アフリカ豚コレラ

中国で拡大しているアフリカ豚コレラとは何?人間への影響は?

アフリカ豚コレラ(African Swine Fever:ASF)は、アフリカ豚コレラウイルス(ASFV)が豚とイノシシに感染する熱性伝染病で、発熱や全身の出血性病変を発症させ、強い伝染性と高い致死率を特徴とします。

牛や馬、その他家畜への感染報告はなく、人には感染しません。

アフリカでは常在的に、ロシア及びその周辺諸国でも発生が確認されています

中国での感染が拡大している中、日本への拡大が懸念されており、アフリカ豚コレラに関する正しい知識が必要になっております。

アフリカ豚コレラについての知識を深めるために、勉強したことをまとめさせていただきました。

アフリカ豚コレラウイルス(ASFV)について

ASFVは、アスファウイルス科アスフィウイルス属(Asfarviridae Asfivirus)に分類される唯一のウイルスです。

ウイルスの抗原型(血清型)は単一だが、塩基配列の違いに基づいた遺伝子型別が可能で、22種の遺伝子型が知られている。

この遺伝子型を識別することで、どの地域から侵入してきたか判別できます。

例えば、南東アフリカで流行するウイルスはII型に属しており、2007年のコーカサス地方への侵入は南東アフリカからと推定されています。

ウイルスの潜伏期間は、接触感染の場合の5~21日といわれているが、ダニによる吸血や創傷部から直接血液中に侵入した場合はこれより短いです。

肉、血液、糞便などの蛋白質を含むものの中では、長い期間感染性が維持されます。

pH ・低pH・温度の大きな変化・消毒剤に抵抗性があります。

そのため、ワクチンが未だに開発されていないウイルスです。

アフリカ豚コレラに感染した際の症状

アフリカ豚コレラに感染した際の症状は、感染経路・ウイルス株・年齢・健康状態などによって異なり、

  • 甚急性型
  • 急性型
  • 亜急性型
  • 慢性型
  • 不顕性型

と病態が違います。

高い感染能力・高い致死性を持つのが特徴です。

甚急性型

甚急性型は、症状として以下がでます。

  • 41°C以上の発熱
  • 元気消失
  • 食欲不振
  • 赤色透明の腹水や胸水の増量あるいは肺水腫(解剖時)

多くは異変を表すことなく、感染後4日以内に突然死し、致死率は100%です。

急性型

急性型は、最もよく発症する型で、症状として以下がでます。

  • 40~42°Cの発熱(感染3~6日後)
  • 元気消失
  • 食欲不振
  • 皮下出血や出血
  • 耳翼に紅斑を示し、紫斑(チアノーゼ)に変化
  • 腹式呼吸
  • 下痢
  • 流産(母豚の場合)
  • 脾臓のうっ血性脾腫(解剖時)
  • 胃の周囲のリンパ節と腎門リンパ節の暗赤色化(解剖時)
  • 赤色透明の腹水や胸水の増量、扁桃の出血(解剖時)
  • 腎臓の点状出血もしくは暗赤色化(解剖時)
  • 腸間膜リンパ節の腫大と暗赤色化(解剖時)
  • 消化管粘膜の出血(解剖時)
  • 心外膜心内膜の点状出血、肝臓の出血斑、膀胱や胆嚢の粘膜の点状出血などの内臓諸臓器の出血性病変

感染した豚は発熱後1週間以内に死亡し、致死率は概ね100%である。

亜急性型

亜急性型は、急性型と同じ症状を表しますが、進行が緩やかで感染後7~20日に死亡します。

致死率は70%以下で、生き残った豚は3~4週間で回復します。

出血量は、急性型よりも多いです。感染7日目以降の血小板減少症は急性型より強く、粘膜を傷つけると容易に出血します。

慢性型

慢性型は、顕著な症状を表しません。

呼吸器症状や下痢など症状が出たような報告があるが、細菌の二次感染によるものです。

過去にポルトガルなどで発生が報告されているが、近年では慢性型は確認されていません。

不顕性型

不顕性型は、アフリカのイボイノシシやカワイノシシ類に見られるもので、無症状で感染が長期間持続します。

保菌するのみで、死亡もしないので、菌を遠方まで運びます。


アフリカ豚コレラと豚コレラの症状の違い

外貌の症状からアフリカ豚コレラと豚コレラを鑑別することは不可能であり、鑑別にはウイルス学的検査が不可欠です。

脾臓の病変(黒色化と腫大)が発症した場合アフリカ豚コレラが強く疑われ、脾臓の出血性梗塞が発症した場合豚コレラが強く疑われる傾向はありますが、二次感染によって鑑別は難しくなります。

