豚コレラ(豚熱)・アフリカ豚熱の防疫対策は
- 異常豚発生の監視
- 異常豚発見時の初動対応
- 異常豚発見時の臨場検査
- 検体の送付
- 農場内の疫学情報の収集
- 検査判断前準備
- 検査判定(陽性判定)
- 陽性判定時の防疫措置
- 農場周辺の人の通行制限・通行遮断
- 農場周辺の豚等の移動制限・搬出制限
- 消毒ポイントの設営
- ウイルスの感染状況調査
- ワクチンの接種(豚コレラの場合)
の流れで実施されます。
今回、⑫ウイルスの感染状況調査についてまとめさせていただきます。
豚コレラ(豚熱)・アフリカ豚熱の感染経路の特定について
豚コレラ(豚熱)・アフリカ豚熱のウイルス感染経路の特定するために、
- 疫学調査
- 発生状況確認調査
- 清浄性確認検査
- 野生動物における感染確認検査
が行われます。
疫学調査の実施
都道府県は、患畜・疑似患畜であると連絡を受けた後、疫学情報を収集し、ウイルスに汚染したおそれのある豚等に関する調査を実施します。
病性等判定日から一定期間(豚コレラ:過去28日間、アフリカ豚コレラ:過去22日間)遡った期間を対象とします。
本病の感染経路をあらゆる面から検証するため、関係者からの聴き取り調査等を実施し、以下の疫学情報の収集を行う。
調査対象
- 発生農場
- 発生農場と疫学関連のある豚等の飼養農場及び畜産関係施設(家畜市場、と畜場、飼料・敷料工場、飼料・敷料販売先、農協等)
調査事項
- 農場の周辺環境(森、畑、住居、道路からの距離など)
- 気温、湿度、天候、風量・風向など
- 家畜運搬車両、飼料運搬車両、死亡畜回収車両、堆肥運搬車両、機器搬入などの車両や精液及び受精卵等の運搬物資の動き
- 農場主、農場従業員、獣医師、家畜人工授精師、飼料販売業者、敷料販売者、資材販売者、薬品業者、畜産関係者(農協職員等)、郵便局員、宅配業者、家族、知人等の動き(海外渡航歴、野生動物等との接触
の有無を含む。) - 放牧の有無(有の場合は、その期間及び場所)
- 野生いのししの分布、侵入及び接触機会の有無
- 畜舎及び付帯施設の構造、野生動物の侵入対策など
- 農作業用機械の共有の有無
疫学調査で陽性の場合
調査の結果、以下の豚等であることが明らかとなったものは、疫学関連家畜として移動を禁止し、臨床症状の観察を行います。
患畜・疑似患畜との接触後21日を経過した後に血清抗体検査(エライザ法)を行います。
対象豚等
- 病性等判定日から遡って一定期間(豚コレラ:11~28日間、アフリカ豚コレラ:11~22日間)以内に患畜・疑似患畜と接触した豚等
- 病性等判定日から遡って一定期間(豚コレラ:28日間、アフリカ豚コレラ:22日間)以内に発生農場に出入りした人・物又・車両が7日以内に出入りした他の農場等で飼養されている豚等
- 疑似患畜が飼養されていた農場で飼養されている豚等
疫学関連家畜を飼養する農場において、血清抗体検査で陰性が確認されるまで、以下のものの移動を制限します。
- 生きた豚等、死んだ豚等
- 採取された精液、受精卵(病性等判定日から一定期間(豚コレラ:21日、アフリカ豚コレラ:15日)より前に採材され、区分管理されていたものを除く。)
- 排泄物
- 敷料
- 飼料
- 家畜飼育器具
発生状況確認検査
都道府県は、豚コレラの発生が確認された場合には、原則として24時間以内に、移動制限区域内の農場に立ち入り、
- 臨床検査
- 血液検査
- 抗原検査
- 血清抗体検査
により検査を実施します。
清浄性確認検査
移動制限区域内における清浄性を確認するため、当該移動制限区域内の全ての発生農場の防疫措置の完了後17日が経過した後に、
- 臨床検査
- 血液検査
- 抗原検査
- 血清抗体検査
により検査を実施します。
野生動物における感染確認検査
都道府県は、以下により、野生動物における感染確認検査を行います。
- 移動制限区域内において、野生いのししの死体・猟友会等が捕獲した野生いのししについて、抗原検査・血清抗体検査を実施するための検体を採材し、検査します。
- 陽性が確認された場合には、「野生動物を確保した地点の消毒、通行の制限・遮断」「半径10km圏内の豚等の所有者に対する注意喚起、飼養している豚等の異状の有無の確認」を行います。
まとめ
【豚コレラ(豚熱)・アフリカ豚熱】感染状況調査についてまとめました。
【豚コレラ(豚熱)・アフリカ豚熱】が実際に発生した場合の防疫措置については、下記記事にてまとめていますのでご参照ください。
参考文献等
文献
- 「豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針」
- 「アフリカ豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針」
- 「舛甚ら(2018)ロシア及び東欧諸国におけるアフリカ豚コレラ(ASF)発生とその現状について」 豚病研究会報72:1-7
- 「山田ら(2018)東欧強毒株を用いたアフリカ豚コレラウイルス感染実験について」豚病研究会報72:8-15
- 「アフリカ豚コレラの歴史とリスク分析」小澤義博(2014)獣医疫学雑誌
- 「アフリカ豚コレラの知識: 野外応用マニュアル」FAO Animal Health Manual No. 9
- 「アフリカ豚コレラ (ASF) の防疫要領策定マニュアル」FAO Animal Health Manual No. 11
HP
- アフリカ豚コレラについて(農林水産省HP)
- African Swine Fever(OIE)