時に備えて排水を行うこと・常時排水が必要な地区において内水位を低下させ農地等を災害や湛水被害から守ることが目的であり、これを達成するために排水機能・排水量調節機能が必要です。

ポンプ設備の機能保全を行うに際しては、これら設備が有する機能に着目し、性能管理を行うことを基本としています。

ポンプ設備における機能

引用:農業水利施設の機能保全の手引き「ポンプ場(ポンプ設備)」農林水産省

ポンプ設備の本来的機能は、以下のように分類されます。

  • 水利性:農家・施設管理者の要求を満たす取水・排水が確実にできる性能
  • 設備信頼性:機械設備等を長期使用しても安定して稼動できる性能
  • 構造安全性:水理学的・力学的に安全な構造である性能
  • 修復性:地震等の災害時・故障・損傷時において、容易に復旧できる性能
  • 耐久性:部材の経年・使用頻度・環境作用による劣化に抵抗する性能

水利性は、制御設備やポンプ設備を含む設備全体としての性能が十分であるか確認する必要がります。

設備信頼性は、ポンプ設備全体・装置レベルで十分な品質や動作確実性を有しているか確認する必要があります。

構造安全性は、ポンプ設備が有害なキャビテーションを発生させない構造となっているか、安全な水密構造となっているか、部材が十分な強度を有しているか確認する必要があります。

耐久性・修復性は装置・各部品レベルで、十分な性能を有しているか確認する必要があります。

また本来的な機能以外にも、社会的要求に対して適切に貢献するために、社会的機能があります。

社会的機能は、以下のように分類されます。

  • 経済性:建設費・維持管理費等のライフサイクルコストを低減できる性能
  • 環境性:騒音・振動・CO2排出・生態系への影響を低減でき、景観への配慮・周辺環境と適合する性能
  • 維持管理性:施設管理時において、施設管理者・第三者の人的安全性を確保しながら容易に操作・管理ができる性能

ポンプ設備の性能管理の手順

 

引用:劣化予測と対策工法の検討 農林水産省

ポンプ設備の性能レベルを健全度で表し、レベルに応じた対策を検討します。

その際には、以下のことを十分に理解・把握し、管理する必要がある。

  • ポンプを構成する部位等の重要度
  • 摩耗・損傷等の劣化が設備に与える影響度
  • 水質や流下物等の周辺環境
  • 使用頻度

ポンプ設備は、長年の使用による経年劣化のため健全度が低下し、機能保全(長寿命化対策)を講じなけれ設備の性能の限界を迎え、使用不能となります。

様々な機器・部品等の集合体であるポンプ設備は点検・整備などにより適切な時期に機器・部品等の修理や交換を行うことにより、供用期間の延伸が期待できます。

しかし、ポンプ設備は、オーバーホールに多大な経費が掛かるため、機能診断結果により交換を含めた長期的な整備計画(機能保全計画)を立てる必要がある。

そのため、ポンプ設備の性能管理は、

  • 施設管理者が行う日常点検・定期点検等の結果
  • 施設造成者が行う機能診断の結果

をもとに、機器・部品等の健全度を評価し、機能保全計画の策定を行うことを基本としています。

効率的な性能管理に取り組むため、施設管理者と施設造成者が連携・調整し、点検・機能診断項目や内容の合理化、実施時期の同期化を図ることが望ましいです。

性能管理の手順として

引用:農業水利施設の機能保全の手引き「ポンプ場(ポンプ設備)」農林水産省

  1. 日常点検
  2. 機能診断調査
  3. 機能診断評価
  4. 機能保全計画の策定
  5. 機能保全(長寿命化対策)の実施
  6. ①に戻る

となります。

保全方式とは

引用:農業水利施設の機能保全の手引き「ポンプ場(ポンプ設備)」農林水産省

保全の方式としては、予防保全・事後保全に分けられます。

予防保全(Preventive Maintenance(PM))は、設備の使用中における故障を未然に防止し、設備を使用可能状態に維持するために計画的に行う保全です。

事後保全(Breakdown Maintenance(BM))は、設備が機能低下、もしくは機能停止した後に使用可能状態に回復する保全です。

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経年劣化による性能低下とは

引用:農業水利施設の機能保全の手引き「ポンプ場(ポンプ設備)」農林水産省

ポンプ設備を構成する機器・部品等は、回転により発熱する部位と水に接触する部位等を有しており、使用時間とともに摩耗や腐食等の劣化の進行により故障が発生し、やがては設備全体の性能が低下します。

製造された時点には、様々な計器・機械類との取合せにより、故障が多く散見されます。

それらに対処したあとに徐々に劣化が進行し、設計上の許容範囲を越えたときに故障として現れます。

一般的に使用時間の経過とともに、

  1. 初期故障
  2. 偶発故障
  3. 摩耗故障

の順に推移して、劣化も次第に進んでいきます。

故障率を図に示した故障率曲線をバスタブカーブと呼びます

ポンプ設備の劣化要因には、以下のものがあります。

  • 機械的要因
  • 熱的要因
  • 電気的要因
  • 環境要因
  • 複合的要因
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日常点検

