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コンクリート構成材料における「セメント」について

コンクリート材料に材料に使用する セメントについて
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コンクリートとは、構成材料の「セメント・水・骨材・混和材料」を一体化したものです。

コンクリートの性能に合わせて、材料の種類・材料の配分が決まります。

今回、この構成材料の「セメント」についてまとめます。

セメントとは?

セメント

セメントは、JIS規格によるとポートランドセメント、ポートランドセメントに混和材を混ぜた混合セメント(高炉セメント・フライアッシュセメント・シリカセメント)の4種類に分かれます。

セメントに水を加えると、水和反応により硬化する「凝結」が行われ、温度が高いほど凝結は速くなり初期強度発現は大きくなります。

セメントの粒度(粉末度)は比表面積で示され、比表面積が大きいほど水和反応が早く、初期強度発現は大きくなる代わりに水和熱が高くなります。

セメントの製造方法

日本においてこれらセメントは、最も熱効率・生産性に優れた乾式サスペンションプレヒーター付ロータリーキルン(回転窯)方式が製造方法としてほとんど採用されています。

製造は大きく分けて、原料工程・焼成工程・仕上工程の3工程に分かれています。

原料工程は、石灰石・粘土・珪石・鉄原料を調合・乾燥・粉砕し、粉末原料を生産します。

焼成工程は、原料を焼成し水硬性を有するクリンカ鉱物を製造します。

仕上工程は、セメントの三酸化硫黄量と比表面積値が目標通りとなるようにクリンカーを石膏とともに粉砕し、粉末状のセメントを製造します。

セメントの保存方法

セメントを長期間保存しておくと、空気中の水分と水和反応を起こします。

セメントが風化してしまうと、以下の問題が発生します。

  • 比重が小さくなる
  • 強熱減量が増す
  • 凝結が遅くなる
  • 強度が低下する

そのため、セメントの保存には、湿気を防ぎ通風を避ける工夫が必要です。

ポートランドセメント

セメント

ポルトランドセメントは以下の物質で構成されています。

【ポルトランドセメントの構成材料】

  • エーライト(ケイ酸三カルシウム3CaO・SiO2
  • ビーライト(ケイ酸二カルシウム2CaO・SiO2
  • フェライト(カルシウムアルミノフェライト4CaO・Al2O3・Fe2O3
  • アルミネート(カルシウムアルミネート3CaO・Al2O3
  • 石膏(硫酸カルシウムCaSO4・2H2O)

エーライト・ビーライト・アルミネート・フェライトは「クリンカー」に含有されているため、クリンカーに適量の石膏を混合・粉砕してセメントが製造されます。

これらの材料は、「水和反応速度・強さの発現性・水和熱」などの性質が異なるため、材料の組成・石膏の添加量・比表面積値を変化させることによって、以下の物性の異なるポルトランドセメントを製造することができます。

【ポルトランドセメントの種類】

  • 普通ポルトランドセメント
  • 早強ポルトランドセメント
  • 超早強ポルトランドセメント
  • 中庸熱ポルトランドセメント
  • 低熱ポルトランドセメント
  • 耐硫酸塩ポルトランドセメント

普通ポルトランドセメント

【普通ポルトランドセメントの規格表】
項目JIS規格値(JIS R 5210)
凝結始発 h-min
終結 h-min
60min以上
10h以下
圧縮強さ(N/mm23d
7d
28d
12.5N/mm2以上
22.5N/mm2以上
42.5N/mm2以上
化学成分(%)酸化マグネシウム
強熱減量
三酸化硫黄
全アルカリ
塩化物イオン
5.0以下
5.0以下
3.5以下
0.75以下
0.035以下
比表面積(cm2/g)2500cm2/g以上
安定性(パット法)

普通ポルトランドセメントは、一般土木・建築工事で用いられる、最も汎用性の高いセメントです。

JIS規格「JIS R 5210」で定められている性能が求められます。

一般にセメント1トンを生産するためには

  • 石灰石約1200Kg
  • 粘土約240Kg
  • 珪石約40Kg
  • 鉄原料約30Kg
  • 石膏約30Kg

が必要とされている。

早強ポルトランドセメント

【早強ポルトランドセメントの規格表】
項目JIS規格値(JIS R 5210)
凝結始発 h-min
終結 h-min
45min以上
10h以下
圧縮強さ(N/mm21d
3d
7d
28d
10.0N/mm2以上
20.0N/mm2以上
32.5N/mm2以上
47.5N/mm2以上
化学成分(%)酸化マグネシウム
強熱減量
三酸化硫黄
全アルカリ
塩化物イオン
5.0%以下
5.0%以下
3.5%以下
0.75%以下
0.02%以下
比表面積(cm2/g)3300cm2/g以上
安定性(パット法)

