新規農業をし、農業従事者の一員になるにはどうしたらいいだろうかと、たくさんの本を読んで勉強しています。
『農業に転職! 就農は「経営計画」で9割決まる』を読んでいるだけでは記憶になかなか残りにくいため、インプットした知識を整理して、
- 「読んで勉強になったこと」
- 「理解が及ばず、さらに勉強をしなくてはいけないこと」
を感じたままに書き留めております。
書評のようにうまくまとめることはできないかもしれませんが、ご紹介いたします。
目次
『農業に転職! 就農は「経営計画」で9割決まる』とは?
読みやすさ | |
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専門性 | |
役立ち度 |
- 著者:有坪民雄 (著)
- 出版社:プレジデント社
- 発売日:2019/7/11
- ページ数:263ページ
【目次】
- 第1章 新規就農に「経営計画」が必須である理由
- 就農者インタビュー ぼくらはこうやって農家になった
- 第2章 経営計画書を作ってみよう!
- 第3章 新規就農者が知っておくべき9のこと
- 第4章 経営計画ができたら次にするべき12のこと
- 第5章 移住希望者必読!農村社会で生きるための必須知識
- 第6章 よくある質問「Q&A集」
- 第7章 20年後の農業の姿
『農業に転職! 就農は「経営計画」で9割決まる』は、農家歴25年・元経営コンサルタントである有坪民雄による、脱サラ就農の教科書です。
農業を事業としてしっかりとらえ、「経営計画」に主軸を置いた就農本は他には見られない特徴になります。
また、農村に移住した際の注意点など、就農に関する細かな悩みについても本書は解決してくれます。
『農業に転職! 就農は「経営計画」で9割決まる』を読んで勉強になったこと
『農業に転職! 就農は「経営計画」で9割決まる』では、主に以下のことが学べます。
- お金より体力よりコネよりも大切な「経営計画書」の作り方
- 就農直後にやってはいけないタブーの正体
- 最低限知っておくべき地域別「経営モデル」の知識
- 移住希望者必読! 田舎暮らしの人付き合いの極意
- 農村社会における必須知識
- 10~20年後の農業を左右する「技術革新」の予想図
各章ごとに重要だと思ったことをまとめさせていただきます。
第1章 新規就農に「経営計画」が必須である理由
新規就農するためには、以下の3つの方法があります。
- 就農支援機関と相談しながらやる
- 農家に嫁入りする・婿入りする
- 独力で就農する
本書は、「就農支援機関と相談しながらやる」方法についてお薦めしています。
就農支援機関のアドバイザーは、「この人ならきちんとここのエリアで農業をやっていけそうだ」と思える人しか相手にしないので、経営計画書を提示することでアドバイザーを本気にさせる必要があります。
経営計画書の重要性は以下の通りです。
- 自分のイメージを明確にできる
- 就農のイメージが実現可能なのかを検証できる
- 就農を支援する人たちに、最も早く、確実に自分の考えを理解してもらえる
第2章 経営計画書を作ってみよう!