アフリカ豚コレラに類似の症状を示す感染症としては、以下のようなものがあります。

  • 豚コレラ
  • トキソプラズマ症
  • 豚丹毒
  • サルモネラ症

外部からの感染ルート

感染ルートとして

  • 精肉や非加熱の豚肉加工品の食品残渣による伝播
  • 野生のイノシシ間の伝播
  • ヒメダニ属(軟ダニ(soft tick)Ornithodoros属)による伝播
  • サシバエによる伝播

があげられている。

精肉や非加熱の豚肉加工品による伝播

ASFVは、死亡した豚の血液・臓器・筋肉内に3~6か月間残存します。

ウイルスに汚染された豚肉や豚肉加工品が食品残渣として豚に給餌することで感染します。

ウイルスは冷凍された豚肉内で110日間以上、スペインの生ハム中で140日間以上、燻製や塩漬のハム等の中でも300日間以上感染性を失わないという報告があります。

死亡した豚を他の豚がかじったり食べたりすることによっても伝播する可能性があり、中国などにおいては野外に廃棄された豚や病死した野生のイノシシが感染源の1つだと言われています。

ASFVは血液中にも大量に含まれるため、解剖の際には周辺環境への血液を介したウイルス汚染も問題となり、感染豚が血便や鼻血を呈している場合には同居豚へも容易に感染します。

糞便中のウイルスは室温で数日間生存するため、消毒が不十分な器具や車両等を介しても拡散します。

豚肉や豚肉加工品あるいはそれらが混入した可能性がある飼料を給与する場合は、必ず70°C・30分間以上又は80°C・3分間以上の加熱処理をしなければなりません。

野生イノシシ間の伝播

ASFVは、家畜の豚(Sus scrofa domestica)やヨーロッパイノシシ(S. scrofa scrofa)に対して高い病原性を示す。

一方、アフリカのイボイノシシ(Phacochoerus aethiopicus)・カワイノシシ類(Bush pig : Potamochoerus larvatus, P. porcus)は、感染しても無症状であり、中間宿主と考えられています。

水浴びや泥浴びをする水場が感染拡大の温床となる可能性が高いです。

イボイノシシでは唾液や鼻汁中へのウイルス排泄は少なく、イボイノシシ間あるいはイボイノシシと豚との間では接触による直接伝播は成立せず、媒介者(ベクター)であるダニを介して間接伝播します。

ヒメダニ属(軟ダニ(soft tick)Ornithodoros属)による伝播

感染ダニの吸血により家畜の豚にウイルスが伝播します。

媒介ダニを介して感染した豚は、経口経鼻的に感染した豚よりも早期に重篤な症状を示して死亡します。

ヒメダニ属(軟ダニ(soft tick)Ornithodoros属)は媒介者(ベクター)になりますが、マダニ属は媒介者になりません。

ヒメダニ属は、普段は地中にいて、吸血する際に地上に出てきます。

吸血が済んだらすぐに地中に戻るという性質があるため、このダニがヒトの体や服について国内に持ち込まれる可能性は非常に低いが、感染地での拡大の主な要因になっています。

また、ダニ間で、卵を介しての感染・成虫間での交尾によるウイルスが広がります。

サシバエによる伝播

サシバエは、媒介者として働き、感染豚を刺咬後少なくとも 23時間は他の豚を感染させることができます。


家畜豚での伝播の仕方

外部からもたらされたASFVにより、家畜豚内で感染が拡大します。

感染した動物は感染後4~5日から唾液や鼻汁中に大量のウイルスを排泄するようになり、その後糞便中にも排泄する。

口や鼻孔からウイルスが侵入することで感染します。

粒子径が大きいためか空気感染はしませんが、短い距離で飛沫感染します。

アフリカ豚コレラの診断方法

ウイルスDNAの検出用の材料として、生きている豚であれば、全血・血清が最も有効です。

死亡した豚では採血ができませんが、脾臓・扁桃・下顎リンパ節・腎臓を用いた検査・診断ができます。

鼻腔スワブや口腔スワブからのウイルス検出も可能です。

流産胎子からはウイルスは検出されないため、流産の場合は母豚の採血が薦められます。

アフリカ豚コレラウイルス(ASFV)の検出方法

国際標準となる診断手法を収録した国際獣疫事務局(OIE)マニュアルには推奨されるASFVの検出手法として、以下が挙げられています。

病原学的検査

  • 赤血球吸着試験(HAD)
  • 蛍光抗体法(FAT)
  • コンベンショナルPCR法
  • リアルタイムPCR法

 

抗体検査

  • ELISA法
  • 間接蛍光抗体法
  • ウェスタンブロット法

「アフリカ豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針」(平成25年6月26日:農水省)に定められる診断手法は、

