石綿管は、昭和30〜50年代にかけて大量に製造され、農業用水管水路に使用されました。
低価格で施工性が良好であったが、老朽化による漏水事故・アスベストによる作業者や農業者への健康障害が表面化しました。
これらの問題が生じないよう石綿曝露防止対策などの適切な対応を図る必要があります。
「石綿障害予防規則」により石綿不含有製品への代替が事業者の責務とされ、 農業用石綿セメント管を撤去して塩ビ管などへ更新する必要があります。
石綿管の撤去は以下の流れで実施されます。
- 調査・設計
- 事前準備
- 準備工
- 撤去工
- 処理工
今回はこの中でも、事前準備についてまとめます。
石綿管撤去時における「事前準備」について
石綿管撤去における事前準備でするべきこととして、
- 石綿作業主任者の選任 [石綿規則第19、20条]
- 施工計画書における特記事項 [石綿規則第4条]
- 特別教育の実施 [石綿規則第27条]
が挙げられます。
石綿作業主任者の専任(石綿規則第19・20条)
石綿撤去工事について
- 石綿作業主任者技能講習を修了した者
- H18. 3.31 までに特定化学物質等作業主任者技能講習を修了した者
のいずれかの者を石綿作業主任者として選任する必要があります。
下請け業者が撤去工事を行う場合は、下請け業者のうちから石綿作業主任者を選任する必要があります。
石綿作業主任者は、以下のことを行わなければなりません。
- 石綿粉塵により汚染・吸込がない作業方法を決定し、作業者を直接指揮・監督
- 保護具の使用状況を監視
施工計画書における特記事項(石綿規則第4条)
施工計画書において、撤去工事における「作業の方法・順序、石綿粉じんの発散を防止・抑制方法」に関して特別に記載する必要があります。
特記事項
- 現場組織表に、石綿管の撤去工・処理工の体制
- 石綿管の取外し・使用機種・湿潤化・保護具等の措置方法
- 廃石綿管の梱包・保管・運搬方法
- 廃石綿セメント管の保管場所の表示方法
- 保護具等の着用方法
- 立ち入り禁止の措置
- 石綿石綿等の取り扱い上の注意事項について周知する方法
- 洗眼・洗身・うがいの設備、更衣室の設備
- 作業記録の記載方法
また、石綿作業主任者技能講習修了証・特定化学物質等作業主任者技能講習修了書の写しを施工計画書に添付する必要があります。
特別教育の実施(石綿規則第27条)
撤去工事に従事する労働者に対して以下の事項についての特別の教育を受けさせなければいけません。
石綿に関する特別の教育
- 石綿の有害性(0.5時間)
・石綿の症状
・石綿による疾病の病理及び症状
・喫煙の影響 - 石綿等の使用状況(1時間)
・石綿を含有する製品の種類及び用途
・事前調査の方法 - 石綿等の粉塵の発散を抑制するための措置(1時間)
・建築物、工作物又は船舶の解体等の作業の方法
・湿潤化の方法
・作業場所の隔離の方法
・その他 - 保護具の使用方法(1時間)
・保護具の種類、性能、使用方法及び管理 - その他石綿等の暴露防止に関し必要な事項(1時間)
・労働安全衛生法、労働安全衛生法施行令
労働安全衛生規則、石綿障害予防規則
・石綿等による健康障害を防止するため当該業務について必要事項
石綿規則では特別教育を実施する機関に関する規定はないため、石綿作業主任者の資格を持ったものが講師となって独自に特別教育を行うことができます。
しかし、特別教育の徹底を図るため、できるだけ「建設業労働災害防止協会」などが主催することが好ましいとされています。
この特別教育の受講を、以下の書類で確認します。
- 「建設業労働災害防止協会」が交付する特別教育修了証の写し
- 特別教育を独自に行う場合は、日時・講師の氏名・教育の内容・受講者の氏名・使用した教材・特別教育の状況写真などが確認できる書類
まとめ
石綿管撤去時における「事前準備」についてまとめました。
石綿管撤去方法の全容については、下記記事にてまとめていますのでご参照ください。
参考ページ:石綿管撤去の方法・手順について
石綿撤去作業のは、通常の土木作業よりも安全性が重視されるため、専門知識が必要になります。
その専門知識を習得するための参考書・専門書をまとめましたので、参考にしてみてください。
参考資料・参考文献
- 農業農村整備事業におけるアスベスト対応マニュアル:農林水産省
農村振興局整備部 - 水道用石綿セメント管の撤去作業等における石綿対策の手引き:厚
生労働省健康局水道課 - 愛知県農業用石綿セメント管工事指針:愛知県農業用水管アスベス
ト対策推進検討会