経営計画書は3ステップで作ることができます。
- ステップ1:経営指標を集める
- ステップ2:就農のために必要な4つの資料を知る
- ステップ3:実際に経営計画を作る
ステップ1:経営指標を集める
経営指標の集め方として、自治体が公開している経営支援情報を用います。
主な作物別と作型(栽培方法)の経営モデルが公開されており、本書内では群馬県が例に挙げられておりました。
地域の経営収支を見ると、同じ作物でも地域によって収量・収益性がかなり違うことがわかります。
ステップ2:就農のために必要な4つの資料を知る
4つの資料とは
- 栽培スケジュール表
- 輪作計画表
- 労働時間算定表
- 簡易資金繰り表
です。
特に見ておかなければならないのは、自分のやりたい作物に関する労働時間・連作障害対策のための農地確保です。
ステップ3:実際に経営計画を作る
ステップ1のデータを活用して、「栽培スケジュール表・輪作計画表・労働時間算定表・簡易資金繰り表」を作ります。
実際に作成することで以下のものが見えてきます。
- いくら儲かるか
- 仕事がいつ大変なのか
- 資金はどれだけ必要なのか
- いつ資金繰りが苦しくなるか
第3章 新規就農者が知っておくべき9のこと
新規就農者が最低限知っておくべき農業にまつわる知識を、9つのテーマに分けてまとめられています。
- テーマ①「農業とはどういうものか」
- テーマ②「教育・研修について」
- テーマ③「無農薬農業の研修について」
- テーマ④「家族のことについて」
- テーマ⑤「農業法人について」
- テーマ⑥「借金について」
- テーマ⑦「地域別の特徴について」
- テーマ⑧「作物別の特徴について」
- テーマ⑨「経営モデルの知識について」
テーマ①「農業とはどういうものか」
農業おいて作物の勉強は必須で、農業高校の教科書で勉強することが費用対効果もよく効果的です。
作物・野菜・草花・果樹・畜産などの分野別に加えて、食品製造・農業機械・植物バイオテクノロジーなどの教科書があります。
ただ読むだけではなく、どんな仕事をしなければならないのかを想像しながら読むことも重要です。
テーマ②「教育・研修について」
大農家・農業法人に入って実務を学ぶ以前の段階で、農業を学校で学びたいと考える人もいますが、これらの教育・研修の効果はそれほど大きくなく、学校に行かなくても農業はできます。
どうしても学校に行きたいと考えるのであれば、農業大学校に行くべきです。
しかし、お金も時間もかかるので、市民農園や家庭菜園で野菜の栽培技術を独学で取得するのも勧められています。
テーマ③「無農薬農業の研修について」
無農薬農業の研修において、毒性学に無知・無理解であることが多く、注意が必要です。
私たちが食べる食物には、健康に良い成分だけではなく、天然の毒物も含まれています。
自然農薬が農薬に匹敵する危険な毒性を持つことがあるのを知らないのです。
テーマ④「家族のことについて」
世帯を持って新規就農をしたい人には、自分が就農したいことを家族に伝えて説得することが1番の難関です。
突然思いつきのように説得することをしないように、農業に興味があることを日常の中で匂わせ、実際に色々調べる姿を見せつ必要があります。
テーマ⑤「農業法人について」
農業をするには、必ずしも個人農家である必要はなく、農業法人に就職する手もあります。
農業法人に就職する動機は、
- 勤める会社として農業法人を選択する場合
- 農業法人でノウハウを身につけてから独立したい場合
の2通りあります。
なぜ農業法人で働きたいのかを明確にし、目的に沿った農業法人に勤めなければなりません。
テーマ⑥「借金について」
新規就農をするときに借金する場合、貸しては必ず信用状態を調査します。
出来る限り就農前に借金を0にしておいて、就農資金を確保できるようにしましょう。
テーマ⑦「地域別の特徴について」
地域別の特徴が記載されていました。
- 北国を中心とした寒冷地:景観は美しいが、条件が不利であり候補地が少ない
- 温暖な地域:条件は有利だが、病虫害が多い
- 都市近郊:交通の便が活かせるが、農地取得が難しい
- 辺境過疎地:農地取得コストが低く行政のバックアップも手厚いが、獣害が多い
テーマ⑧「作物別の特徴について」
作物別の特徴が記載されていました。
- 稲作:参入困難度「低」・収益期待度「低」・機械化進捗度「高」・必要資金「小〜大」
- 野菜:参入困難度「低」・収益期待度「ものによる」・機械化進捗度「低〜高」・必要資金「栽培方法による」
- 果樹:参入困難度「高」・収益期待度「中」・機械化進捗度「中」・必要資金「大」
- 花卉:参入困難度「低〜中」・収益期待度「中」・機械化進捗度「中」・必要資金「低〜中」
- 畜産:参入困難度「高」・収益期待度「中〜高」・機械化進捗度「養鶏は極めて高いが、他は低い」・必要資金「大」
テーマ⑨「経営モデルの知識について」
経営モデル別の特徴が記載されていました。
- 小品目大規模経営:技術・機械の取得が容易になるが、市場の価格変動を受けやすい
- 減反対応経営:減反した分の農地で別の作物をつくので、簡単に農地を借りれる
- 多品種少量経営:投資額も安く経営の安定性も高いが、時間がかかり技術も必要
- 6次産業経営:食品加工・料理などの農業以外のスキルが必須で新規就農には不向き
- 農作業代行業:農地取得困難時に一時収入を得ることができ、収入も安定する
- 植物工場:莫大な投資額とランニングコストがかかるが、高品質な作物が栽培できる
- 兼業農家:良い規模の就農候補地がない、運転資金が厳しい場合でも、経営が安定する
第4章 経営計画ができたら次にするべき12のこと
【経営計画ができたら次にするべき12のこと】
- 経営計画書を持って支援機関を訪ねる
- 農地の選定ー11の評価法とは?
