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利他的行動を行う「社会性動物」について

利他的行動を行う「社会性動物」について
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社会行動とは、仲間意識を持って継続的な意思疎通と相互行為が行われ、秩序化・組織化された行動のことです。

ほかの個体の現在・将来に影響を与え、以下のように分類されます。

  • 利己的行動(selfish behavior):行動者の適応度を増大させ、他個体の適応度を減少させる行動
  • 利他的行動(altruistic behavior):行動者の適応度を減少させ、他の個体の適応度を増加させる行動
  • 協力行動(cooperative behavior):行動者・他の個体の適応度をともに増大させる行動
  • 行動報復行動(action retaliatory behavior):行動者・他の個体の適応度をともに減少させる行動

今回は、この社会行動における利他的行動についてまとめてみます。

利他的行動(altruistic behavior)とは?

家系図

利他的行動(altruistic behavior)は、行動者の適応度を減少させ、他の個体の適応度を増加させる行動です。

自分にとって不利な行動なだけでは種が存続することができないので、利他的行動の受け手を特定の個体に絞ることで種が存続できるように進化します。

利他的行動の例として、「親の保護」「配偶者の保護」「同種の保護」「血縁者の保護」「群れ」「共同作業」などが挙げられます。

利他行動による進化は血縁関係による血縁選択(kin selection)にみることができます。

利他的性質が進化する条件は、ハミルトン(W.D.Hamilton)によって「ハミルトンの規則(hamilton’s rule)」でまとめられました。

ハミルトンの規則では、他の個体の適応度をB、行動者の適応度をC、血縁度(血縁個体と同じ遺伝子を持つ確率)をrとすると、rB>Cが満たされた場合に利他的性質が進化すると示されています。

自分が直接子孫に残さなくても、血縁者を助けることで血縁者が多数の子を作るならば、血縁選択によって拡張された適応度包括的適応度(Inclusive fitness)」が増すのです。

社会性動物(social animal)について

ハチ

利他的行動をする動物を、社会性動物(social animal)と呼びます。

社会性昆虫として働きアリ・働きバチが具体例に挙げられ、自分では繁殖せずに他の個体の繁殖を助ける「ワーカー(worker)」と呼ばれる特殊な個体が存在します。

2倍体の生物の場合、親・息子・娘のどの間でも血縁度rは0.5です。

しかし、半倍数性の性決定をする社会性昆虫は、父親が半数体であるため姉妹間の血縁度rが0.75と高くなります。

自分の娘よりも妹の方が利他的価値が高まるので、繁殖をしないワーカーが存在できるのです。

哺乳類では、ハダカデバネズミが繁殖メスによるフェロモンが他の個体の繁殖が抑制することで、ワーカーを生じさせることができます。

まとめ

アリ

利他的行動を行う社会性動物についてまとめました。

生態学についてより深く勉強するのに、おすすめの書籍をまとめていますのでご参照ください。