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ほ場整備における整地工の「基盤切盛」について ~切土・盛土~

ほ場整備における整地工の「基盤切盛」について ~切土・盛土~
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ほ場整備の流れは「表土剥ぎ取り→ 基盤切盛→ 畦畔築立→ 基盤整地→表土戻し→ 表土整地」になります。

ほ場の物理的性質を決定付ける基盤を整備するには、基盤切盛の作業が必要です。

「基盤切盛」についてまとめます。

基盤切盛とは

基盤切盛

基盤切盛は、表土剥ぎを行った後の心土部分について、計画標高に合わせるように高い部分の土を切る「切土」、低い部分に土を盛る「盛土」工程のことです。

整地後の透水性地耐力などの物理的性質はこの工程でほぼ決まります。

心土部分であるため工事完成土の不良個所の補正は極めて困難ですので、慎重かつ正確な施工が求められます。

計画標高・切高・盛高について

均平

基盤切盛を行うには、整備後の基盤面の計画標高を求め、切盛高を決める必要があります。

計画田面標高ー表土扱い深さ=計画基盤面標高

切土をしたものを盛土で地区内流用することが原則なので、計画標高と切盛土量のバランスについて慎重に検討しなければなりません。

計画標高と切盛土量の決め方は2つあります。

  1. 計画区域内で切盛のバランスがとれる標高を計画標高とする一筆内操作を行う方法です。バランスがとれる標高を算出する場合、計画道路や用排水路の標高分の切盛土を見込む必要があります。
  2. 計画標高をあらかじめ望ましい高さを先に決め切盛土量を計算し、残土・不足分を区画外から運土によって操作する方法です。

基盤切盛で注意すべきこと

デメリット

基盤切盛は、心土部分を触るため、施行には多くの制約が伴います。

以下のことに注意して施工する必要があります。

基盤切盛の注意点

  • 不等沈下対策
  • 余盛り
  • 透水性対策
  • 法面保護の処理
  • 含水比
  • 湧水処理
  • 石礫処理

不等沈下対策

盛土の圧縮・圧密により不等沈下を防ぐために、転圧の効果が及ぶ20~30cmの高さごとに層状に土を「撒き出し」をして、ブルドーザーで転圧する「履帯転圧」を行います。

盛土高さの大きい箇所の著しく沈下が予想される箇所について、基盤切盛り後1~2か月の予備沈下期間をおいた後、表土もどし等の仕上げ工事を行うようにすることなど、慎重な施工が必要です。

盛土部が水路になる部分は、規定断面にかかわりなく基盤造成時に盛土し、十分な転圧を行ってから掘削するようにしなければなりません。

余盛り

不等沈下を抑えても、盛土部は時間経過とともに全体が沈下するものです。

地中の土は地表にあげると、土がほぐされ空気を含むため体積が増えます。そのため、盛土をすると、時間の経過とともに収縮して沈みます。

そのため、自然に沈下することをあらかじめ見込んで、計画高よりも多めに盛土をする「余盛り」が必要です。

土の変化率は以下のとおり、土の特性に応じて変化します。また、施工方法・条件にも左右されます。

土質地山に対する容積比
堀り緩めたとき締め固めたとき
ローム1.25 ~ 1.350.85 ~ 0.95
普通土1.20 ~ 1.300.85 ~ 0.95
粘土1.20 ~ 1.450.90 ~ 1.00
1.10 ~ 1.200.95 ~ 1.00
砂混じり砂利1.15 ~ 1.201.00 ~ 1.10
砂利1.15 ~ 1.201.00 ~ 1.05
固結した砂利1.25 ~ 1.451.10 ~ 1.30
軟岩1.30 ~ 1.701.20 ~ 1.40
中硬岩1.55 ~ 1.701.20 ~ 1.40
硬岩1.70 ~ 2.001.30 ~ 1.50

引用:建築工事監理指針(平成28年版上巻) [ 国土交通省大臣官房官庁営繕部 ]

透水性対策

心土が砂質土や火山灰土で透水性が高い水田となっている場合、基盤切盛の際に透水性を抑制する措置をする必要がある。

砂質土の場合、ブルドーザーによる転圧回数を増加させることで床締めする。

火山灰土の場合、植物根などによって鉛直方向発達した間隙により透水性が高くなっているため、転圧による改善は見込めません。そのため、切土部を破砕して間隙構造を崩してから転圧する破砕転圧工法が有効です。

法面保護の処理

傾斜地や大区画で法面が大きくなると、法面の保護が必要になります。

傾斜地で盛土高が大きい場合には、畦畔部は盛土の先端にあたるため、地盤沈下・法面崩壊の原因となりやすいです。

撒き出し層ごとに十分な履帯転圧を行う必要があります。

田面差が大きく盛土部分に法面が多い場合には、あらかじめ法先に余分に土を撒き出し転圧の上、切土して法面整形をする必要があります。

法面保護工について、下記記事にて詳細をまとめていますのでご参照ください。

含水比

基盤切盛を実施する際、降雨による含水比が増大し、基盤を痛めることになります。

最適含水比に近づけるように、降水の即時排除・ブルーシートなどの養生・天日乾燥をする必要があります。

施工時は常に地形が変化するので、1日の作業終了時には夜間の降雨に対処するため、必ず自然排水ができる状態にしておく必要があります。

湧水処理

急傾斜地で切土する場合、山腹からの湧出水があることが多いです。

このため、湧出水を全面に広がらせることがないように排水路に誘導する作業が必要になります。

切盛作業と導水路を交互にして作業を進め、作業完了時は暗渠で山側法足に導くなど、現地の実情に応じて決定します。

1.5m以上の田面差がある切盛作業で湧出水があり法面崩壊のおそれがある部分については、法面崩壊を防止するために根止め工等を設けることを検討する。

また、基盤造成作業中は必ず排水を行い、湛水状態のまま施工してはいけません。

石礫処理

心土中の石礫は、

  1. 除去する
  2. 基盤を強化するため基盤面以下に深く埋め込む

のいずれかで対応します。

基盤中の石礫を除去する場合、除礫用バケット・ストーンピッ力などを用いて心土部分の石礫だけを回収する方法・ストーンクラッシャーで堅い石を確実に粉砕する方法などが挙げられます。

基盤面以下に深く埋め込む場合、ストーンセパレータによってかき起こしながら浮石を分離して下層に埋め込み、上層には掘り起した細かい土を敷きならす工法などあります。

まとめ

田んぼ 均平 整地

ほ場整備における整地工の「基盤切盛」についてまとめました。

「のうぎょうとぼく」の中では、農業土木に関する豊富な記事を書いています。

農業土木について勉強できる本については下記にてまとめていますので、ぜひご覧ください。

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