耕土(表層または作土)とは、肥料を農具等で耕され、作物の生育に必要な栄養分を蓄えられており、作土の深さおよび性質が耕地の肥沃度を支配されます。
そのため、区画整理などのほ場整備において、耕土(表層または作土)を保存しながら施工することが必須です。
ほ場整備の流れは「表土剥ぎ取り→ 基盤切盛→ 畦畔築立→ 基盤整地→表土戻し→ 表土整地」になります。
この耕土を守る施工「表土扱い」についてまとめます。
表土扱いとは
表土扱いは、表土剥ぎ・表土戻し・整地の一連作業を行い、耕土を確保するため実施します。
表土剥ぎ
表土剥ぎは、整備前の表土(耕土)を基盤土と別に扱い、基盤切盛前に表土部分を剥ぎ集める作業のことです。
集めた表土は近くの土場に仮置きして、再利用します。
表土の飛散・流亡、異物の混入などを避けるため、ブルシートで覆うなどの養生を行うのが一般的です。
表土戻し
表土戻しは、基盤切盛あとに表土剥ぎした土を戻す作業のことです。
耕作に支障のないよう表土整地(均平整地)を行う必要があります。
均平整地について下記記事で詳細にまとめていますのでご参照ください。
表土扱いの施工方法
表土扱いには
- はぎ取り戻し工法
- 順送り工法
の2つの方法があります。
はぎ取り戻し工法
はぎ取り戻し工法は、計画した区画から剥ぎ取った表土を一度集積し、それをまた元の場所に戻す工法です。
- 表土を大量に仮置きする場所が近接にある。
- 計画区域内で表土が均一で混ざっても支障がない。
- 施工期間が短く、一度に施工できる。
などの条件に制約されやすい性格を持っています。
はぎ取った表土を集積する場所について、条件ごとに異なります。
- 区画面積の 1/2 に相当する部分の表土を下段に、残りの 1/2 を上段へとはぎ取る工法が運土距離が短く能率的で、代表的な方法になります。
- 計画田面差が0.5m 以上の場合には、上下段方向に集積したのでは表土を戻すときに困難なことが多いため、その区画の隣りで標高差の少ない田面に集積します。
- 計画田面標高差が 0.5 m 以下の平坦で、一区画内に計画田面標高と ± 5cm 以内の旧田面の場合、その田区を表土の置き場所として、その他の旧田区の表土をこの場所に集積します。ただし、この場合には、基盤造成の工程で支障とならないような位置、できるだけ中央部か四隅のうちの1か所に集中して集積できることが望ましいです。
順送り工法
順送り工法は、区画ごとに表土を順番に剥いで隣接した区画に送っていく工法です。
計画田面標高差が0.5m未満の平坦な地区・ほ区や農区の基盤の切盛が一区画内で処理される場合に適した方法で、道路・用排水路によって区切られたほ区や農区単位に行います。
ブロックの下流より施工し、途中の区画の表土はぎと同時に他の区画(一段下の区画)の表土戻しを行う方法です。
はぎ取り戻し工法よりも
- 表土の運搬費等の費用の低減
- 表土を借り置きする場所が少ない
などの利点がありますが
- 隣の区画との高低差が小さい。
- 区画が集団化している
などの満たさなければならない条件があります。
表土扱いで注意すること ~作土厚~
水田の場合、表土扱いする作土厚は15cmを目標にします。
しかし、下層が礫や泥炭など不等沈下による作土厚の減少が見込まれる場合、また水田畑利用により高収益作物の導入を行う場合、20cm程度を目標にします。
畑の場合は、現況作土厚または25cmの小さいほうを下限としますが、栽培作物に応じた作土厚を目標とします。
ただし、以下のような植物根の伸長を阻害する土層の場合は、表土扱いの際に土層改良を行います。
- 粗砂および礫の含量が重量%で55%以上の場合
- 山中式硬度計による緻密度24mm以上の堅い土層の場合
- 泥炭層または黒泥層
- リン酸吸収係数2000以上のリン酸不足する土層
表土扱いが不要になる場合
以下の条件の場合、表土扱いが不要になります。
- 切盛土深が5cm以内の平坦な地区の場合
- 下層土が表土とほぼ同質で、表土扱いを不要にしても、整地後に有効土層圧が30cm以上となり、肥培管理により作土を造成できる場合
- 作土の肥沃度が低く、作土と下層土の混合が地力増進になる場合
- 排水不良な軟弱地盤や湿田、急傾斜地水田など表土扱いが困難な場合
まとめ
ほ場整備における整地工の「表土扱い」についてまとめました。
「のうぎょうとぼく」の中では、農業土木に関する豊富な記事を書いています。
農業土木について勉強できる本については下記にてまとめていますので、ぜひご覧ください。
参考ページ:農業土木の勉強におすすめな参考書・問題集を紹介!