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【豚コレラ・豚熱】過去の清浄化対策・洗浄国の経緯について

【豚コレラ・豚熱】過去の清浄化対策・洗浄国の経緯について
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豚コレラ(豚熱)は、明治21年に北海道において初めて発生し、それ以降の撲滅対策の結果、平成4年の発生を最後に発生がないことから、平成19年4月に清浄化を達成しました。

しかし、平成30年9月9日に26年ぶりとなる豚コレラの発生が確認され、野生のイノシシ・養豚農場の豚での感染が拡大しています。

清浄国ではなくなってしまいましたが、今後清浄国に向けて対策をしなければなりません。

そのため、過去の清浄化対策について学ぶ必要があります。

【豚コレラ・豚熱】過去の清浄化対策・洗浄国の経緯について

世界

豚コレラ(豚熱)は、明治21年に北海道で初めて発生しました。畜産業に大被害を与えましたが、昭和44年に弱毒性ワクチンが開発されてから、豚コレラの発生は大きく減少しました。

平成4~30年の26年間については、豚コレラは発生しておりませんでした。

養豚先進国として、ワクチンを用いない防疫体制の確立のみによる清浄化を目指し、以下の流れで清浄国として認定されました。

国際的に豚コレラ清浄国と認められれば、国産豚肉等の海外への輸出も可能となります。

【洗浄国の経緯】

ワクチン接種の徹底及び抗体検査の推進:平成8年度(1996年度~)

段階的なワクチン接種の中止:平成10年度~(1998年度~)

全国的なワクチン接種中止:平成12年度~(2000年度)

清浄化の達成:平成19年度~(2007年度~)

第83回国際獣疫事務局(OIE)総会において、「豚コレラ清浄国」として認定:平成27年度(2015年)

平成30年9月9日に26年ぶりとなる豚コレラの発生(2018年)

OIE(国際獣疫事務局)が定める清浄国の認定を停止(2020年)

なぜワクチン接種を中止する必要があるのか。

中止

国際的な豚コレラ清浄国の基準は国際獣疫事務局(OIE)の国際動物衛生規約で定められています。

その規約の中で、清浄化したとみなされるための条件の一つとして、国内でのワクチン接種が完全に禁止されていることが規定されています。

ワクチンは本来、疾病の発生の恐れがある地域で疾病の発生を予防するために使用するものであることから、ワクチンを用いて防疫を行っている地域は疾病の発生する恐れがある地域ということになる。

豚コレラワクチン接種国・地域をからの豚肉の輸入をすることも禁止しなければなりません

また、ワクチン接種を行うことで以下の問題が生じます。

ワクチン接種による感染発見の遅れる

ワクチンを接種した母豚から産まれた子豚は、母豚の抗体が分娩直後の乳汁を通じて移行し、一定期間にわたってその体内に抗体を保有することが知られており、この抗体を移行抗体といいます。

移行抗体の量(中和抗体価)は、一般的には10~14日ごとにほぼ半分に減少し、生後4か月前後で消失し、畜場出荷時(生後6~7か月)にはほとんど検出されなくなります。

成豚では移行抗体はほとんど検出されませんが、子豚に関しては検出される可能性があります。

よって、ワクチンを接種していても、

母豚からの高い移行抗体によって免疫を獲得できない場合
・接種前に移行抗体が低下している場合

について、一部の個体は豚コレラウイルスへの感受性を持つものと考えられます。

豚コレラウイルスが侵入した場合、感受性のある個体は症状を表さないため、豚コレラの発見が遅れる可能性があります。

また、飼養豚の出荷や飼料・たい肥の搬出入等に伴い、汚染した人又は車両等を介して他の農場へまん延する可能性が高くなります

ウイルスの感染ルートが不明になる

近隣の農場で豚コレラが発生した時などに、抗体検査(ELISA検査又は中和抗体検査)でワクチン抗体と野外ウイルス抗体を識別することはできないことから、ワクチン接種農場では野外ウイルス感染の有無を容易に確認できなくなります。

ELISA(酵素免疫測定法)検査は数時間で判定可能な迅速検査法であり、血液中の抗体の有無を判別することはできますが、抗体の量を明確に知ることはできません。

中和抗体検査では血清を希釈することで血液中の抗体の量(中和抗体価)を正確に測定することが可能ですが、本法の判定には約1週間を要します。

一般的にELISAは多数の検体を処理するサーベイランス(抗体の有無の検査)に、中和抗体検査は抗体価の定量に用います。

なお、野外ウイルスと識別可能な抗体を使用するマーカーワクチンも海外で開発されていますが、生ワクチンより抗体をつくりだす能力が弱いこと、鑑別診断法の精度が不十分であるから、ワーカーワクチンの実用化は困難と考えられました。

まとめ

子豚

【豚コレラ・豚熱】過去の清浄化対策・洗浄国の経緯についてまとめました。

【豚コレラ(豚熱)・アフリカ豚熱】が実際に発生した場合の防疫措置については、下記記事にてまとめていますのでご参照ください。

参考文献等

文献

  • 「豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針」
  • 「アフリカ豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針」
  • 「舛甚ら(2018)ロシア及び東欧諸国におけるアフリカ豚コレラ(ASF)発生とその現状について」 豚病研究会報72:1-7
  •  「山田ら(2018)東欧強毒株を用いたアフリカ豚コレラウイルス感染実験について」豚病研究会報72:8-15
  • 「アフリカ豚コレラの歴史とリスク分析」小澤義博(2014)獣医疫学雑誌
  • 「アフリカ豚コレラの知識: 野外応用マニュアル」FAO Animal Health Manual No. 9
  • 「アフリカ豚コレラ (ASF) の防疫要領策定マニュアル」FAO Animal Health Manual No. 11

HP

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