コロナの外出自粛の影響から、メダカ飼育が1つのブームになり、庭でビオトープを楽しむ方が増えました。
私自身も駐車場の勾配を利用して「棚田式ビオトープ」を作っており、『自宅で湿地帯ビオトープ!生物多様性を守る水辺づくり』の企画である自宅で湿地帯ビオトープ大賞にて、DIY賞を頂くことができました。
駐車場で棚田を作ってみました。
テトラの既製品コンテナを活用して、極小スペースの傾斜地でもビオトープを楽しんでいます。#自宅で湿地帯ビオトープ大賞 pic.twitter.com/oWM7ThNkKJ
— おいも屋 (@nougyou_doboku) January 30, 2024
棚田式ビオトープで実際に飼育している水草の中でも、今回は日本産のポタモゲトンとして人気のある「インバモ」について育て方・増やし方を中心に、その魅力と管理のコツをお伝えします。
インバモとは
インバモ(Potamogeton inbaensis Kadono) は、ガシャモクとササバモの自然雑種で、ヒルムシロ科ヒルムシロ属(Potamogeton:ポタモゲトン)の多年草の沈水植物です。
千葉県印旛沼で最初に発見されたので「印旛藻」と名付けられ、琵琶湖・利根川水系の湖沼・福岡県北九州市のお糸池などで生息が確認されていました。
渇水条件下では、陸生茎を伸ばし陸生葉を展開することができます(天野百々江, 大野睦子, 須田隆一, 飯田聡子, 角野康郎, & 小菅桂子. (2008). 北九州市お糸池における自然雑種インバモの起源と現状. 分類, 8(2), 129-139.)。
葉はレースのような葉脈で、ササバモのように細長く、葉柄はガシャモクのように短くなります。
自然環境の悪化に加えF1交雑種なので実生せずしないので、天然では生息数が減少しています。
しかし、園芸品としてアクアリウム愛好家によって栽培され、流通に多く出回り維持されています。
ガシャモク・ササバモ・インバモの比較
維管束数 配列 | 葉柄長 | 葉身長/葉身幅 (L/W比) | |
ガシャモク | 3~4本 縦列 | 短い 2.5~7.5mm | 幅広く短い 3.4~5.4 |
インバモ | 3~10本 両方 | 中間型 ガシャモク母:8~20mm ササバモ母:10~28mm | 中間型 ガシャモク母:3.2~5.5 ササバモ母:6.5~11.0mm |
ササバモ | 8~10本 環状 | 長い 16~55mm | 細長い 5.7~13.5mm |
ガシャモクとササバモは葉柄長・葉身長/葉身幅(L/W)で明確に区別できることが示されています(天野百々江, 大野睦子, 須田隆一, 飯田聡子, 角野康郎, & 小菅桂子. (2008). 北九州市お糸池における自然雑種インバモの起源と現状. 分類, 8(2), 129-139.)。
インバモの形質は両種の雑種ゆえ中間状態であり、母親がガシャモクかササバモかどちらかで形質が異なります。
一回起源・多回起源
雑種が複数の地点に隔離分布する場合、特定の水域で起源した雑種が何らかの方法で分布が拡大した「一回起源」、各地域で独立して起源した「多回起源」に分けられます(角野康郎, & 飯田聡子. (2021). 日本産ヒルムシロ属の雑種: 研究の現状と課題. 植物地理・分類研究, 69(1), 67.)。
ヒルムシロ属では雑種が形成されると、栄養によって長年生き延びるが可能です。
インバモの育て方
インバモは、沈水性で葉身10cm~20cmほどになります。
そのため、水深が確保できる60cm水槽以上の水槽で栽培されることが多いです。
ササバモ譲りで丈夫さがあるので、CO2添加なし・肥料なしで人工光源下で繁茂させることができます。
自然環境下では、冬季になると地下茎の先に殖芽をつけて落葉休眠します。
室内水槽での管理下では越冬させずに常緑のままになりますが、越冬を経験させないと株が弱っていく傾向があります。
インバモの増やし方
ちょっとインバモがモシャモシャになってきたので、株分けしてみました🌱#湿地帯ビオトープ pic.twitter.com/J7QIW649oh
— おいも屋 (@nougyou_doboku) August 23, 2024
花期は7~11月で沈水茎から花茎を伸長させて水面上に花穂をつけますが、ガシャモク・ササバモとは違い正常な花粉は認められず、稔性も確認できません(天野百々江, 大野睦子, 須田隆一, 飯田聡子, 角野康郎, & 小菅桂子. (2008). 北九州市お糸池における自然雑種インバモの起源と現状. 分類, 8(2), 129-139.)。
そのため、栄養繁殖する地下茎(ランナー)を株分け・枝分けして増やす方法しかありません。
底床は広く厚めに敷きと、活着しやすくランナーも伸びやすいでしょう。
水中茎を枝挿し・挿し戻しすることでも増やすことができますが、うまく活着せずに溶けてしまうことの方が多いです。
条件さえ整えば地下茎(ランナー)は非常に活発に伸びていくので、そちらでの増殖を狙いましょう。
まとめ
インバモの育て方・増やし方についてまとめました。
インバモは日本にも自生しつつ、耐寒性や繁殖力もある一方で、水槽環境に長期間適応させるにはコツがあります。
ぜひ環境を整えながら、インバモの魅力あふれる水景づくりを楽しんでみてください
実際にビオトープを作成した私がおすすめする水草をまとめていますので、下記から詳細をご参照ください。