- 住宅の取得
- 地域事情を把握する
- 本格的に経営計画を立てる
- 就農当初の借金は、こうやって消す
- 投資額を少なくする方法
- 資金調達
- 認定新規就農者になる
- 農業委員会の許可を得て農地を取得する
- 農業協同組合に加入する
- 本格的な研修を受ける
1.経営計画書を持って支援機関を訪ねる
支援機関として、新規就農相談センター・JA(農協)・普及指導センターがあります。
経営計画書とバックデータを持っていくと、アドバイザーの助言により計画の修正が必要になるかもしれません。
複数の候補地を紹介してもらったり、候補地の支援機関に直接乗りこむなどして、候補地を選択しなくてはいけません。
2.農地の選定ー11の評価法とは?
経営計画に問題がない場合、主に農地中間管理機構(農地バンク))のデータベースを参照して、新規就農者の希望に沿うような農地を探します。
土地を評価するために調べなければならないのは、次にあげる11項目です。
- 土地区分:市街地化区域内か外か、農業振興地域かの確認
- 面積;農業委員会・JAの基準で農家の要件を満たせるだけの面積かを確認
- 立地:マクロ・ミクロでの気候風土の確認
- 集約度:田畑の分散による移動時間・家からの距離を確認
- 水利:水が低コストで容易に手に入るか、水質は良いかを確認
- 土質:作る作物と相性が良いか、個別の田畑ごとの質の違いを確認
- 通路幅:使用する農機が進入できるかを確認
- 進入路の傾斜:使用する農機が進入できるか、転倒しないかを確認
- 周囲の雇用状況:繁忙期にアルバイトを雇用できるかを確認
- 現役地か放棄地か:雑草の処理にどれくらいのコストがかかるのかを確認
- 周囲の農家の年齢:将来規模拡大できる余地があるかを確認
3.住宅の取得
農地のそばに家が取得できる幸運なケースを除き、多くの場合は農地まで通勤することが多くなるはずです。
農地の近くで良いところが出るまで、仮住まいにしておいた方がいいことが多いです。
就農が失敗した場合も、すぐ撤退することもできます。
4.地域事情を把握する
その地に住んでいる、社会的な一般常識をわきまえた人から「ここ独特の慣習はありますか?」と聞くことですが、見ず知らずの人に本当のところを離してくれません。
そこで、新規就農支援機関を使って、「その地区で実際に暮らしている人の話を聞きたい」と言って誰か紹介してもらいましょう。
地域で高齢者の発言がどれほど重視されるかを聞くことが重要で、重鎮の「鶴の一声」がある地域は避けたほうが無難です。
5.本格的に経営計画を立てる
候補地が決まると、就農地の農業改良普及センターと本格的に就農計画を作り上げます。
インターネットで公開されてない細かなデータなどを反映します。
役所に経営計画書を提出した瞬間、農家になることができます。
6.就農当初の借金は、こうやって消す
就農当初は、設備・機械に莫大な資金を借金をして投入します。
これらは、減価償却費として経費計上することで、税金を削減して収入を増やすことができます。
農業所得以外に収入があることになるので、計画よりも早く借金の返済につなげることができます。
7.投資額を少なくする方法
極力投資額を減らすために、設備を借りたり中古を購入したりすることが考えられます。
しかし、農機は前に使った人の使い方によって状態の良し悪しの差が出てしまいます。
