茶は新芽の生育途中に生葉を摘採を行う作物で、摘採する方法により収量と品質が変化します。
収量と品質は反比例し、目的とする収量と品質のバランスを考慮し、摘採する方法を調整する必要があります。
今回は、茶の摘採方法についてまとめます。
茶の摘採方法について
茶の芽を摘む方法として、以下の方法に大別されます。
【茶の摘採方法の種類】
- 手摘み
- はさみ摘み
- 機械摘み
一昔は手で摘む方法が主流でしたが、省力化・大規模化に伴って、「機械摘み」により摘採されるのが一般的です。
しかし、玉露などの高品質なお茶を目指す場合、品質向上のために「手摘み」での摘採が行われています。
摘む位置について
摘採方法によって、どの部分まで丁寧に摘むことができるか異なります。
新芽の先端に近い葉ほど全窒素が多く、硬化した茎・葉・古葉が混入しにくいので、摘採位置が浅めなものは品質が良いです。
しかし、先端部分のみを摘採すると収量が減少するため、目的とする「収量と品質のバランス」を考慮し、摘採位置を調整する必要があります。
- 玉露・煎茶などの最高級品:一芯二葉(二葉摘み)
- 上級品:一芯三葉(三葉摘み)
- 量産品:一芯四葉・五葉(普通摘み)
手摘み
手摘みは、人が新芽を1つ1つ確認しながら手で摘採します。
- 新芽の付け根にある小さい葉(霜かぶり)を残し、折るようにして摘む。(新芽の茎をやさしくつまんで引っ張ると、自然にプチッと離れるポイント)
- 古葉が茶摘み籠に入ったとき取り除く。
- 茶籠に入った茶の葉を、押さえつけなず、長い時間放置しない。
摘採取効率は悪くなりますが、古葉や木茎の混入はほとんど無く、品質の良い茶が製造できます。
おいしい部分だけを集めることができるので、極上のお茶づくりに向いています。
最上級品は、新芽に匂いがつくのも嫌いますので、ハンドソープ・日焼け止めは禁止で行われます。
摘み残しが発生した場合、摘み残し芽が次の発芽を遅らせ蕾がついてしまうため、番刈りなどを行うなど、手間も多いです。
手摘みの方法には地域により多くの種類があり、以下のものが挙げられます。
【手摘みの種類】
- 折り摘み
- かき摘み
- こき摘み
折り摘み
折り摘みは、片手で株面・枝を抑えて揺れを防ぎ、親指と人差し指の間に一芽ずつ柔らかい部分をつまんで折り取る方法です。
基部に損傷を与えないように行うため、茶芽・茶樹ともに健全な状態になり、品質が良くなります。
最高級茶は折り摘み法により手摘みされます。
しかし、作業効率は悪く、1日1人当たり約10kgほどしか摘採できないと言われております。
かき摘み
かき摘み手指の使い方は折り摘みとほぼ同じであるが、新芽を上方に引っ張るようにして摘採する方法です。
やや新芽が硬化した場合の摘採に適しておりますが、茶樹を傷めやすいです。
折り摘みよりは若干作業効率は上がりますが、1日1人当たり約15~20kgほどしか摘採できないと言われております。
こき摘み
こき摘みは、親指と人差し指との間に茶芽の下部をはさむようにして、しごき上げて摘み取る方法です。
はさみ摘みよりは古葉・古茎が入らないため品質向上になりますが、茶芽・茶樹を非常に傷めやすいです。
手摘みの中でも摘み方が荒いですが、一人当たりの摘採量は多くなりますが、1日1人当たり約50kgになります。
はさみ摘み
はさみ摘みは、「茶刈りばさみ・茶ばさみ・茶摘鋏」などと呼ばれる茶葉収穫用の大きなはさみで葉を刈り取ります。
大正4年(1915)に静岡県西方村の鍛治職人の内田三平によって発明されたものです。
