基礎生態学

日本の「植物相・植物区系」「動物相・動物地理区」について

植物が気温・降雨量などの環境要因に適した場所に生育し、植物を元とする動物が合わせて生育することによって、特徴的な生物相が作り上げられます。

生物相は分布によって区分けされており、分けられた区域を「生物区」「生物地理区」と呼びます。

植物に関する生物相を「植物相」・動物に関する生物相を「動物相」と表現し、植物相で分類したものを「植物区系」・動物相で分類したものを「動物区系」とします。

日本は南北に長いため、独特な区分けがされているため、日本の「植物区系・動物区系」についてまとめてみます。


日本の「植物区系」について

世界の植物相はこの6つの区系界に区分されますが、日本は南西諸島・小笠原諸島・南鳥島が旧熱帯区系界に属し、残りの地域は全北区系界に含まれます。

日本列島は、水平的にも垂直的にも変化に富んでいる地形環境から、多くの固有属・固有種が分布しています。

北海道・本州・四国・九州には約900属4000種の種子植物と約400種のシダ植物が見られ、琉球諸島からは約1500 種の種子植物と250種のシダ植物。小笠原諸島では180種の種子植物と80種のシダ植物が知られています。

固有属としては「アオキ属・アケビ属・キボウシ属」などが挙げられ、固有種としては「アスナロ・ヤマザクラ・ワサビ」などが挙げられます。

日本の植物区系として、以下のように分類することができます。

【日本の植物区系】

  1. えぞーむつ地域
  2. 日本海地域
  3. 関東地域
  4. フォッサ・マグナ地域
  5. そはやき地域
  6. 阿哲地域
  7. 小笠原地域
  8. 琉球地域

①えぞーむつ地域

えぞーむつ地域は、渡島半島を除く北海道全域と北上高地をが含む地域です。

冷温帯から寒温帯の気候帯があり、針葉樹林帯が広がっています。

えぞーむつ地域の固有種として、「トドマツ・アカエゾマツ・ミヤマハンモドキ・エゾツツジ」などが挙げられます。


②日本海地域

日本海地域は、北海道西部・津軽半島から山陰を含む地域です。

温暖帯から寒温帯の気候帯があり、積雪量が多い特徴があります。

日本海地域の固有種として、「シラネアオイ・キャラボク・アクシバ」などが挙げられます。

③関東地域

関東地域は、東北から関東地方の太平洋側が含まれる地域です。

暖温帯から寒温帯の気候帯であり、秩父山地・筑波久慈山地などの山地・関東平野などの平地があります。

関東地域の固有種として、「シバヤナギ・タマアジサイ・アブラツヅジ」などが挙げられます。

④フォッサ・マグナ地域

フォッサ・マグナ地域は、富士箱根伊豆・伊豆七島・房総半島を含む地域です。

富士火山帯地域で、火山活動の影響を強く受けているのが特徴です。

フォッサ・マグナ地域の固有種として、「ハコネメツツジ・ハコネウツギ・フジアザミ」などが挙げられます。


⑤襲速紀(そはやき)地域

そはやき地域は、本州西部の太平洋側から四国・九州を含む地域です。

温暖帯から冷温帯の気候帯であり、中国大陸との近縁種が多いのが特徴です。

そはやき地域の固有種として、「トガサワラ・センダイソウ・ヤハズアジサイ」などが挙げられます。

⑥阿哲地域

阿哲地域は、広島県東部・岡山県西部を含む地域です。

石灰岩地帯であり、朝鮮半島との近縁種が多いのが特徴です。

阿哲地域の固有種として、「アテツマンサク・ヤマトレンギョウ・キビヒトリシズカ」などが挙げられます。

⑦小笠原地域

小笠原地域は、小笠原諸島を含む地域です。

大陸から離れた海洋火山島で、種数は少ないが固有種の割合が高いのが特徴です。

小笠原地域の固有種として、「ワダンノキ・オガサワラツツジ・シロテツ」が挙げられます。

⑧琉球地域

琉球地域は、奄美群島以南の南西諸島を含む地域です。

亜熱帯の気候帯で、熱帯性の種が多いのが特徴です。

琉球地域の固有種として、「リュウキュウマツ・ソテツ・オキナワウラジロガシ」などが挙げれます。

日本の「動物区系」について

世界の動物相はこの6つの動物区系に区分されますが、日本は九州本島以北の地域の動物相は旧北区、屋久島・種子島と奄美大島との間に引かれる渡瀬線より南の地域は東洋区に属します。

