滋賀県米原市醒井(さめがい)は、伊吹山系と北鈴鹿に囲まれ、地蔵川を中心にいたるところで清水が湧く清流の里です。
環境省の「生物多様性保全上重要な里地里山(重要里地里山:重要里地里山500)」に選定されています。
梅花藻・ハリヨ・ゲンジボタルなど貴重種の生息地であり、国の天然記念物「了徳寺のオハツキイチョウ」も存在します。
観光の名所でもありますが、貴重な生息地があることを知ってもらうため、「醒井」について紹介させていただきます。
重要里地里山とは

環境省は、さまざまな命を育む豊かな里地里山を、次世代に残していくべき自然環境の1つであると位置づけ、「生物多様性保全上重要な里地里山(重要里地里山)」を500箇所選定しました。
生物多様性について、以下の3つの選定基準を元に評価し、「3つの基準のうち2つ以上の基準に該当」することを選定条件としています。
【重要里地里山の選定基準】
- 基準1:多様で優れた二次的自然環境を有する
- 基準2:里地里山に特有で多様な野生動植物が生息・生育する
- 基準3:生態系ネットワークの形成に寄与する
醒井は、選定基準1・2に該当しているため、選定されました。
【醒井選定理由】
市の南部に位置し、伊吹山系と北鈴鹿に囲まれ、いたるところで清水が湧く清流の里である。
農地や山林を含むモザイク状の土地利用が維持されており、居醒の清水などから湧き出る清水によってできた「地蔵川」では、希少種であるバイカモとハリヨが確認されている。
また、周辺ではゲンジボタルもみられるなど、希少種保全の取組によって、当該里地里山全体の保全、その他さまざまな種の保全につながっている。
醒井の地蔵川



中山道醒井宿は、日本遺産「滋賀・びわ湖」を形成する一部分です。
醒井(醒ヶ井)は中山道61番目の宿場町で、地蔵川に沿って歴史ある街並みが今も残っています。
この地蔵川の源流には多く湧水群があり、「居醒の清水」・「十王水」などがあります。
水温は年間を通じて14℃前後で安定しているため、梅花藻・ハリヨが生息することができます。
梅花藻に寄生する水棲昆虫はハリヨの餌になるため、梅花藻とハリヨは深いつながりがあります。
居醒の清水


居醒の清水は、地蔵川の源流の1つで、加茂神社の石組みから湧き出る名水です。
2008年に環境省の「平成の名水100選」に選ばれています。
この地は「古事記」・「日本書紀」に登場し、日本武尊(ヤマトタケル)が伊吹山の大蛇を退治した際の猛毒を癒して熱を醒ましたと伝えられ、名水「居醒の清水」と呼ばれるようになりました。
水質・水量については、環境省の平成の名水100選のHPで以下のように記載されています。
水温が年間を通じて12.3~15.0度。1日の湧水量:約1・5万トン
十王水


十王水は、地蔵川の源流の1つで、平安中期に天台宗の僧侶「浄蔵法師」が水源をひらいた名水です。
初めは浄蔵水と呼ばれていましたが、泉の近くに十王堂があったことから十王水と呼ばれるようになりました。
地蔵川の梅花藻

梅花藻(バイカモ)は、冷涼で流れのある清流中にのみ生育できるキンポウゲ科の多年生沈水植物です。
生育適温水温は15℃で、25℃を超えると死滅してしまうため、湧水がある地域のみで生息できます。
6月中旬から8月下旬までの間、梅の花に似た白い花を水中に咲かせます。
梅花藻鑑賞の最も見頃となる8月1日〜8月16日の間ライトアップが毎年行われています。
- ライトアップ場所:醒井宿問屋場前、久保田邸前
- 問合せ先:米原観光協会 0749-58-2227
醒井宿問屋場



醒井宿問屋場は、江戸時代の街道宿駅として、醒井宿を通行する大名や役人に提供する人足や馬の手配などを行う問屋を代々営んだ川口家の住宅です。
現存する問屋場は貴重であるため、米原市の指定文化財建造物に指定されています(米原市HP)。
醒井(醒ヶ井)の資料館として公開されており、資料展示のほかイベント会場にもなっています。
この醒井宿問屋場の前は梅花藻のスポットになっています。
地蔵川ハリヨ生息地保護区


ハリヨはトゲウオ目トゲウオ科の魚で、岐阜県と滋賀県の湧水のある水温20℃以下の河川に分布しています。
環境省レッドリストで「絶滅危惧ⅠA類」、滋賀県のレッドデータブックで絶滅危惧種に指定されるほど、生息数が減少しています。
そのため、地蔵川の河川全域(1.2km)は、ハリヨ生息保護区となっています。
また、ハリヨ自体も「ふるさと滋賀の野生動植物との共生に関する条例」において指定希少野生動植物種に選定されており、捕獲は禁止です。
ハリヨを実際に見つけて観察することは容易ではありません。
そのため、ハリヨが展示されている「醒井延命地蔵尊」で観察することをお勧めします。
醒井延命地蔵尊




醒井延命地蔵尊は、御丈1丈2尺の花崗岩による丸彫りの座像「尻冷やし地蔵」が祀られています。
817年の大干ばつの時、伝教大師(最澄)が醒井で地蔵菩薩を彫刻して降雨を祈願し、大雨が3日間降り続いたという逸話が残っています。
醒井延命地蔵尊の水汲み場に、ハリヨが観察できるように水槽が設置されています。
「醒井」へのアクセス
- 所在地:滋賀県米原市醒井
- 公共交通:JR醒ヶ井駅から徒歩10分
- 自動車:北陸自動車道米原ICから車で約5分
・タクシー:タクシーアプリ「GO」
・レンタカー:skyticketレンタカー
駐車場



醒井(醒ヶ井)を散策する観光客のために、「木彫美術館駐車場」が無料で停めることができます。
土曜日、日曜日、祝日は周辺道路が大変混雑するので、駐車場も満車の可能性がありますのでご注意ください。
地域の方の生活エリアですので、路上駐車は決してせず、観賞マナーを守りましょう。
もし満車の際は、有料ですが「醒ヶ井駅前駐車場」に停めましょう。
徒歩5分圏内で、しっかり整備された使い勝手の良い駐車場です。

料金は以下の通りです。
- 入庫後30分まで:無料
- 30分~2時間まで:200円
- 2時間〜3時間まで:400円
- 3時間~24時間まで:600円
まとめ

【滋賀県米原市地蔵川】梅花藻・ハリヨが生息する「醒井」についてまとめさせていただきました。
地蔵川の清流を中心に、観光の名所・貴重な生息地が多くあることが紹介できたかと思います。
地蔵川には、梅花藻やハリヨ以外にも、国の天然記念物の「了徳寺のオハツキイチョウ」があります。
ぜひそちらにも立ち寄ってみてください。