農業は1年に1作しかできないものが多く、圧倒的に経験・知識が不足してしまいます。
農業に従事し続けるには、勉強し常に新しい知見を学ばねばなりません。
勉強方法として、業界セミナー・先進地訪問・普及員による指導などありますが、私は本・業界誌・論文などを用いて勉強することが好きです。
その一環として『小さくて強い農業をつくる』を読みましたので、書評・要約のように綺麗に整理できていませんが、感想・勉強になった内容をまとめてみます。
目次
『小さくて強い農業をつくる』とは?
読みやすさ | |
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専門性 | |
役立ち度 |
- 著者:久松達央
- 出版社:晶文社
- 発売日:2014/11/25
- ページ数:288ページ
【目次】
- 第一章 一流企業サラリーマン、華麗に道を踏みはずす
- 第二章 新人農家「農家に向いていない」ことを思い知る
- 第三章 言葉で耕し、言葉で蒔く。チームで動く久松農園の毎日
- 第四章 「向いていない農家」は、日々こんなことを考えている
- 第五章 向いていない農家、生き残るためにITを使う
- 第六章 カネに縛られない農業を楽しむための経営論
- 第七章 強くて楽しい「小」を目指して
『小さくて強い農業をつくる』は、「久松農園」代表の久松達央氏が21世紀型農家の生き方がまとめられている一冊です。
農業経営のコツや有機栽培のコツではなく、「現実に農業の現場に起きていること・そこで考えたこと」を伝える内容に主眼を置かれています。
エコに目覚めて一流企業を飛び出した「センスもガッツもない農家」が、悪戦苦闘のすえにつかんだ「小さくて強い農業」が理解できます。
『小さくて強い農業をつくる』を読んで勉強になったこと
『小さくて強い農業をつくる』では、著者が「久松農園」で体現した「小さくて強い農業」がどのようにしてでき、どう運営しているのかを学ぶことができます。
「久松農園」は、7名のスタッフと共に、年間50品目以上の旬の有機野菜を栽培し、契約消費者と都内の飲食店に直接販売しています。
本書で重要だと思った箇所を章ごとにまとめます。
第一章 一流企業サラリーマン、華麗に道を踏みはずす
著者は、一流大学を出て、一流企業(帝人株式会社)に就職します。
会社員としての立場や働き方に違和感を拭えず、有機農業に出会い、4年半で会社を退職して田舎暮らしを始めます。
研修先で現場での生々しい経験を重ねる中で、畑は工場で有機は規格であり、牧歌的な有機農業への幻想も晴れます。
第二章 新人農家「農家に向いていない」ことを思い知る
なし崩しの形で独立したため、耕作放棄地の飛び地を寄せ集めて40aを確保します。
『有機農業のハンドブック』をバイブルに、先輩農家のマネをしながら栽培。
農学部出身でないので、栽培技術の取得には苦労しますが、勉強会・先輩への相談などを通して、向いていない農作業を言語化していきます。
有機農業についてに、安易な近代化がもたらした農産物の質の低下・生産者自身の人生の質の低下を解決するためだと示します。
第三章 言葉で耕し、言葉で蒔く。チームで動く久松農園の毎日
久松農園では細かい作業の進め方は各自の自主性に任され、分からないことがあれば農場長に確認しますが、1人で動くことが多いです。
多品目栽培なので1つ1つの作業時間が短く、1時間から半日しかかからない細かな仕事が週に何十もあり、1人1.4haの畑が任されています。
農場長が週末に1週間の作業スケジュールを組み立て、スタッフは過去の作業から作業の予習をすることが求められます。
A4サイズ1枚の作業マニュアルは、失敗への注意点など当事者の主観で記録された「使えるマニュアル作り」がされています。
真夏は5〜10時・14〜18時が作業時間で、終了時には栽培日誌の記録・メールやFacebookのチェックも全員が行います。
多品目栽培では、年間50品目でも120〜130もの品種があるので、シーズンはじめに作る、品目ごとに「品種・ほ場・作付数・栽培密度・使用資材」が記された栽培計画表が重要になります。
