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性淘汰・性選択について ~雄間闘争・配偶者選択~

性淘汰・性選択について ~雄間闘争・配偶者選択~
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生物は、如何に自分の子孫を多く残すことができるか、同種間で競争を行います。

異種間との競争と異なる戦略を繰り広げますが、結果的に形質を進化させていく点において、広義の自然選択です。

どのような競争が行われて、生殖活動が行われているのかまとめます。

性淘汰・性選択について

性別

異性を取り合う同種間競争によって生じた進化を「性淘汰」「性選択」(sexual selection)と表現されます。

卵子の数が適応度の制限要因となっているため、「異性を取り合って同性内で争うのは雄」「交尾相手を選ぶのは雌」という性的役割によって引き起こされます。

「性淘汰・性選択」は、異性を取り合うために優れた身体武器を進化させる「同性間淘汰」と、交尾相手に選択してもらうためにより顕著な形質を進化させる「異性間淘汰」の2つに分類できます。

同性間淘汰 ~雄間闘争~

シカ

同性間淘汰は、競争相手である同性間競争のことです。

ダチョウなど一部メスで同性間淘汰が行われることがあるが、オス同士で行われる競争のほうがはるかに多いことから、「雄間闘争」「雄-雄闘争」(male-male contest)とも表現されます。

交尾をする前・交尾をした後・子が生まれた後など様々な段階で生まれます。

交尾前・後に雌が取られないように、雄が雌の側に留まって、他の雄が交尾するために接近するのを妨げるために「交尾前ガード」「交尾後ガード」をする種もあります。

直接闘争

直接闘争は、同性間で相対して直接的に行われる闘争です。

実際に本格的な殺傷行為が行われるケースは少なく、むやみに傷を負う戦いはしません。

角・牙・フランジ・声などの大きさ勝負・威嚇などの「儀式的闘争(conventional fighting)・儀礼的ディスプレイ(ceremonial display)」が行われることが多く、闘争コストを抑えようとします。

直接闘争の例は、シカの角・イッカクの牙・オラウータンのフランジ・ウグイスのさえずりなどです。

この儀式的闘争により、雌と雄が配偶子の大きさ以外について差が見られる性的二型が生じるとされています。

雌があまりにも少ない・手負いであるなど、コストよりもベネフィットが上回ってしまう場合、物理的な戦いに発展することもあります。

間接闘争

間接闘争は、同性間で相対さず間接的に行われる闘争です。

交尾をする前の闘争として、繁殖なわばりの中に潜り込み、雄がいない内にこっそり交尾を行う寄生的な行動である「スニーカー(サテライト)」という手法が挙げられます。

交尾をした後の闘争として、他の雄の精子を掻き出すトンボ・化学物質による他のオスの精子の抹殺するショウジョウバエなど、受精を巡る「精子競争(sperm competition)」が挙げられます。

子が生まれた後も闘争があり、群の雄が他の雄に追い出された場合、前の雄の子を殺してしまう「子殺し(infanticide)」を行い、雌を発情させて自分の子を産むためのサイクルを早めます。

異性間淘汰 ~配偶者選択~

ガゼル

異性間淘汰は、異性に選好されるための競争のことです。

通常はメスがオスを選好し、オスは鳴き声・装飾・発光・踊り・フェロモンなどの信号を使ってメスを誘引し、メスは配偶者選択を行います。

例外的に、タツノオトシゴのように雄が雌を選り好みすることもあります。

配偶者選択については、生存上の有利さの有無で大きく2つに分類することができますが、どのようなメカニズムが働いているか非常に難しいです。

配偶者選択の理論モデルとして、以下の5つが有名です。

【配偶者選択の理論モデル】

  • ランナウェイ仮説(runaway hypothesis)
  • 感覚便乗仮説(sensory exploitation hypothesis)
  • ハンディキャップ仮説(handicap hypothesis)
  • 優良遺伝子仮説(good genes hypothesis)
  • チェイスアウェイ仮説(chase away hypothesis)

ランナウェイ仮説(runaway hypothesis)

ランナウェイ仮説(runaway hypothesis)は、「ある形質の選好」が両性の形質・選好性に正のフィードバックを働かせて相乗的に進化させ、適応価値のない形質によって配偶者を選ぶようになるという理論モデルです。

ランナウェイ説・暴走進化説とも呼ばれ、ロナルド・フィッシャーによって提唱されたことからフィッシャー説(Fisherian runaway)と呼ばれることもあります。

雌の好みと雄のある形質がたまたま一致することで発生するため、非適応的な形質であっても極端に発達します。

形質が生存に不利になりすぎると、繁殖上の利益と生存上の損失が釣り合ったところで発達は止まると考えられています。

ランナウェイ仮説の具体例は、「サンコウチョウの雄の長い尾羽」などです。

感覚便乗仮説(sensory exploitation hypothesis)

感覚便乗仮説(sensory exploitation hypothesis)は、形質と選好が同時に進化するのではなく、選好が先に進化して形質が後で進化したという理論モデルです。

配偶者を得るために、視覚・聴覚・嗅覚などの刺激によるコミュニケーションシグナルを利用しています。

周囲の環境によってシグナル伝達しにくいこともあるため、検出しやすいシグナルに対する感覚システムが発達します。

効率よく感知できる個体にシグナルを与えることで、興味を引くことでそれに便乗して生殖を行います。

感覚便乗仮説の例は、キンカチョウが有名です。

キンカチョウの繁殖行動を研究に足環をつけた際、赤い輪っかを付けた雄に対して雌が選好性を持ちました。

足元の赤色を気にする感覚が利用されたものではないかと仮説が立てられました。

ハンディキャップ仮説(handicap hypothesis)

ハンディキャップ仮説(handicap hypothesis)は、選好される形質が、適応価値のある遺伝的質・形質と相関があり、生存上の有利さに繋がる形質進化させているという理論モデルです。

生存・繁殖上に一見不利になるようなコストを無駄な形質に他よりも多く払って、ハンディキャップを負うことで、他のライバルよりも自らの質の良さを誇示することができます。

ハンディキャップ信号が自らの質を端的に表すシグナルになっている必要があります。

ハンディキャップ仮説の例として、「クジャクの羽根」「ガゼルの跳びはね行動」などです。

優良遺伝子仮説(good genes hypothesis)

優良遺伝子仮説(good genes hypothesis)は、ある形質が適応度を高める優良な遺伝子を持っていることのシンボルになっており、選好されられて進化させられると理論モデルです。

優良遺伝子として特に取り上げられるのが、寄生虫・病原体などに対する抵抗性に関係する遺伝子であり、パラサイト説・パラサイトモデルとも言われます。

形質を発現できる雄は、健康な証拠になるので、健康な子を残すことが可能です。

チェイスアウェイ仮説(chase away hypothesis)

チェイスアウェイ仮説(chase away hypothesis)は、交尾が雌のコストになり雌が交尾頻度を下げることで、雄が交尾頻度を上げさらに雌が交尾頻度が下がる軍拡競争が起こるという理論モデルです。

両性の利害の対立が重要であるという考え方で、異性を避けるように負のフィードバックがかかる状態になります。

雄の選好を厳しくする方向に淘汰圧がかかり、雄の形質がより顕著な発達が求められたと考えられます。

チェイスアウェイ仮説の例として、「フキバッタ(オスの交尾への積極性とメスの拒否性が相関が、さらに東部と西部で反転する)」です。

まとめ

グッピー

性淘汰・性選択についてまとめました。

また、生態学についてより深く勉強するのに、おすすめの書籍をまとめていますのでご参照ください。