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生物のニッチ分化における「棲み分け理論」「食い分け理論」

生物のニッチ分化における「棲み分け理論」「食い分け理論」
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ニッチ(niche)は、特定の種が利用できる環境条件・資源の幅・範囲などの環境要因のことで、適応した特有の生息場所 (生態的地位)のことです。

競争排除則(ガウゼの法則)によって、同じニッチにある複数の種は安定的に共存できないため、競争を避けるためにニッチ分化して変化させていきます。

時間・空間的にニッチ分化をして競争を避け共存する方法として、棲み分け(Habitat segregation)・食いわけ(Food segregation)があります。

本記事では、その知識・理論についてまとめます。

「棲み分け理論(すみわけ理論)」について

「棲み分け理論(すみわけ理論)」

棲み分け(すみわけ)は、おおまかにみると同じ場所にすむ何種かの生物が、実は生活要求を衝突させないような、微妙に異なる生態およびすみ場所に分れている現象です。

水棲昆虫の棲み分けの共同研究者である可児藤吉とのカゲロウの生態学的研究から、日本の生態学者である今西錦司が『生物社会の論理 (1949)』が初めて用いりました。

川の中に棲む4種類のヒラタカゲロウ幼虫が、川岸から流心にかけて異なる分布を形成することを発見し、生存競争ではなく共存原理によるものと考えました。

ここで注意が必要なのが、棲み分けで定義される「種」です。

原則に則れば今西進化論で用いられる「種社会」での棲み分けになりますが、現在の生態学で用いられる棲み分けは異なる種が生息地を分けて分布している状態を指しています。

今西説・今西進化論

分類学上の種とは異なり、実際の生物個体の認知機構・コミュニケーションなどの働きかけによって構成された「種社会」が種の実体であるとしました。

種社会は、主体性を持って生物全体種社会(holospecia)を構成する要素です。

近縁種間には社会関係があり、同位社会を構成し、競争が避けられるならば棲み分けが成立します。

「進化とは、種社会の棲み分けの密度化であり、個体から始まるのではなく、種社会を構成している種個体の全体が、変わるべきときがきたら、皆一斉に変わるのである」と種の棲み分けと定向進化から、生物の主体性を強調した今西説・今西進化論が提唱されます。

棲み分けの例

今西錦司氏は、ヒラタカゲロウ幼虫で棲み分けを説明しましたが、現在では以下の例が主に用いられます。

  • 活動時間:ワシ(昼行性)・フクロウ(夜行性)
  • 水温:イワナ(13℃以下の上流)・ヤマメ(13℃以上の下流)
  • 生息場所:ダーウィンフインチ

「食い分け理論」について

食い分け

食いわけは、近縁の異種間で食べ物の種類を分けて共存している現象です。

生息域を共有していても、他の種と競合することはありません。

食べる種類・部類を変えるだけでなく、毒素があって他の動物は食べられないものを食べるスペシャリストになることもあります。

食い分けの例

食い分けは多くの例があるので、一部抜粋して紹介します。

  • ヒメウ(水面近くの魚)・カワウ(底にいる魚)
  • オイカワ(藻)・カワムツ(昆虫)
  • ヤマメ(表層の落下昆虫)・エゾイワナ(中層の流下昆虫)・オショロコマ(底生生物)
  • キクガシラコウモリ(飛ぶ虫)・コキクガシラコウモリ(クモ・イモムシ)(東京農工大学HP
  • シマウマ(葉の先端)・ヌー(葉の茎付近)・トムソンガゼル(地際)
  • カワスズメ(プランクトン食・貝食・魚食・鱗食)
  • シカ(ササ類)・カモシカ(針葉樹)(東京農工大学HP
  • アカウミガメ(エビ・カニ類)・アオウミガメ(海草類・海藻類)・タイマイ(海綿類)・オサガメ(クラゲ類)

まとめ

河川水

生物のニッチ分化における「棲み分け理論」「食い分け理論」についてまとめました。

高地に移動して笹を主食にしたパンダのように棲み分け・食いわけを同時に行う種もあり、奥深いトピックです。

生態学についてより深く勉強するのに、おすすめの書籍をまとめていますのでご参照ください。

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