農作業のセンスがないことがわかっているので、農作業の言語化・数値化がしっかりされており、高度な栽培技術がなくても農業ができることを示しています。
第四章 「向いていない農家」は、日々こんなことを考えている
久松農園では、夏場の果菜類などを除いて、水やりはしません。
風については、ビニールトンネル・不織布などの設置の仕上がりが全然違い、台風・春一番でハウスが倒壊したりしてしまいますが、受粉・風通しには風が重要です。
そのため、24時間更新される気象情報をマメに確認しながら、農作業に反映しています。
自然は時に不条理な災いをもたらしますが、人間のように人を選んだり理不尽なことはしません。
「三分の人事、七分の天」という言葉を用いて、自然への備えと許容を示しています。
第五章 向いていない農家、生き残るためにITを使う
ITとは最も遠いところにいるような農業者の間でも、当たり前のようにITの活用やインターネットを使った情報発信が重要です。
お客さんのニュースレター・帳簿類・栽培記録などがデジタル化されます。
農作業を記録する作業日誌はデータでクラウド上にまとめて、データベースとして蓄積され、スタッフ全員が共有できるようにしてあります。
第六章 カネに縛られない農業を楽しむための経営論
著者は、貧乏暮らしを楽しんではいてもジリ貧は絶対に嫌で、理由は2つあります。
- 社会の中で一定の役割を果たしたいから
- 農業はお金にならないという考え方そのものに同意できなかったから
農業で商売がうまくいかない人は、コミュニケーションが原因になっているケースが多く、職人気質でこだわりがある人ほど他人に押し付けてしまいます。
こだわりという「自分の中の価値」と「市場価値」はイコールではなく、この2つの価値の橋渡しができることが経営の根幹です。
『農で起業する!脱サラ農業のススメ』で紹介されている「労働単価を決めてしまえ」を用いて、就農する人は利益目標と労働時間を先に決めて、それに向かって行動するように示しています。
第七章 強くて楽しい「小」を目指して
大きな組織ではなく、自立した個人の緩やかなネットワークが重要になります。
一人農業のメリット・デメリットが記載されています。
【メリット】
- 権限と情報が一人に集中しているので決断が早い
- 失敗を人のせいにしなくなる
- 仕事の効率を考えるようになる
【デメリット】
- 作業効率が悪い場面も多い
- ダレると止まらない
- 事業が、自分という人間のキャパシティに規定されてしまう
著者は一人でやるかチームでやるかを独立してから7年悩みますが、住み込みの研修生を1年間も引き受け、それからスタッフを雇い、チームとして働くようになります。
自分の事業にプラスになるからではなく、信じた仲間が楽しく充実して働いていることが喜びに感じるために雇うようになり、チーム力もどんどん増します。
『小さくて強い農業をつくる』を読んで今後勉強すべきこと
『小さくて強い農業をつくる』を読んで、農業でスマールビジネスを立ち上げる方法を学べました。
より深く知識をつけるために、同分野の農業事業立ち上げの本をもっと読み進めます。
まず、経営計画書についての理解は重要だと思うので、経営計画に重きを置かれた就農本である『就農は「経営計画」で9割決まる 農業に転職!』を読んでみます。
また、本書の中で著者が参考にしたという『農で起業する!脱サラ農業のススメ』を読んでみます。
まとめ
『小さくて強い農業をつくる』を書評・要約のようにまとまっていないかも知れませんが、感想・内容を紹介しました。
まだまだ勉強不足ですので、これらからもしっかり勉強していきます。
最新の農業情報を得るためには、本だと出版までのタイムラグがあるので、農業の専門雑誌を読むほうがおすすめです。
毎月購入すると結構コストがかかってしまうので、ネットで農業雑誌・家庭菜園誌が読み放の「楽天マガジン」がおすすめですので、利用してみてください。