土の状態量として
- 間隙率、間隙比
- 含水比
- 体積含水率
- 飽和度
- 空気間隙率
などが挙げられます。
今回はこの中から含水比の求めるための試験方法・結果についてまとめます。
含水比とは
含水比wは、土粒子の質量に対する間隙に含まれる水の質量の割合を百分率で表したものです。
含水比は、一般的に砂分・礫分の混入率が高いほど含水比は低くなり、細粒分の含有率が多いほど含水比が高くなります。
含水比によって、以下のように粘土の状態に変化していきます。
【含水比による粘土の違い】
- 自然含水比が液性限界wLよりも大きな場合には液性状(流動粘土)
- 自然含水比が液性限界wLと塑性限界wpの間にある場合は塑性状(塑性粘土)
- 自然含水比が塑性指数wpよりも小さい場合には半固体状(弾性粘土)
含水比は圧密試験を実施する場合などに必要です。
また土の締固めなどを行う場合には最適な含水比を規定する必要があり、土の突固め試験などを実施し、最適含水比などを求めて盛土管理の基準として設定します。
含水比は土の状態を把握するために非常に重要な物性値で、求め方を知っておく必要があります。
代表的な土の測定事例
代表的な土の土の含水比w、土粒子の密度ρs、湿潤密度ρtの測定例をまとめました。
土の種類 | 湿潤密度 ρt(g/cm3) | 土粒子密度 ρs(g/cm3) | 含水比 w(%) |
泥炭 | 0.8~1.3 | 1.4~2.3 | 110~1300 |
沖積粘土 | 1.2~1.8 | 2.5~2.75 | 50~80 |
洪積粘土 | 1.6~2.0 | 2.5~2.75 | 30~60 |
関東ローム | 1.2~1.5 | 2.7~2.9 | 80~150 |
シラス | 1.2~1.5 | 2.3~2.5 | 15~30 |
砂質土 | 1.6~2.0 | 2.6~2.8 | 10~30 |
まさ土 | 1.5~2.0 | 2.6~2.8 | 6~30 |
参照:地盤工学会「土質試験-基本と手引き」
試験方法
含水比は2つの方法で求めることができます。
- 110±5℃の炉乾燥によって水を蒸発させて求める炉乾燥法
- 電子レンジによる加熱で水を蒸発させて求める電子レンジ法
電子レンジ法と炉乾燥法では加熱原理が異なり、誤差が生じ、電子レンジ法は炉乾燥法に比べ含水比が大きくなる傾向があるので留意が必要です。
炉乾燥法
炉乾燥法は、(110±5) ℃の炉乾燥によって失われる土中水の質量、土の炉乾燥質量に対する比を求めます。
JIS A 1203:2009にも登録されている方法です。
試験器具
- 容器:試験中に質量の変化を生じないもの。
- 恒温乾燥炉:温度を(110±5) ℃に保持できるもの。電動ファンによって、炉内空気を強制的に循環させる循環送風式のものが良い。
- はかり
- デジケーター:炉乾燥試料を常温になるまで冷ます容器
測定手順
- 容器の質量mc(g)を測定する。
- 試料を容器に入れ、試料+容器の全質量ma(g)を測定する。
- 試料を容器ごと恒温乾燥路にいれ、110±5℃で乾燥質量が一定になるまで乾燥する。一定質量になるまでの時間、一般には18時間〜24時間程度です。
- 炉乾燥試料をデシケーターに入れ、ほぼ室温になるまで冷まし、乾燥質量+容器の全質量mb(g)を測定する。
電子レンジ法
電子レンジ法は、電子レンジによる加熱によって失われる土中水の質量、土の乾燥質量に対する比を求めます。
迅速な土の含水比測定方法として、乾燥炉よりも電子レンジが用いられることが多くなっています。
試験器具
- 容器:耐熱性のあるガラスか磁製のもので、試験中に質量の変化を生じないもの。金属製の容器は用いてはならない。
- 電子レンジ:最大高周波出力が500~600W程度で、回転台を有するものが良い。
- はかり
- デシケータ:JIS R 3503に規定されているもの、またはこれと同等の機能を有する容器。
測定手順
- 容器の質量 mc (g) をはかる。
- 試料を容器に入れ、全質量 ma (g) をはかる。試料からの水分蒸発、空気中の水分を吸収しないよう速やかに行う。
- 試料はできるだけ容器内に薄く広げて水分が蒸発し易いようにする。
- 試料を容器ごと電子レンジに入れる。
- 電子レンジで一定質量になるまで加熱する。加熱中に焦げる臭いがするときは、異常過熱・燃焼していることもあるので加熱を中止する。
- 一定質量となるまでの加熱時間は、試料の量・土の種類・含有水分量・電子レンジの出力などによって異なる。設定した加熱時間終了後、さらに数分間加熱して質量をはかり、試料質量に変化のないことを確認します。
電子レンジ出力 600w 測定容器 高さ約2cm、直径6cmのシャーレ 試料条件 3個1組 最大粒径2mm 容器1個約10g 加熱時間 ・火山灰質高含水比粘土
・有機質土
・一般的な土13〜17分
15〜20分
7〜10分 - 乾燥試料を容器ごとデシケータに入れ、ほぼ室温になるまで冷ました後、全質量 mb (g) をはかる。
試験結果を用いて、含水比wを求める
含水比w(%)は次式の計算によって求めることができる。
w=(ma-mb)/(mb-mc)×100
ma:試料と容器の質量(g)
mb:乾燥試料と容器の質量(g)
mc:容器の質量(g)
自然含水比が20~30%以下のものは砂質土、40~50%以上のものは粘性土と考えることができます。
まとめ
土の含水比試験の試験方法と結果についてまとめさせていただきました。
紹介させて頂いた知識は土木施工管理技士の試験にも出てくるほど重要な知識です。
勉強に使用した書籍をまとめていますので、ご参照ください。
参考文献
小規模建築物基礎設計指針.日本建築学会
住宅地盤の調査・施工に関する技術基準書.住宅地盤品質協会
地盤調査の方法と解説.地盤工学会
建築物の構造関係技術基準解説書〈2015年版〉. 建築研究所 (監修), 国土交通省住宅局建築指導課 (編集), 日本建築構造技術者協会 (編集)
地盤工学会、地盤調査・土質試験結果の解釈と適用例、1998年
地盤工学会、土質試験-基本と手引き、2004年