日本の哺乳類は、水平的にも垂直的にも変化に富んでいる生物環境により、生息する土着の哺乳類は23科60属109種と非常に種数が豊富で、固有種も多く分布していることが特徴です。

日本の鳥類は、国土の約70%を森林で占めるため、森林を主な住処とする種が多数生息している特徴があります。

日本の両生類は、山系が発達し水系が数多く分断される地形のために、有尾類の種数が多い特徴があります。

日本の昆虫は、種数が多く、ヒマラヤ・日本にしか残っていないムカシトンボ科など固有種も多く残っている特徴があります。

動物相の違いを示す分布境界線が、日本には多くあります。

【日本の分布境界線】

  1. 八田線(宗谷線)
  2. ブラキストン線
  3. 対馬線
  4. 朝鮮海峡線
  5. 三宅線
  6. 渡瀬線
  7. 蜂須賀線

①八田線(宗谷線)

八田線は、1910年に八田三郎が両生類・爬虫類・淡水産無脊椎動物の分布において、旧北区のシベリア亜区(北側)と満州亜区(南側)の境界線として提唱されてものです。

宗谷海峡で東西に引かれた線であるので、宗谷線とも呼ばれます。

爬虫類ではカラフトクサリヘビの南限になっています。

両生類・爬虫類・淡水産無脊椎動物以外にも、南限種として「トナカイ・ユキヒョウ・カラフトライチョウ」が挙げられます。


②ブラキストン線

ブラキストン線は、1880年にイギリス動物学者のトーマス・ブレーキストンがシベリア亜区(北側)と満州亜区(南側)の境界線として提唱されたものです。

津軽海峡に引かれた線で、海があることで哺乳類が分断されています。

北限種としてニホンザル・ライチョウ・ゴキブリ・イノシシ・モグラ、南限種としてナキウサギ・シマフクロウ・シマエナガなどが挙げられます。

また、「ツキノワグマ・ヒグマ」「ニホンリス・エゾシマリス」「キタキツネ・ホンドギツネ」「エゾシカ・ホンドシカ」の境界線としても知られています。

③対馬線

対馬線は、対馬海峡に引かれた線で、ユーラシア大陸と日本の境界線になっています。

この線の北に位置する対馬には大陸系のツシマヤマネコ・アカマダラヘビが分布しています。

④朝鮮海峡線

朝鮮海峡線は、対馬と朝鮮海峡の間に引かれた線で、ユーラシア大陸と日本との境界線として対馬線よりもこの線が有力視されています。

朝鮮海峡線と対馬線との間にある対馬は、大陸と日本からの種が混じっている両系混生地域になります。

この線は本州の動物の境界線で、本州側にはアカネズミ・カヤネズミが分布しています。

⑤三宅線

三宅線線は、1929年に江崎悌三が昆虫学者である三宅恒方にちなんで、九州の大隅半島と屋久島の間の大隅海峡に引かれた線で、昆虫で特にチョウ・ガ類の旧北区(北側)と東洋区(南側)の境界線として提唱したものです。

南方系のチョウの北限であり、これより北は日本特産の昆虫、南は熱帯型の昆虫が多い。

⑥渡瀬線

渡瀬線は、1912年に渡瀬庄三郎が提唱した屋久島・種子島と奄美諸島の間にあるトカラ海峡の間に引かれた線で、哺乳類・両生・爬虫類・クモ類の違いから旧北区(北側)と東洋区(南側)の境界線です。

「青木線」「七島灘線」とも呼ばれることもあります。

北限種としてルリカケス・アマミノクロウサギ、南限種としてニホンザル・ニホンカモシカなどが挙げられます。

また、ニホンマムシとハブの境界線などとしても知られています。

⑦蜂須賀線

蜂須賀線は、大正15年(1926)に蜂須賀正氏が提唱した沖縄諸島と八重山諸島の間に引かれた線です。

中琉球・南琉球を隔てる海峡であるケラマギャップと一致しています。

鳥類の分布境界と合致するものが多く、カンムリワシ・リュウキュウキンバトの北限です。

八重山の陸産貝や淡水性の甲殻類には台湾との共通種が見られるため、全北区と旧熱帯区の境界線という意見もあります。


まとめ

日本の「植物区系・動物区系」についてまとめてみました。

頑張ってまとめてみましたが、完璧に説明できているわけではなく、ブラッシュアップしていきたいと思います。

参考までに、生態学を勉強するときに使用したテキストをまとめてみました。

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