豚コレラ(豚熱)・アフリカ豚熱の防疫対策は
- 異常豚発生の監視
- 異常豚発見時の初動対応
- 異常豚発見時の臨場検査
- 検体の送付
- 農場内の疫学情報の収集
- 検査判断前準備
- 検査判定(陽性判定)
- 陽性判定時の防疫措置
- 農場周辺の人の通行制限・通行遮断
- 農場周辺の豚等の移動制限・搬出制限
- 消毒ポイントの設営
- ウイルスの感染状況調査
- ワクチンの接種(豚コレラの場合)
の流れで実施されます。
今回、①異常豚発生の監視についてまとめます。
【豚コレラ(豚熱)・アフリカ豚熱】異常豚発生の監視について
都道府県は、定期的に検査することにより、異常豚が発生していないか監視しています。
具体的には、
- 臨床検査による異常豚の摘発・病状鑑定
- 抗体保有状況調査
- 病状鑑定材料を用いた調査
により、異常豚発生の監視を行っています。
これらの検査で陽性であった場合には、
- 家畜防疫員が当該農場に立ち入り
- 臨床検査と必要な検体の採材
- 必要な検体を動物衛生研究所に送付
- 動物衛生研究所の遺伝子解析等の結果について、動物衛生課に報告
を実施します。
臨床検査による異常豚の摘発・病状鑑定
出典:伊勢新聞
都道府県は、豚等を6頭以上飼養する農場について、年に1回の立入検査をし、臨床検査による異常豚の摘発・病状鑑定を行います。
臨床検査により、以下の症状が認められた異常豚の摘発・病状鑑定を実施する。
【臨床検査による確認症状】
- 発熱、元気消失、食欲減退
- 便秘、下痢
- 結膜炎、目やに
- 歩行困難、後躯麻痺
- 痙攣
- 耳翼や下腹部や四肢等の紫斑
- ひね豚(削痩、被毛粗剛)
- 異常産の発生
抗体保有状況調査
都道府県は、家畜改良増殖法に基づいて、エライザ法により抗体保有状況調査を行います。
95%の信頼度で5%の感染を摘発できる農場の数を抽出して行います。
都道府県内農場戸数 | 抽出戸数 |
1 ~ 18戸 | 全戸 |
19 ~ 25戸 | 19戸 |
26 ~ 34戸 | 26戸 |
35 ~ 49戸 | 35戸 |
50 ~ 100戸 | 45戸 |
101戸以上 | 55戸 |
抽出農場ごとにそれぞれ10頭を無作為に抽出します。
10頭以下の飼養施設の場合は、全頭抽出します。
病状鑑定材料を用いた調査
都道府県は、家畜保健衛生所における豚等の全ての病状鑑定事例において、解剖検査を行い、抗原検査・血清抗体検査を実施します。
【抗原検査】
- ウイルス分離
- PCR検査
- 蛍光抗体法
【血清抗体検査】
- エライザ法
- 中和試験(陽性の場合は中和試験も実施する)
まとめ
【豚コレラ(豚熱)・アフリカ豚熱】異常豚発生の監視についてまとめました。
【豚コレラ(豚熱)・アフリカ豚熱】が実際に発生した場合の防疫措置については、下記記事にてまとめていますのでご参照ください。
参考文献等
文献
- 「豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針」
- 「アフリカ豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針」
- 「舛甚ら(2018)ロシア及び東欧諸国におけるアフリカ豚コレラ(ASF)発生とその現状について」 豚病研究会報72:1-7
- 「山田ら(2018)東欧強毒株を用いたアフリカ豚コレラウイルス感染実験について」豚病研究会報72:8-15
- 「アフリカ豚コレラの歴史とリスク分析」小澤義博(2014)獣医疫学雑誌
- 「アフリカ豚コレラの知識: 野外応用マニュアル」FAO Animal Health Manual No. 9
- 「アフリカ豚コレラ (ASF) の防疫要領策定マニュアル」FAO Animal Health Manual No. 11
HP
- アフリカ豚コレラについて(農林水産省HP)
- African Swine Fever(OIE)