養殖魚は「美味しくない」「臭みがある」という低評価をかつては受けていました。
しかし、現在は柑橘類由来の成分を餌に混ぜるなどの工夫により臭みを抑制し、「フルーツ魚」と呼ばれるブランドに昇華されています。
フルーツ魚の中で、かぼすを用いている「かぼすブリ」についてまとめます。
かぼすブリとは
かぼすブリは、大分県臼杵市・津久見市・佐伯市を中心に、かぼす果汁・果皮粉末を添加したエサを与えて養殖されたブリです。
大分県が日本一の生産量(全国の約9割)を誇る「かぼす」、養殖生産量全国第2位(令和2年20,200t)の「ブリ」をかけ合わせた、大分県ならではの特産品になります。
「かぼすブリ」は、大分県漁業協同組合により、2011年に商標出願・登録がされています(特許情報プラットフォーム登録5448182)。
カボスに含まれるポリフェノール・クエン酸・ビタミンCなどの抗酸化作用を活かせると大分県農林水産研究指導センターが研究開発し、ブリ特有の血合いの変色抑制に成功していました。
良質な養殖魚の生産に加え、食品残さの有効活用としての一面もあり、エコな取り組みでもあります。
かぼすブリの生産基準
かぼすブリを生産するには、大分県水産養殖協議会から生産を認められる必要があります。
協議会は、大分県・漁協・市場関係者・生産者の4者で運営されており、一定の基準を定めて品質の個体差を最小限にする努力がされています。
かぼすブリの生産条件については、大分県HP「かぼすブリについて知ろう」・農林水産省「かぼすブリの生産・販売体制の構築」・瀬戸内海水産フォーラム「養殖魚のブランド化に必要な科学的特徴と生産基準の策定」から以下ことが設けられていることが分かります。
【かぼすブリの生産基準】
- 給餌条件:果汁の場合餌に対して1.0%添加で30回給餌、果皮パウダーは餌に対して0.5%添加で25回給餌
- 餌抜き:出荷2週間前から餌を抜く
- 出荷時期:血合肉の変色を抑える効果が出やすい「10月頃~3月末」
- 出荷前確認:血合い褐変抑制効果を県水産研究部が確認
- 禁止飼料:油脂成分添加餌(フィードオイル等)の使用禁止
かぼすブリの品質向上のために、カボスパウダーの製造過程におけるリモネン含量を高めるための破砕方法などが研究されています(参考:大分県産業科学技術センター「高品質なかぼす養殖魚生産のためのかぼすパウダー製造方法の確立」)。
かぼすが与えるブリへの効能

大分県農林水産研究指導センター研究報告「カボスを給餌して品質改良を行った養殖ブリの生産時期拡大のための諸検討」により、研究部の飼育成績で以下の効能が確認されています。
- 腹部体側筋の血合筋褐変に要した時間の延長:粉末区で25時間・果汁区で46時間の延長
- リモネン検出:粉末でのみ0.05mg/100g
- 肥満度の若干低下:対照区16.5%に対して粉末区15.4%・果汁区15.7%
研究部の飼育成績以外でも業者の飼育成績も示されており、「腹部体側筋の血合筋褐変に要した時間の延長」「リモネン検出」は認められたが、肥満度の差異はみられませんでした。
また、瀬戸内海水産フォーラム「養殖魚のブランド化に必要な科学的特徴と生産基準の策定」・農林水産省「かぼすブリの生産・販売体制の構築」で、以下のことが報告されています。
- 苦味・渋みなどの減少、旨味の増加:味覚センサーによって数値化
- ミルセン・テルピネンの検出
かぼすブリの通販・ふるさと納税
かぼすブリは、通常の養殖ブリよりもコストがかかっているので、販売価格はどうしても少し高めになってしまいます。
また令和元年度は705tしか生産されておらず、脂乗りが良く血合肉の変色を抑える効果が出やすい「10月頃~3月末」の冬季限定出荷のため、通販よりもふるさと納税を活用してその時期に発送されるのを待つ方が多いです。
無駄な脂質が少なくさっぱりしているので、ブリしゃぶ・カルパッチョ・刺身で食べることをおすすめします。
あら煮などの加工品も販売されているので、「10月頃~3月末」以外の時期も楽しめます。
まとめ

大分県のフルーツ魚「かぼすブリ」についてまとめました。
養殖魚のブランド化に成功した数少ない魚ですので、ぜひ知っていただき、できれば賞味いただければ幸いです。
かぼすブリ以外のフルーツ魚についても随時アップしていきますので、ぜひそちらも御覧ください。