ほ場整備計画は、地域の状 況を把握してほ場整備の必要性を判断するための「概査」を行い、土地基盤整備のあるべき「基本構想」を作成した後、詳細計画の策定に必要な「精査」を行い、具体的に詳細な「個別の計画」の策定へと順次段階的に進めます。
個別の計画策定の前に、最も重要な「営農基本計画」を先んじて策定し、「土地利用計画」・「営農計画」の策定が実施されます。
この圃場整備計画の中でも、「営農計画」に絞ってまとめてみます。
営農計画とは
営農計画は、地区の営農条件・気象条件・土地条件・水利条件・社会経済条件等を考慮し、「作物・作付面積・栽培体系・経営規模・経営組織・農業機械の規模と利用組織・営農施設の規模と利用組織・作業体系と作業組織」を明らかにします。
そのために、以下の詳細な計画を策定させ、農家等の土地所有規模・土地利用形態・営農方式・農業労働力等に応じて、 水稲・普通畑作・野菜作・飼料作・畜産等他作目を加えた類型に区分し、各類型ごとに定めることが必要です、
【詳細計画】
- 経営体育成計画
- 農地集積計画
- 作付体系計画
- 水稲栽培計画
- 水田畑利用計画
- 農業機械利用計画
経営体育成計画
経営体育成計画は、担い手を育成・確保していくため、地域の主たる担い手を決め、換地・土地利用調整を通じて、担い手に農地集積を進める計画です。
地域の現状を踏まえ、どの経営体をどれだけ育成するかについて、 各経営体の規模拡大の状況も考慮して検討します。
主たる担い手として、「個別経営体・農業生産法人・集団営農」などが考えられます。
農地集積計画
農地集約計画は、換地・土地利用調整を通して、拡大・分散した農地の集団化・連坦化を促進し、担い手に農地集積をする計画です。
土地改良法施行令第50条第3項に基づく事業では、農用地利用集積促進土地改良整備計画により、農用地の利用集積等に係る計画を作成しなければならないと定められています。
担い手として、個人経営農家・生産組織・会社組織・集落営農・農業公社などが考えられ、属性に適した農地集積を実施する必要があります。
農地集積の方法として、以下の方法が挙げられます。
- 所有権の移転
- 利用権の設定
- 農作業の受委託
作付体系計画
作付体系計画は、「土地の高度化や集団化・農業経営の多角化・農業の高付加価値化」を図るための作付体系を決定する計画です。
水稲・麦類・大豆・野菜・飼料作物の作付体系には、 表作の水稲と裏作の麦類による二毛作、3種類以上の作物による2年3作・3年4作があります。
田畑輪換栽培(水田輪作)には、病虫害や雑草害の抑制・収益増加・労働の効率化・生産資材節減などの効果が期待できます。
複数作を実施することが決定した場合、導入作物に適した区画・施設配置ができるように他の計画と調整が必要になる。
水稲栽培計画
水稲栽培計画は、土地生産性・労働生産性の向上・安定化が図られるように、移植栽培・直播栽培の栽培方式を決定する計画です。
作付環境・労働ピークの平準化などを考慮して、単一の栽培様式だけでなく複数の栽培方式が導入できるか検討します。
従来の移植栽培では単一な方法による栽培を余儀なくされていたが、直播栽培では乾田直播・湛水直播、耕起直播・不耕起直播など多様な方法で栽培できます。
造成直後の水田は不同沈下を考慮する必要があり、乾田直播を実施する地域でも代かきによる均平作業が入る栽培様式を1〜2作は実施して慣らす方が望ましい。
水田畑利用計画
水田の畑利用は、農家の経営安定・収益向上に欠かせない手段であるため、担い手の意向・整備後のほ場条件を踏まえて、適切に検討を行います。
規模土地利用型農業における麦・大豆、集約的営農における野菜・地域特産作物などの畑利用が考えられます。
他の計画と照合しながら、適切な転作体系を構築します。
農業機械利用計画
農業機械利用計画は、区画計画・営農規模・栽培計画を踏まえ、導入機械の機種・性能を選定します。
生産性の向上と生産コスト低減による経営規模の拡大を図るため、個別機械の作業負担面積の算出・作業体系の組立・経済性などを検討する必要があります。
適正な利用規模を設定するためには以下のことに留意する必要があります。
- ほ場・農道の整備状況
- 作業可能期間
- 作業可能日数率
- 関連機械施設
- 汎用的利用
- 農業賃金・作業請負料金
まとめ
ほ場整備計画における「営農計画」の策定についてまとめました。
「のうぎょうとぼく」の中では、農業土木に関する豊富な記事を書いています。
農業土木について勉強できる本については下記にてまとめていますので、ぜひご覧ください。
参考ページ:農業土木の勉強におすすめな参考書・問題集を紹介!