早強ポルトランドセメントは、普通ポルトランドセメントより初期強度が大きく、寒冷地・冬季工事などの早期に強度発現するセメントです。

普通ポルトランドセメントの材齢28日の圧縮強度を7日で発揮することができます。

製造過程で、初期硬度発現に寄与するエーライトの構成比率を上げ、比表面積値を高めるように粉末度を上げます。

特徴として以下のことが挙げられます。

  • 初期強度が大きい
  • 長期強度が大きい
  • 養生期間が短縮できる
  • 低温時でも強度発現性が大きい
  • 蒸気養生特性が優れている

水和熱が高いので、マスコンクリートにおいては不適というデメリットがあります。

超早強ポルトランドセメント

【超早強ポルトランドセメントの規格表】
項目JIS規格値(JIS R 5210)
凝結始発 h-min
終結 h-min
45min以上
10h以下
圧縮強さ(N/mm21d
3d
7d
28d
20.0N/mm2以上
30.0N/mm2以上
40.0N/mm2以上
50.0N/mm2以上
化学成分(%)酸化マグネシウム
強熱減量
三酸化硫黄
全アルカリ
塩化物イオン
5.0%以下
5.0%以下
4.5%以下
0.75%以下
0.02%以下
比表面積(cm2/g)4000cm2/g以上
安定性(パット法)

超早強ポルトランドセメントは、早強ポルトランドセメントより初期強度が大きく、緊急工事などのより早期に強度発現するセメントです。

超速硬セメントなどとも呼ばれます。

普通ポルトランドセメントの7日強度を1日、早強ポルトランドセメントの3日強度を1日で発現することができます。

製造過程で、エーライトの構成比率・比表面積値をさらに上げます。

中庸熱ポルトランドセメント

【中庸熱ポルトランドセメントの規格表】
項目JIS規格値(JIS R 5210)
凝結始発 h-min
終結 h-min
60min以上
10h以下
圧縮強さ(N/mm23d
7d
28d
7.5N/mm2以上
15.0N/mm2以上
32.5N/mm2以上
水和熱(J/g)7d
28d
290J/g以下
340J/g以下
鉱物成分(%)エーライト
アルミネート
50%以下
8%以上
化学成分(%)酸化マグネシウム
強熱減量
三酸化硫黄
全アルカリ
塩化物イオン
5.0以下
3.0以下
3.0以下
0.75以下
0.02以下
比表面積(cm2/g)2500cm2/g以上
安定性(パット法)

中庸熱ポルトランドセメントは、水和熱を抑制して長期強度発現性を持つため、体積の大きい構造物に使うマスコンクリート用のセメントです。

エーライトとアルミネートの含有率を低減し、ビーライトの含有率を高めます。

特徴として以下のことが挙げられます。

  • 水和熱が低い
  • 長期強度が大きい
  • 収縮が小さい
  • 化学抵抗性が大きい

低熱ポルトランドセメント

【低熱ポルトランドセメントの規格表】
項目JIS規格値(JIS R 5210)
凝結始発 h-min
終結 h-min
60min以上
10h以下
圧縮強さ(N/mm27d
8d
91d
7.5N/mm2以上
22.5N/mm2以上
42.5N/mm2以上
水和熱(J/g)7d
28d
250J/g以下
290J/g以下
鉱物成分(%)ビーライト
アルミネート
40%以上
6%以下
化学成分(%)酸化マグネシウム
三酸化硫黄
強熱減量
全アルカリ
塩化物イオン
5.0以下
3.5以下
3.0以下
0.75以下
0.02以下
比表面積(cm2/g)2500cm2/g以上
安定性(パット法)

低熱ポルトランドセメントは、中庸熱ポルトランドセメントよりも水和熱を抑制して長期強度発現性を持つため、体積の大きい構造物に使うマスコンクリート用のセメントです。

中庸熱ポルトランドセメントよりもビーライトの含有率をさらに高めたセメントです。

特徴として以下のことが挙げられます。

  • 温度ひび割れ抑制
  • 長期強度発現
  • 化学抵抗性向上
  • 中性化抑制

初期強度の関係するエーライトが少なくなるので、初期強度は低くなるデメリットはあります。

耐硫酸塩ポルトランドセメント

【耐硫酸塩ポルトランドセメントの規格表】
項目JIS規格値(JIS R 5210)
凝結始発 h-min
終結 h-min
60min以上
10h以下
圧縮強さ(N/mm23d
7d
28d
10.0N/mm2以上
20.0N/mm2以上
40.0N/mm2以上
鉱物成分(%)アルミネート4%以下
化学成分(%)酸化マグネシウム
三酸化硫黄
強熱減量
全アルカリ
塩化物イオン
5.0以下
3.0以下
3.0以下
0.75以下
0.02以下
比表面積(cm2/g)2500cm2/g以上
安定性(パット法)

