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世界の「植物相・植物区系」「動物相・動物地理区」について

世界の「植物相・植物区系」 「動物相・動物地理区」について
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植物が気温・降雨量などの環境要因に適した場所に生育し、植物を元とする動物が合わせて生育することによって、特徴的な生物相(biota)が作り上げられます。

生物相は分布によって区分けされており、分けられた区域を「生物区」「生物地理区」と呼びます。

区域は、界 (kingdom)→区・亜区(region)→地方区・亜地方区(province)と細分化することができます。

植物に関する生物相を「植物相」、動物に関する生物相を「動物相」と表現します。

今回、世界の「植物相・植物区系」「動物相・動物地理区」についてまとめます。

世界の「植物相・植物区系」について

世界の「植物相・植物区系」

植物相(フローラ・flora)とは、限定された地理的空間内に植物種の総体のことです。

自生植物が取り扱われる主体であるが、帰化植物と栽培植物も含まれます。

自然環境・自然地史が地域よって異なるため、植物相ごとの特徴があります。

世界を植物相で分類したものが植物区系(phytochorion, floristic region)であり、6つの植物区系界 (floristic kingdom) に分類することができます。

【植物区系界】

  • 全北植物区系界(Holarctic Kingdom)
  • 旧熱帯植物区系界(Paleotropical Kingdom)
  • 新熱帯植物区系界(Neotropical Kingdom)
  • オーストラリア植物区系界(Australian Kingdom)
  • ケープ植物区系界(South African Kingdom)
  • 南極植物区系界(Antarctic Kingdom)

世界の植物相はこの6つの区系界に区分されますが、日本は南西諸島・小笠原諸島・南鳥島が旧熱帯区系界に属し、残りの地域は全北区系界に含まれます。


全北植物区系界(Holarctic Kingdom)

全北植物区系界(Holarctic Kingdom)

全北植物区系界は、ユーラシア大陸と北アメリカ大陸を含み、 周北極要素と呼ばれる植物群が分布しています。

全北植物区系界を代表する植物として「マツ科・ヤナギ科・クリ属・サクラ属・カエデ科・ユリ属」が挙げられます。

北植物区系界には以下の区が含まれます。

  • 北極・亜北極区系
  • 欧州シベリア区系
  • 日華区系
  • 西アジア・中央アジア区系
  • 地中海沿岸区系
  • マカロネシア移行区系
  • 北米大西洋岸区系
  • 北米太平洋岸区系

旧熱帯植物区系界

旧熱帯植物区系界

旧熱帯植物区系界は、アフリカ大陸・インド・東南アジア・ハワイ・インド洋や太平洋の諸島からなり、ヤシ・バナナなどが分布しています。

旧熱帯植物区系界を代表する植物としてコショウ科・フタバガキ科・タコノキ科・バショウ科・ヤシ科」が挙げられます。

旧熱帯植物区系界には以下の区が含まれます。

  • 北アフリカ・インド砂漠区系
  • スンダバーク・ステップ区系
  • 北東アフリカ高原及びステップ区系
  • 西アフリカ降雨林区系
  • 東アフリカステップ区系
  • 南アフリカ移行区系
  • 南アフリカ諸島区系
  • アスンシオン・セントヘレナ区系
  • インド区系
  • 東南アジア区系
  • マレー群島区系
  • ハワイ区系
  • ニューカレドニア区系
  • メラネシア・ミクロネシア区系
  • ポリネシア区系

新熱帯植物区系界

新熱帯植物区系界

新熱帯植物区系界は、南端のパタゴニア地域を除いた南米大陸を中心とした地域とメキシコからなり、サボテン・リュウゼツランなどが分布しています。

新熱帯植物区系界を代表とする植物として、「サボテン科・オオオニバス属・パイナップル科・カンナ科・リュウゼツラン科」が挙げられます。

新熱帯植物区系界には以下の区が含まれます。

  • カリベア区系
  • ベネズエラ・ギニア区系
  • アマゾン区系
  • 南ブラジル区系
  • アンデス区系
  • パンパス区系
  • ファンフェルナンデス区系