「茶刈りばさみ・茶ばさみ・茶摘鋏」は、はさみで刈った芽が袋に入るように、ペリカンのくちばしにあるような袋を付けたものです。
袋の付いた茶摘みはさみが明治末期に考案され、手摘みに比べて摘採効率を大きく改善しました。
手摘みに比べて品質が低下しますが、摘採量1日1人当たり100~150kgになります。
はさみ摘みの方法は以下のものが挙げられます。
【はさみ摘みの種類】
- 二度摘み方法
- 二段摘み方法
二度摘み方法
二度摘み方法は、1回目の摘採を早め(出開度30~40%)に摘採し、摘み残したものを10日後に2回目の摘採を行います。
1回目は良質な緑茶、2回目は良質な番茶が摘採できため、収量増加を図るための摘採方法です。
二段摘み方法
二段摘み方法は、1回目の摘採は遅め(出開度60~70%)に芽の中間を摘採し、2回目の摘採は1回目と同時期に摘み残し部分を摘採します。
二度摘みに比べて、出開度が遅いので、品質向上を図るための摘採方法です。
はさみ摘みの注意点
- はさみの切れ味によって、品質が大きく変わりますので、良質な鋏を使い、手入れを丁寧に行わなければなりません。
- 毎年はさみ摘みを行うと、枝が極小となり密集になり、葉が小型になるので、5年に一度深刈による更新が必要になります。
- 刃先をやや上向きにはさみを使います。
機械摘み
機械摘みは、摘採機を用いて摘採を行う方法です。
畝に伸びた新芽と刃の高さが重要になり、収量・品質に大きな影響を与えます。
刃が浮き気味になると刈り方が浅くなり新芽の先の方だけを刈ってしまい、深くなると古葉や太い茎も混ざってしまいます。
手摘みに比べて摘採能率は飛躍的に向上しますが、品質が著しく低下するのが一般的です。
機械摘みで使われる摘採機には、以下のものが挙げられます。
【摘採機の種類】
- 乗用型
- レール式
- 可搬型
- 自走型
摘採刃はシリンダー刃型・往復動刃型・回転刃型が用いられ、動力源はエンジン式・電動式などがあります。
乗用型摘採機
乗用型摘採機は、水田で稲を刈るコンバインのように、人が乗って操作をする摘採機です。
約20a/1hと最も効率良く摘採でき、広大な平坦値や緩傾斜地などに導入されています。
刃の高さをセンサーやコンピュータで自動調整するものもあります。
問題点としては、茶園の傾斜・畝長・樹形等を整備する必要があり、小規模茶園には適していません。
レール式摘採機
レール式摘採機は、畝間にレールを敷設して、そのレール上を走行する台車で摘採する摘採機です。
作業台車に茶袋を定期的に交換する作業が必要ですが、走行・摘採を自動化することができます。
畝間にレールを敷設する必要があるため、レール管理などの手間が増えます。
可搬式摘採機
可搬式(バリカン式)摘採機は、エンジンで回転する歯で生葉を刈り、刈った生葉を送風機で袋に入れる摘採機です。
2人の摘採者が畝の両側でハンドルをもち、呼吸を合わせて低速で歩きながら、茶株の片側半面づつを摘採します。
2人で作業する必要がある点が欠点ですが、小回りが効くので作業効率が高いです。
摘採効率は手摘みよりも良いが、刃は80~100cmであり、重さも約20kgほどあり、作業強度はかなり強く、長時間作業できません。
自走式摘採機
自走式摘採機は、動力で自走する台車の上に摘採機をつけたものです。
1人で畝の片側に入って運行操作し、他の片側は車輪と支柱で摘採機を与えます。
そのため、可搬式と異なり、作業が1人でできることが特徴です。
まとめ
茶の摘採方法についてまとめさせていただきました。
日本茶について勉強できる本については、下記記事にてまとめていますのでご参照ください。