研究のための重要なデータを収集するために、現地調査(フィールドワーク)をしています。
研究対象地によっては、致命的な危険と隣り合わせな場所で調査を行います。
調査者(フィールドワーカー)は、研究者・科学者・探検家・冒険家・登山家・写真家などの経験・知識を学んで、しっかり事前準備をすることで危険を避けなければなりません。
今回は、雪山フィールドワーク時の「天候把握」についてまとめます。
雪山での天候把握の重要性
雪山では、天候次第で生死が分かれるほど過酷な環境です。
天候の悪化が確実であれば、登山計画の修正が必須になります。
気象情報は、ウェザーニュースなどのインターネットサイトで情報が手に入れられますが、その日のその山の天気がどうなるかの予想は難しいです。
そのため、事前に天気図・衛星画像をよく見て予想し、現場では空模様・風向きで観天望気をする必要があります。
月別の天気の特徴
天気の特徴を捉えるためには、月別の天気の特徴を大局的に理解しておく必要があります。
そうすると、天気図を読む際や観天望気を実施する場合に、瞬時に状況が理解しやすいです。
11月〜3月についてまとめてみました。
11月
11月には、山頂の初雪・初冠雪が見られるようになり、雪山のシーズンが始まります。
気圧配置は北高型になるので、晴天率が高く雨が少ないです。
初冬の季節風は半日〜1日で収まることが多いので、小春日和・木枯らしが繰り返されます。
12月
12月は、西高東低の気圧配置が顕著に現れ、北西の季節風が強まり、太平洋側では晴れて日本海側では雪が続きます。
気圧配置が変化することは少ないので、日本海側では悪天候が続きやすいです。
1月
1月は、西高東低の気圧配置が緩み、日本海低気圧が発生します。
日本海低気圧が北東に進んでいくにつれて、季節風が弱まり、南寄りの風が吹いて気温も上昇する傾向です。
フェーン現象が起こることもあり、雪崩に注意が必要があります。
2月
2月は、太平洋側にも南岸低気圧が発生し、太平洋側にも雪を降らすことも増えます。
南岸低気圧と同時に日本海側にも低気圧が発生する「二ツ玉的圧」が発生すると、爆弾低気圧になるので、山岳地は暴風雪に晒されるので注意が必要です。
気温が徐々に上がっていくので、低気圧通過後には太平洋側は新雪雪崩が生じやすい傾向になります。
3月
3月は天気は穏やかになり、移動性高気圧と低気圧によって「三寒四温」を繰り返します。
春山の積雪はざらめ雪へと変化するので大規模な表層雪崩は生じにくいが、全層雪崩・土砂崩れ・クレバスが生じやすい傾向です。
急激に温度が上昇すると、雪崩・雪解け水による増水が起こりやすいので、沢筋では注意が必要になります。
観天望気について
観天望気は、雲行き・雲の流れ・空の色・気温などの自然の変化を捉えて、天気を予想することです。
ピンポイントの気象情報が得られにくい山地において、観天望気を用いて天気を予想する判断材料を増やすことは大事になります。
好天になるのか、悪天になるのかを気象現象から読み解きます。
好天が想定される観天望気
好天につながる観天望気を以下のものがあります。
- 夕焼けは晴れ:太陽が沈む西方で、太陽光線を吸収する水蒸気量が少ない
- 夕方の虹は晴れ:西で晴れ、東で雨降りで天候が回復に向かっている
- 朝霧が降りると1日中晴れ:放射冷却が強くなっているので、高気圧に覆われている
悪天が想定される観天望気
悪天につながる観天望気を以下のものがあります。
- 朝焼けは雨:東側に高気圧が移ってしまって、西から低気圧がくる
- 朝方の虹は雨:東で晴れ、西で雨降りで天候が悪化する方向に向かっている
- 雲が南東から流れてくると雨:通常西から流れてくる雲が東から来るということは、低気圧・前線が近づいている
- 急に遠くの音が近くに聞こえたら雨:気流が乱れで音の伝わり方が変化がしたため、気圧の谷が近づいている
- 星が瞬くと翌日の風が強い:星が瞬くのは上空の風が強いためであり、上空の空気層が翌日に降りて来る
まとめ
今回は、雪山フィールドワーク時の「天候把握」についてまとめました。
十分な準備をしてフィールドワークへ挑み、良い研究に繋げていきたいと思います。
事前準備として必要な知識の習得に用いた書籍をまとめました。
また、雪山に必要な装備についてまとめましたので、参考にしていただければ幸いです。