ケープ植物区系界

ケープ植物区系界

ケープ植物区系界は、アフリカ大陸南端に位置しており、植物相が極めて特異であるため独立した区系界です。

ケープ植物区系界の代表的な植物として、エリカ属・アロエ属・マツバギク属」が挙げられます。

オーストラリア植物区系界

オーストラリア植物区系界

オーストラリア植物区系界は、オーストラリア大陸とタスマニア諸島を含めた地域で、ユーカリ・バンクシアなどが分布しています。

オーストラリア植物区系界の代表的な植物として、「アカシア属・ユーカリ属・バンクシア属」が挙げられます。

オーストラリア植物区系界には以下の区が含まれます。

  • 北及び東オーストラリア区系
  • 南西オーストラリア区系
  • 中央オーストラリア区系

南極植物区系界

南極植物区系界

南極植物区系界は、南米南端・南太平洋・南インド洋の島嶼や南極大陸を含む地域で、約170種と極めて少ない種数が分布しています。

南極植物区系界を代表する植物として、「ナンキョクブナ科」が挙げられます。

南極植物区系界には以下の区が含まれます。

  • ニュージーランド区系
  • パタゴニア区系
  • 南温帯大洋島区系
  • 南極区系

世界の「動物相・動物地理区」について

世界の「動物相・動物地理区」

動物相(ファウナ・fauna)とは、限定された地理的空間内に自生している動物種の総体のことです。

自然環境・自然地史が地域よって異なるため、大陸ごとに動物相の特徴があります。

世界を動物相で分類したものが動物地理区であり、三界六区に分けるのが一般的です。

三界は新界(南アメリカ)・北界(ユーラシア・アフリカ・北アメリカ)・南界(オーストラリア)です。

新界は新熱帯区、北界は旧北区・新北区・エチオピア区・東洋区、南界はオーストラリア区に分けられ、6つの動物区系(faunal region)に分類することができます。

【動物区系】

  • 旧北区
  • 新北区
  • エチオピア区
  • 東洋区
  • 新熱帯区
  • オーストラリア区

世界の動物相はこの6つの動物区系に区分されますが、日本は九州本島以北の地域の動物相は旧北区、屋久島・種子島と奄美大島との間に引かれる渡瀬線より南の地域は東洋区に属します。


旧北区

旧北区

旧北区は、東南アジアを除くユーラシア大陸とサハラ砂漠以北のアフリカ大陸を含む北半球の地域で、亜熱帯・温帯・寒帯と気候の変化が大きく、四季の変化があります。

広大な環境で四季の変化に対応する能力を有している動物が分布しています。

旧北区の代表的な動物として、「ラクダ・ヒツジ・ウマ・ガン・レッサーパンダ」が挙げられます。

新北区

新北区

新北区は、アメリカ大陸のメキシコ以北の地域で、亜熱帯・温帯・寒帯と気候の変化が大きく、砂漠地帯・草原地帯・森林地帯・極地など様々な環境があります。

鳥類・爬虫類が繁栄していることが特徴的です。

新北区の代表的な動物種として、「カモシカ・ビーバー・ドクトカゲ・プレーリードッグ」が挙げられます。

エチオピア区

エチオピア区

エチオピア区は、サハラ砂漠以南のアフリカ大陸地域で、サバンナ・砂漠・熱帯ジャングルの気候があります。

マダガスカル島は独特な進化を遂げた生物が多いため、特別にマダガスカル亜区に区分されています。

草食動物と肉食動物を中心に生態系が構成されているため、哺乳類の3分の2・鳥類の5分の3が固有種といわれています。

エチオピア区の代表的な動物として、「ダチョウ・キリン・カバ・ヘビクイワシ」が挙げられます。


東洋区

東洋区

東洋区は、ヒマラヤ以南の南アジア・東南アジアなど熱帯地方が多く含まれる地域です。

東洋区とオーストラリア区の両方の特徴を持っているとして、ワラセラと呼ばれる移行帯として知られています。

湿度が高く暖かい空気によって、熱帯雨林・モンスーン林・マングローブ林など多様な森林を中心とした生態系が形成されており、昆虫が多く分布しています。

東洋区の代表的な動物として、「メガネザル・マレーグマ・コウモリ・キノボリトカゲ・クジャク」が挙げられます。

新熱帯区

新熱帯区

新熱帯区は、アマゾンのジャングルなどの熱帯雨林が含まれる地域です。

新熱帯区と新北区の移行帯として、カリブ地域があります。

ジャングルの立体空間を有効利用できるサルが繁栄していることが特徴的です。

新熱帯区の代表的な動物として、「オマキザル・ナマケモノ・オオアリクイ・カピバラ」が挙げられます。

オーストラリア区

オーストラリア区

オーストラリア区は、オーストラリア大陸・タスマニア島・ニューギニア島・ニュージーランドで独特の進化を遂げた生き物を多く分布している地域です。

他の大陸よりも早く孤立した大陸であるため、原始的な特徴を持つ有袋類・単孔類・走鳥類が繁栄しているのが特徴的です。

オーストラリア区の代表的な動物として、「カンガル・カモノハシ・コアラ・ウォンバット」が挙げられます。

まとめ

自然環境

世界の「植物相・植物区系」「動物相・動物地理区」についてまとめました。

日本の「植物相・植物区系」「動物相・動物地理区」については別でまとめていますので、気になる方はご参照ください。

参考ページ:日本の「植物相・植物区系」「動物相・動物地理区」について

生態学についてより深く勉強するのに、おすすめの書籍をまとめていますのでご参照ください。