引用:農業水利施設の機能保全の手引き「ポンプ場(ポンプ設備)」農林水産省

ポンプ設備の日常点検は、以下の事項を考慮して適正な点検項目を決定します。

  • 設備・部位の重要度
  • 使用条件
  • 使用環境
  • 稼働形態
  • 装置や機器等の特性

重要な設備の点検においては、年点検・管理運転点検・運転時点検を全て行うこと
が望ましい。

しかし、運転時点検の少ない待機系設備においては管理運転点検を必須とするなど、稼働形態によって点検項目・点検頻度に軽重を付けて、点検の合理化を図ります。


機能診断調査

引用:農業水利施設の機能保全の手引き「ポンプ場(ポンプ設備)」農林水産省

機能診断調査は、性能レベル(健全度)を把握する目的に実施されます。

設備の機能・性能がどの程度要求性能を満たしているか・どの程度性能低下しているかを判定し、余寿命を推定し、異常・故障に関する原因・将来への影響を予知・予測します。

機能診断調査に係る情報は、一元化を図りデータベースとして蓄積し、施設の状態を把握するための基礎情報として活用します。

ポンプ場の機能診断調査は、効率的に施設を把握する観点から以下の3段階を基本とし、ポ
ンプ設備の構成要素毎の主要な劣・劣化特性を踏まえて、合理的に調査を実施します。

  1. 資料収集や施設管理者からの聞き取りによる事前調査
  2. 設備の概況把握・仮設の必要性確認・現場の制約事項の確認等を行う現地踏査
  3. 目視・計測等により定性的・定量的な調査を行う現地調査

事前調査は、設備の状況や問題点等を把握し、現地調査の実施方法の検討を目的とし、機能診断調査のための基本的情報を収集します

現地踏査では、事前調査で得られた情報をもとに、現地を踏査して設備一式を観察し、劣化の箇所・位置・程度を概略把握して、現地調査場所・項目・方法を決定します。

現地調査は、事前調査・現地踏査の結果から、設備の重要度や経済性を踏まえて効率的な調査計画を検討し、現地において定性的・定量的な調査・診断を実施します。

効率的に健全度を把握することで、その結果をもとに有効な保全対策を検討することができるようになります。

診断には、五感による目視・聴音等や簡易計測等の簡易診断による定性的概略診断調査を実施して、必要に応じ詳細計測等を行う定量的詳細診断調査を行います

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機能診断評価

引用:農業水利施設の機能保全の手引き「ポンプ場(ポンプ設備)」農林水産省

機能診断評価は、機能診断調査の結果から設備・装置・部位の性能低下状態・要因を把握し、設備・装置・部位の健全度を総合的に判定します。

健全度の把握のみではなく、性能レベルが低下しないように施設管理者に対し助言を行い、点検・整備を通じ性能維持の向上を図る。

更新に向けた判断指標としても健全度は使用されるため、施設管理者と調整が必要になります。

ポンプ設備の性能管理における機能診断評価の方法・特徴についてポンプ設備の性能管理とは、ポンプ設備に必要な機能・性能を長期にわたって維持させる行為です。 ポンプ設備の性能レベルを健全度で表し、...

機能保全計画の策定

機能保全計画は、診断時点より40年を基本とする検討対象期間に設備の性能を維持していくための計画である。

そのため、機能保全計画を策定する前に、保全対策が必要となる時期・方法から設備全体としての対策実施の要否・時期を明らかにするため、機能診断調査・評価の結果を用いて、性能低下予測を実施します。

性能劣化予測から、性能指標が検討対象期間に管理水準の範囲に留める対応方針を比較検討し、適切な機能保全コストを踏まえた機能保全計画を策定します。

故障等の危険度が高く早急に対策を検討する装置・部位等は、性能低下予測のプロセスを経ることなく機能保全対策の実施シナリオの作成検討を行います。

機能保全計画の策定は、機能保全コストの最小化に着目し、「設備機能の維持・対策実施の合理性・設備重要度との適合性・維持管理の容易さ」などを総合的に勘案し策定します。

ポンプ設備の性能管理における機能保全計画策定の方法・特徴についてポンプ設備の性能管理とは、ポンプ設備に必要な機能・性能を長期にわたって維持させる行為です。 ポンプ設備の性能レベルを健全度で表し、...

まとめ

不勉強ながら、ポンプ設備の性能管理の方法・特徴についてまとめさせていただきました。

施設管理については、ポンプ設備以外にも「除塵機」「電気設備」など様々な設備があります。

これらを含めた総合的な施設管理についても実施していく必要があります。

そのために、ポンプ施設管理技術者などの個々の設備における資格の他にも、「機械保全技能士」の資格などの取得を目指すのも良いかもしれません。

今後も機械設備について研鑽に努め、農業土木分野についても手広く知識を吸収したいと思います。

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