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湛水防除事業・湛水管理の「湛水(たんすい)」とは何か?

湛水防除事業・湛水管理の 「湛水(たんすい)」とは何か?
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防災事業の中に、「湛水防除事業」と呼ばれるメニューがあります。

これは「湛水被害」の発生を未然に防止するために重要な事業です。

ここで登場する「湛水(たんすい)」という言葉は専門用語であり、馴染みのない言葉ではないでしょうか。

湛水とはどういう意味で用いられているのかまとめます。

辞書で引いた「湛水(たんすい)」

田んぼ

辞書で調べると、湛水(たんすい)は「水田や貯水池などにたくさんの水を湛えること。またそのような水」、湛える(たたえる)は「液体などをいっぱいに満たす」、ということがであることが分かりました。

これを整理すると、湛水とは「水田や貯水池などを水で満たすこと。また、満たされた水」という説明ができます。

使用例から見る「湛水」

水口

湛水を辞書で引くと上記のような表現になりますが、使われるシーンによって意味合いが大きく異なります。

農業で使われる湛水には、水を満たすこと・満たされた状態を指します。

【農業で使われる湛水の使用例】

  • 湛水管理:水田水位を深水・浅水に調節したり、中干ししたり、水管理をすること。
  • 深水湛水:倒伏や急性萎凋を防ぐため、水田に水を深く溜めること。
  • 冬期湛水:生態系配慮・トロトロ層形成などのため、非灌漑期に田に水をためること。
  • 湛水直播栽培田に直接種籾を蒔く前に水をためておく栽培法。
  • 湛水処理:湛水状態の水田に農薬を散布すること。

治水で使われる湛水も、辞書通りの貯水池などを水で満たすことを指します。

【治水で使われる湛水の使用例】

  • 湛水:水を溜めること。
  • 試験湛水:ダムなどの貯水施設において、治水計画上の最高水位(サーチャージ水位)まで上昇させた後、最低水位まで水位変化させる一連の操作。治水施設の健全性を確認する試験。
  • 湛水式:試験湛水を行って貯水施設の完成を迎えるので、完成式典として行われる式典。
  • 湛水面積:ダムなどの貯水施設において。サーチャージ水位まで水が貯まったときに水面が土地に接する線によって囲まれる水面面積。
  • 湛水域:水位が維持されている上限区間。
  • 湛水区域:ダム等により河川の流水が貯留される一定の地域
  • 湛水区間:ダム等の設置地点より湛水区域の上流側末端までの区間
  •  湛水養生:打込むコンクリート周囲の型枠をあらかじめ高くし、コンクリート打込み後の表面に水を張り、湿潤状態を長く保つ養生。
  • 湛水量:避難計画・排水計画での浸水範囲の浸水体積
湛水 洪水 浸水

ところが、防災で使われる湛水は、「洪水時等に内水を排除出来ずに堤内地に水が溜まってしまうこと」を指します。

農業・治水のときとは異なり、有害な影響を与えるという社会的状況が加味されています。

【防災で使われる湛水の使用例】

  • 湛水被害:湛水によって、人・建物・作物などに被害が出ること。
  • 湛水防除:堤防の新設などで湛水を防ぐこと。排水機などで湛水を取り除くこと。
  • 湛水対策:湛水防除を通して、予想される被害を未然に防止すること。
  • 湛水池:土砂災害現場に発生した自然ダムなど、湛水が溜まった池。

「湛水」と似ている言葉との違い

比較 違い

湛水と似ている言葉と比較して、湛水がどういう言葉の意味を持っているのか考えてみました。

湛水と比較する言葉として、以下のものを選定してみました。

  1. 「灌水」と「湛水」
  2. 「冠水」と「湛水」

「灌水」と「湛水」の違い

田んぼ 湛水 出水

灌水とは、水をそそぐことで、人為的に水を満たす行為を意味します。

湛水に含まれる「水が満ちた状態」を含まず、「大規模な散水」と言い換えてもいいかもしれません。

降雨や洪水など自然的に水が満ちた時は、灌水ではなく「湛水」が使われます。

「冠水」と「湛水」の違いは

冠水 湛水被害

国土交通省の用語解説によると、洪水による氾濫によって田畑や道路などが水に浸ること「冠水」といいます(住宅などの場合は浸水)。

冠という漢字が使われているように、頭の先まで全てが水に沈んだ状態を冠水と表現しています。

広島県西部農業技術指導所の資料によると、川や水路などの氾濫水が農耕地に入り込み、茎葉部の一部が浸かった場合が「湛水」茎葉部のすべてが水中に埋没した場合「冠水」、と被害農作物に対する浸入の水位で区別しています。

まとめ

田んぼ

以上のことから、湛水を定義し直してみます。

湛水とは、「水田や貯水池などを水で満たすこと。満たされた水。」「洪水時等に内水を排除出来ずに堤内地に水が溜まってしまい、一部水没している状態」のことです。

言語学者のように正しく表せているわけではありませんが、農家が頑張って調べて頭を捻った程度なので、参考程度にしてください。