豚コレラ(豚熱)・アフリカ豚熱の防疫対策は
- 異常豚発生の監視
- 異常豚発見時の初動対応
- 異常豚発見時の臨場検査
- 検体の送付
- 農場内の疫学情報の収集
- 検査判断前準備
- 検査判定(陽性判定)
- 陽性判定時の防疫措置
- 農場周辺の人の通行制限・通行遮断
- 農場周辺の豚等の移動制限・搬出制限
- 消毒ポイントの設営
- ウイルスの感染状況調査
- ワクチンの接種(豚コレラの場合)
の流れで実施されます。
今回、⑧陽性発生時の防疫措置についてまとめます。
目次
【豚コレラ(豚熱)・アフリカ豚熱】発生時の防疫措置について
【豚コレラ(豚熱)・アフリカ豚熱】の患畜・疑似患畜と判定された場合、原則として24時間以内にと殺を完了し、72時間以内に死体の処理を行わなければなりません。
その後、汚染物品の処理を行い、畜舎を消毒して防疫措置が完了します。
これらは行政処分として行われるので、豚等の所有者に対して、補償を行います。
防疫措置の簡単な流れをまとめると以下の通りになります。
【防疫措置の流れ】
- 殺処分・屠殺(と殺)
- 死体の処理
- 汚染物品の処理
- 畜舎等の消毒
- 畜舎等における殺虫剤の散布(アフリカ豚コレラのみ)
- 豚の評価・補償
①殺処分・屠殺(と殺)
豚コレラ(豚熱)・アフリカ豚熱が陽性だと判断された場合、患畜・疑似患畜は原則として24時間以内に殺処分・屠殺(と殺)を完了しなければなりません。
殺処分・屠殺(と殺)の方法は、作業者の安全を確保することに留意し、「薬殺」「電殺」「炭酸ガス」のいずれかで実施されます。
動物福祉の配慮(鎮静剤・麻酔剤の使用)を可能な限り行うこととされています。
殺処分・屠殺(と殺)の詳細については、下記記事にてまとめていますのでご参照ください。
②死体の処理
患畜・疑似患畜の死体については、原則として、患畜・疑似患畜と判定した後72時間以内に、発生農場・その周辺において「埋却」します。
埋却による処理が困難な場合には、焼却処理・化製処理を行った上での埋却か焼却による処理を行います。
死体の処理の詳細については、下記記事にてまとめていますのでご参照ください。
③汚染物品の処理
汚染物品は、発生農場等に由来する以下のものが該当します。
- 精液・受精卵等の生産物
- 排せつ物
- 敷料
- 飼料
- その他ウイルスにより汚染したおそれのある物品
汚染物品は、原則として、発生農場等・その周辺において埋却します。
埋却による処理が困難な場合には、焼却処理・消毒を行います。
汚染物品の処理の詳細については、下記記事にてまとめていますのでご参照ください。
④畜舎等の消毒
と殺の終了後、患畜・疑似患畜の所在した畜舎等における消毒を、家畜伝染病予防法施行規則に従い、1週間間隔で3回以上実施します。
消毒は炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、次亜塩素酸塩、逆性石けん、ヨウ素化合物などを成分とする消毒薬を用いて行います。
と畜場の消毒については、糞尿等が十分に除去されるよう洗浄した上で、1回以上実施します。
⑤畜舎等における殺虫剤の散布(アフリカ豚コレラのみ)
と殺の終了後、消毒に併せて、アフリカ豚コレラウイルスを伝播する可能性がある吸血昆虫(ダニ等)の散逸を防ぐため、畜舎内を中心に殺虫剤を散布します。
殺虫剤の例
- フェニトロチオン製剤
- トリクロルホン製剤
- プロペタンホス製剤
- カルバリル製剤
⑥豚の評価・補償
豚等の評価額は、患畜・疑似患畜であることが確認される前の状態についてのものとする。
評価額の算出は、原則として、当該豚等の導入価格に、導入日から患畜・疑似患畜であることが確認された日までの期間の生産費(統計データを用いて算出する。)を加算して行い、これに当該豚等の体型、経産の有無、繁殖供用残存期間等を考慮して必要な加算又は減算を行います
豚等の所有者等は、と殺に先立ち、豚等の評価額の算定の参考とするため、と殺の対象となる個体(多頭群飼育されている場合にあっては、群ごとの代表的な個体)ごとに、当該豚等の体型・骨格が分かるように写真を撮影します。
農林水産省は、都道府県において豚等の評価額の算定を速やかに実施することが困難と認められるときは、関係省庁と協議の上、直ちに概算払を行います。
豚の評価・補償の詳細については、下記記事にてまとめていますのでご参照ください。
まとめ
【豚コレラ(豚熱)・アフリカ豚熱】発生時の防疫措置についてまとめました。
【豚コレラ(豚熱)・アフリカ豚熱】が実際に発生した場合の防疫措置については、下記記事にてまとめていますのでご参照ください。
参考文献等
文献
- 「豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針」
- 「アフリカ豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針」
- 「舛甚ら(2018)ロシア及び東欧諸国におけるアフリカ豚コレラ(ASF)発生とその現状について」 豚病研究会報72:1-7
- 「山田ら(2018)東欧強毒株を用いたアフリカ豚コレラウイルス感染実験について」豚病研究会報72:8-15
- 「アフリカ豚コレラの歴史とリスク分析」小澤義博(2014)獣医疫学雑誌
- 「アフリカ豚コレラの知識: 野外応用マニュアル」FAO Animal Health Manual No. 9
- 「アフリカ豚コレラ (ASF) の防疫要領策定マニュアル」FAO Animal Health Manual No. 11
HP
- アフリカ豚コレラについて(農林水産省HP)
- African Swine Fever(OIE)