生態学では動物の行動について、オランダの動物行動学者ニコラース・ティンバーゲンの「ティンハーゲンの4つのなぞ」(ティンハーゲンの4つの問い)の考え方が大事になります。
ティンハーゲンは、1973年にコンラート・ローレンツ、カール・フォン・フリッシュと共にノーベル医学生理学賞を受賞しています。
今回は、「ティンハーゲンの4つの問い・4つのなぞ」についてまとめます。
目次
「ティンハーゲンの4つの問い・4つのなぞ」とは?
プロセス | メカニズム | |
至近要因 | 発達要因 その行動がどのような過程で発達したのか | 機構要因 その行動が引き起こしている直接の要因は何か |
究極要因 | 系統進化要因 その行動が進化の道筋でどう現れてきたか | 機能要因 その行動が生殖・生存にどう機能しているか |
「ティンハーゲンの4つの問い・4つのなぞ(Tinbergen’s four whys)」とは、1973年にノーベル医学・生理学賞を受賞した動物行動学者ニコ・ティンバーゲン(Nikolaas Tinbergen)が、1963年の”On the aims and methods of ethology”にて「生物がある機能をなぜ持つのか」という疑問を4つに分類したものです。
ティンハーゲンは、動物の行動・性質は様々な次元から説明が可能であり、「それらの説明は同時に成り立つこと」「どれか一つでも欠ければ完全な説明にはならないこと」を示します。
- 発達要因:その行動がどのような過程で発達したのか
- 機構要因:その行動が引き起こしている直接の要因は何か
- 系統進化要因:その行動が進化の道筋でどう現れてきたか
- 機能要因:その行動が生殖・生存にどう機能しているか
発達要因(development )
発達要因では発生学の視点から、行動は遺伝と環境の相互作用の産物であり、臨界期のように遺伝子は環境の影響を受けるタイミングを決定していると考えます。
機構要因(causation )
機構要因では生理学の視点から、行動は神経・脳・ホルモンなどが作用することで、個々の行動が発現されています。
系統進化要因(evolution)
系統進化要因では、行動は個体は過去の様々な世代の特徴を引き継がれることで発現されていると考えます。
機能要因(function)
機能要因では、行動は生存・繁殖が適応度にどのような影響を与えているかで考えます。
「ティンハーゲンの4つの問い・4つのなぞ」の具体例 鳥のさえずり
鳥の鳴き方には、地鳴き・さえずりの2種類があるとされています。
なぜ雄がさえずりをするのかを、ティンハーゲンの4つの問いに沿って4つの角度から分析されています(関義正。(2015年)。宮澤・伊澤論文にある「競争的利他性予告」に対する鳥の歌研究者によるコメント―宮澤・伊澤論文へのコメント―.心理学評論, 58 (3 ) , 313-317 .)。
- 発達要因:幼鳥から成鳥になる過程で、どのようにさえずりを習得するのか
- 機構要因:鳴管の使い方・さえずり時期の把握方法はどのようなメカニズムか
- 系統進化要因:鳴禽類の祖先はいつどのように獲得したのか
- 機能要因:さえずりによる「縄張り獲得」「メスへのアピール」はどう機能しているか
まとめ
「ティンハーゲンの4つの問い・4つのなぞ」ついてまとめました。
生態学についてより深く勉強するのに、おすすめの書籍をまとめていますのでご参照ください。