  • 遺伝子検査(コンベンショナルPCR法、リアルタイムPCR法)
  • FATによる抗原検出検査
  • ウイルス分離検査
  • 血清抗体検査

が挙げられている。

リアルタイムPCR法は簡便で特異性や感度に優れるため、迅速な診断に有効であり、簡易診断で行われる。

確定診断には疫学情報を含む複数の情報や検査結果にて総合的に判断する。


アフリカ豚コレラの防疫対策

アフリカ豚コレラに係る防疫対策については、家畜伝染病予防法第3条の2に基づく「アフリカ豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針」(農水省)に従って、飼養衛生管理基準の遵守・早期発見・早期通報等の徹底・埋却・焼却等の防疫措置などを行っています。

細かな防疫対策については、以下でまとめさせていただいております。

豚コレラ・アフリカ豚コレラが発生した場合の防疫対策について豚コレラは、平成30年9月9日に26年ぶりとなる豚コレラの発生が確認され、野生のイノシシ・養豚農場の豚での感染が拡大しています。 ...

発生予防対策

  • 衛生管理区域、豚舎への出入りの際の洗浄・消毒の徹底
  • 衛生管理区域専用の衣服、靴の設置と使用の徹底
  • 人・物の出入りの記録
  • 飼料に肉を含み、又は含む可能性があるときは、あらかじめ摂氏70度・30分間以上又は摂氏80度・3分間以上の加熱処理を徹底
  • 飼料保管場所等へのねずみ等の野生動物の排せつ物等の混入防止
  • 豚舎周囲の清掃、整理・整頓
  • 死亡家畜の処理までの間、野生動物に荒らされないよう適切に保管

アフリカ豚コレラの有効な消毒方法について

アフリカ豚コレラウイルスは、

  • 2~3%の塩素系
  • ヨード系消毒薬

30分間処理することが有効です。

豚舎の汚泥・糞便などの消毒には、

  • 1%水酸化ナトリウムか1%水酸化カルシウムで3分間、
  • 0.5%水酸化ナトリウムか0.5%水酸化カルシウムで30分間

で処理することが有効です。

豚・飼料・敷材などについては焼却もしくは埋却する。

加熱処理も有効で、少なくとも70°C・30分間以上、80°C・3分間以上の加熱処理が有効です。

血清や体液には60°C・30分間の加熱以上の加熱処理が有効です。

pH3.9未満の酸またはpH11.5を越えるアルカリでの処理も有効です。

アフリカ豚コレラの最新情報の取得方法

アフリカ豚コレラは、現在中国で拡大しておりますが、それが他国に侵入する可能性もあり、様々な角度での情報収集が必要になります。

そのための情報収集先を調べてみました。

ProMEDに掲載されたアフリカ豚コレラに関連する情報

ProMEDとは、the Program for Monitoring Emerging Diseasesの略称で、世界からメールで発信された最新の感染症情報が集約されています。

新興・再興感染症の監視を目的としたメーリングリストです。

英語で情報を得なければなりませんが、最新の情報が最速で手に入ります。

下記の農研機構のHPにてアフリカ豚コレラについて情報を絞っていただけてますので、英語に抵抗がなければここから情報を入手しましょう。

農研機構:ProMEDに掲載されたアフリカ豚コレラに関連する情報

農水省HPに掲載されたアフリカ豚コレラに関連する情報

正確で安全な情報を手に入れるには、官公庁が提示している情報を入手するのが一番です。

農水省HPにて、アフリカ豚コレラについて広範囲に渡って情報が集約されています。

ProMEDに掲載される情報よりはタイムラグが少々あるかもしれませんが、日本で情報収集するにはここから入手しましょう。

農水省:農水省HPに掲載されたアフリカ豚コレラに関連する情報

まとめ

アフリカ豚コレラについて勉強したのでまとめさせていただきました。

不勉強なところもあるかと思いますので、今後も勉強を続けてブラッシュアップしたいです。

参考文献等

  • 「舛甚ら(2018)ロシア及び東欧諸国におけるアフリカ豚コレラ(ASF)発生とその現状について」 豚病研究会報72:1-7
  •  「山田ら(2018)東欧強毒株を用いたアフリカ豚コレラウイルス感染実験について」豚病研究会報72:8-15
  • 「アフリカ豚コレラの歴史とリスク分析」小澤義博(2014)獣医疫学雑誌
  • 「アフリカ豚コレラの知識: 野外応用マニュアル」FAO Animal Health Manual No. 9
  • 「アフリカ豚コレラ (ASF) の防疫要領策定マニュアル」FAO Animal Health Manual No. 11

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