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【岐阜県瑞穂市】 天然記念物「富有柿の母木」とその歴史

【岐阜県瑞穂市】 天然記念物「富有柿の母木」とその歴史
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甘柿の代表的な品種として、「富有・松本早生富有・早生系次郎・次郎・太秋(耕地面積順)」が挙げられます。

甘柿・渋柿すべて含めても富有柿が圧倒的シェア1で、耕地面積3,124.5haです(農林水産省生産局園芸作物課「令和2年産 特産果樹生産動態等調査」より)。

この富有柿の母木が岐阜県瑞穂市にあり、瑞穂市天然記念物に指定されていますので、諸元・現地の情報・富有柿の歴史をまとめます。

天然記念物「富有柿の母木」について

富有柿発祥の地 富有柿の母木 本体 富有柿の母木 柿青果

柿の品種である「富有」は、岐阜県が発症であり、その母木が瑞穂市指定天然記念物として保存されています。

福嶌才治が居倉御所の接ぎ木を品種改良し、新品種として1898(明治31)年に「富有」と命名したのが始まりです。

原木は1929(昭和4)年に枯死してしまったが、その母木は現存し、今も実を結んでいます。

1972(昭和47)年、岐阜県富有柿振興大会を記念して、富有柿の母木の脇へ「富有柿発祥の地」の石碑が建立されました。

富有柿の母木 石碑

天然記念物に指定された際に建てられた石碑には以下のことが記載されています。

福嶌才治は、慶応元年三月二十五日に当地で生まれた。氏は居倉御所柿から優秀な品種を世に送りだした。この柿は全国的な品評会に入賞を重ね、農林省其津園芸試験長恩田鉄弥博士に認められ、天皇陛下への献上にも及んだ。その柿は富有柿と命名され日本各地に広まり、その功績は大きい。大正八年三月十四日当地で没す。
昭和六十三年十月吉日建立
巣南町
巣南町農業協同組合
巣南町果樹振興会
名古屋市 松山千歳

天然記念物とは

文化財 図

引用:文化遺産オンライン

天然記念物は、「動物・植物・地質鉱物で我が国にとって学術上価値の高いもの」のうち、重要なものです。

また、保護すべき天然記念物に富んだ代表的一定の区域ごと指定することもできます。

国指定の天然記念物は「文化財保護法」各地方自治体指定の天然記念物は「文化財保護条例」に基づいて指定されたものです。

国指定天然記念物の中でも、さらに世界的・国家的に重要なものが、「特別天然記念物」に指定されます。

天然記念物に指定されたものは、文化庁長官の許可・各地方自治体長の許可がなければ、採集・伐採・採掘などができません。

富有柿の歴史

【富有柿の歴史】

  • 1820(文政3)年頃:小倉ノブ市が御所柿(のちの居倉御所)を植樹
  • 1857(安政4)年:小倉長蔵が瑞穂市居倉の小倉長蔵宅地内で「居倉御所」を栽培
  • 1884(明治17)年:福嶌才治(ふくしまさいじ)が居倉御所の接ぎ木を実施
  • 1892(明治25)年:品評会にて、1等に入選
  • 1898(明治31)年:岐阜県の品評会にて「富有」と命名し、1等に入選
  • 1899(明治32)年:岐阜県農会主催の第1回蔬菜果実品評会で1等に入選し、岐阜県知事(野村政明)に認められ、県の柿における奨励品種になる
  • 1903(明治36)年:岐阜県農会第2回蔬菜果実品評会にて、宮内大臣と農商務大臣から県知事に富有柿を天皇へ献上するよう連絡
  • 1904(明治37)年:富有柿1籠が初めて天皇家に献上
  • 1907(明治40)年:本巣市郡府に住む松尾勝次郎が福嶌才治から20本の苗木を買い受けて植栽開始
  • 1908(明治41)年:本巣市郡府に住む松尾松太郎が福嶌才治から50本の苗木を買い受けて植栽開始。
  • 1911(明治44)年:馬渕久雄によって、明治天皇が福岡県行幸の折、道中で富有柿を献上
  • 1928(昭和3)年:昭和天皇即位に伴う大嘗祭において松尾松太郎から富有柿を献上
  • 1929(昭和4)年:小倉家屋新築のため、富有柿の原木は移植されたが枯死。母木のみが現存することに

参照元:岐阜県農政部農産園芸課「富有柿の由来」

江戸時代中頃の全国『産物帳』には、美濃国で49品種と最多の品種数がみられるほど、岐阜を中心に柿の栽培が盛んでした。

夏は低地なので暑く、冬は伊吹山から吹き下ろされる「伊吹おろし」で寒くなるので、柿の生育に必要な寒暖差が確保できます。

さらに、木曽川・長良川・揖斐川がよく氾濫し、土壌に栄養・水分が非常に豊富な状態も最適です。

この環境で、奈良地方の品種「御所」は、岐阜県にて「居倉御所」、さらに「富有」へと品種改良された歴史があります。

富有柿の由来

福嶌才治は、新たな柿の品種名に「富有」「福寿」の2案を持っており、当時親交のあった川崎尋常小学校校長である久世亀吉に意見を求めました(興津園芸試験場の恩田技師であったという説も)。

久世亀吉は、「富有」の採用を薦め、『中庸』の一節「富有四海之内」を説きました。

右第十八章

子曰、無憂者、其惟文王乎。以王季為父、以武王為子、父作之、子述之。武王継大王王季文王之緒、壱戎衣而有天下、身不失天下之顕名、尊為天子、富有四海之内、宗廟饗之、子孫保之

『中庸』は、儒教(儒学)の基本思想を示した経典『論語』『孟子』『大学』『中庸』の四書の1つで、元々『礼記』の中にある一篇です。

徳があればその富は四海の内を保つという意味という意味で、「富有」の柿が広く普及するように願われたのでしょう。

「富有柿の母木」へのアクセス

  • 所在地:〒501-0302 岐阜県瑞穂市居倉761
  • 公共交通:みずほバス本田七崎線「居倉公民館」から徒歩約1分
  • 自動車:東海環状自動車道「大野神戸IC」から車で約5分
  • 問い合わせ:岐阜県瑞穂市総合政策課
    ・TEL:058-327-4128
    ・FAX:058-327-4103

駐車場

富有柿の母木 駐車場

富有柿発祥の地・富有柿の母木には駐車場がありません。

ただ、面している道路の幅員が広めなので路駐することができます。

周辺の交通状況に留意しながら安全に訪れてください。

まとめ

旅行 計画

岐阜県瑞穂市指定の天然記念物「富有柿の母木」とその歴史についてまとめました。

もし訪問される際には、収穫期である11月上旬~12月中旬に訪問するのがおすすめです。

特に瑞穂市の隣町である本巣市に、富有柿の直売所がたくさんありますのでぜひお買い求めください。