耐硫酸塩ポルトランドセメントは、硫酸塩に対する抵抗性が高いなど化学的耐久性に優れているため、港湾工事・海岸工事・温泉地工事などで使用されるセメントです。

硫酸塩を含む海水・土壌・地下水・下水・工場排水・温泉地などで使用されます。

アルミネートは硫酸塩と反応して、エトリンガイトを生成し、大きな結晶成長圧を生じさせ、組織を破壊して構造物の劣化を大きくします。

そのため、硫酸塩に対する抵抗性が弱いアルミネートを少なくします。

複合セメント

セメントの混ぜ方

混合セメントポルトランドセメントに各種混合材を混ぜたセメントです。

混合材の種類により、以下の3種類がJISに制定されており、それぞれ混合材の分量によってA・B・C種の3ランクがある。

混合セメントポルトランドセメントは以下の種類があります。

【混合セメントポルトランドセメントの種類】

  • 高炉セメント
  • シリカセメント
  • フライアッシュセメント

高炉セメント

【高炉セメントの規格表】
項目高炉セメントB種
JIS規格値(JIS R 5211)
凝結始発 h-min
終結 h-min
60min以上
10h以下
圧縮強さ(N/mm23d
7d
28d
10.0N/mm2以上
17.5N/mm2以上
42.5N/mm2以上
化学成分(%)酸化マグネシウム
強熱減量
三酸化硫黄
6.0以下
5.0以下
5.0以下
比表面積(cm2/g)3000cm2/g以上
安定性(パット法)

高炉セメントは、高炉スラグ微粉末をポルトランドセメントと混合したセメントで、化学抵抗性が高いためアルカリ骨材反応対策として使用されるセメントです。

高炉スラグ微粉末の分量でA種・B種・C種と分かれていますが、B種が最も多く使用されています。

  • A種:  5〜30% 普通ポルトランドセメントと同様
  • B種:30〜60% 一般土木・建築工事で広く使用
  • C種:60〜70% 海洋・下水道工事などで使用

高炉スラグの混合量の分だけ石灰石を節約でき、CO2削減・副産物の有効利用などの観点からグリーン購入法の特定調達品目に指定されるなど、セコセメントの一面もあります。

高炉セメントには以下の特徴があります。

  • アルカリ骨材反応抑制
  • 耐凍害性向上
  • 長期強度発現
  • 温度上昇抑制・ひび割れ抑制
  • 化学抵抗性向上・塩害抵抗性向上・水密性向上

初期硬度発現が遅く弱いというデメリットには注意が必要です。

JIS規格「JIS R 5211」で定められている性能が求められます。

シリカセメント

【シリカセメントの規格表】
項目シリカセメントB種
JIS規格値(JIS R 5212)
凝結始発 h-min
終結 h-min
60min以上
10h以下
圧縮強さ(N/mm23d
7d
28d
10.0N/mm2以上
17.5N/mm2以上
37.5N/mm2以上
化学成分(%)酸化マグネシウム
三酸化硫黄
5.0以下
3.0以下
比表面積(cm2/g)3000cm2/g以上
安定性(パット法)

シリカセメントは、シリカ質混合材をポルトランドセメントと混合したセメントで、対薬品性に優れるのでオートクレーブ養生をする製品に使用されるセメントです。

シリカフォームを使うと、比表面積14,000㎝2/㎏の超微粉末であるため、マイクロフィラー効果により、強度・耐摩耗性が向上します。

シリカ質混合材の分量でA種・B種・C種と分かれていますが、B種が最も多く使用されています。

  • A種:  5〜10%
  • B種:10〜20%
  • C種:20〜30%

シリカセメントには以下の特徴があります。

  • ワーカビリティー向上
  • ブリージング防止
  • 長期強度発現
  • 化学抵抗性向上・水密性向上

JIS規格「JIS R 5212」で定められている性能が求められます。

フライアッシュセメント

【フライアッシュセメントの規格表】
項目フライアッシュセメントB種
JIS規格値(JIS R 5213)
凝結始発 h-min
終結 h-min
60min以上
10h以下
圧縮強さ(N/mm23d
7d
28d
10.0N/mm2以上
17.5N/mm2以上
37.5N/mm2以上
化学成分(%)酸化マグネシウム
三酸化硫黄
5.0以下
3.0以下
比表面積(cm2/g)2500cm2/g以上
安定性(パット法)

フライアッシュセメントは、フライアッシュをポルトランドセメントに混合したセメントで、ワーカビリティー向上・温度ひび割れ抑制などからマスコンクリート用として使用されるコンクリートです。

水和熱をより抑えるために、ベースセメントを中庸熱セメントを使用する中庸熱フライアッシュセメントとして使用されることが多いです。

フライアッシュのガラス質成分が水酸化カルシウムと反応する「ポゾラン反応」がゆっくり起こるため、初期強度は弱いですが長期強度は強くなります。

フライアッシュの分量でA種・B種・C種と分かれていますが、B種が最も多く使用されています。

  • A種:  5〜10%
  • B種:10〜20%
  • C種:20〜30%

フライアッシュセメントには以下の特徴があります。

  • ワーカビリティー向上
  • 長期強度発現
  • 温度上昇抑制
  • 化学抵抗性向上・水密性向上

JIS規格「JIS R 5213」で定められている性能が求められます。

まとめ

コンクリート

コンクリート材料に材料に使用するセメントについてまとめました。

他の構成材料については、下記の記事でまとめていますのでご参照ください。

紹介させて頂いた知識は土木施工管理技士の試験にも出てくるほど重要な知識です。

勉強に使用した書籍をまとめていますので、ご参照ください。