購入後の修理費などについても考えなければならないため、複雑な構造の機械は故障しやすいのでできるかぎり新品、単純な構造は中古にするなど考えて購入しなくてはいけません。
8.資金調達
農業関係の資金調達は、民間銀行から融資を受けるより、制度資金と呼ばれる農業支援制度を利用するのが普通です。
担保・保証人が必要ですが、農業信用基金協会に信用料を払って保証を取り付ければ担保・保証人なしでも融資を受けることもできます。
9.認定新規就農者になる
就農アドバイザーに経営計画が認められると、青年等就農計画制度に従い、認定新規就農者になれます。
農業次世代人材投資事業・青年等就農資金などの公的支援を厚く受けることができます
欠点としては、農家の経営に市町村がいちゃもんをつけてくることがあります。
10.農業委員会の許可を得て農地を取得する
農業委員会とは、地域の農業関係の許認可権を持つ行政委員会で、本部は市町村役場にあります。
農地を取得するには、多くの書類を提出し面接を受けて、農業委員会の許可が出たら農地の売買や賃貸借ができます。
11.農業協同組合に加入する
JA(農業協同組合)は、ほぼ全ての農家が加入している協同組合組織です。
組合員になるには、出資金を払い、農地を10a以上・年間90日以上農業に従事していることなどの条件をクリアする必要があります。
農作物の出荷・農業資材の購入・金融業務全般・小売など多彩な事業を享受することができます。
12.本格的な研修を受ける
ここまで準備が整ったら、農家の現場に入って実地の研修を受けることも考えなければなりません。
特に農業機械の扱い方については、学んでおく必要があります。
自分の学びたい分野の農家・農業法人のに受けにいくが、就農地とは違う先進地での研修を受けても良いでしょう。
第5章 移住希望者必読!農村社会で生きるための必須知識
農村に移住する場合は、都会との違いについて戸惑うかもしれません。
本書では、農村社会で生きるための必須知識が記載されています。
- 煩わしさは農村社会も都市社会も同じ
- 新規就農者に対して周りの農家は戸惑っている
- 農村地域の人間関係は見えない線引きがあるので、挨拶周りの範囲は隣の家に聞け
- 農村で評価されるのは、消防団などのボランティア活動・ゴミ拾いなどの奉仕活動を嫌がらない人
- 就農後2年間は会議の席で積極的な発言は控える
- 先輩にあたる地域の高齢農家に耳を傾ける
- 農協をうまく利用して、青年会などで人脈作りを行う
- 農機の修理ができる地元の自動車業者は味方にしておいて損はない
- 農機販売店の食い物にされないように営業マンを見極める
- 農業簿記と農業日誌をつける
- 変動費(農薬・肥料・資材・燃料・機械修理費)のコストダウンに取り組む
- 自身の健康を損ねないように、農薬散布に気をつける
- 台風・冷害・疫病に備えた金策を考える
- 農業・農村生活に家族が馴染めているかケアする
- 農協以外の販売ルートのメリット・デメリットを理解する
- 農業IOTを活用した規模拡大と集落営農を行う
第6章 よくある質問「Q&A集」
・Q1 私はもともと体育会系ではなく、体力に自信がありません。
・A1 農業機械の進歩で重労働作業は減っており、必要なのは知恵を絞る頭
・Q2 夏の暑さが心配。熱中症などへの効果的な対策はありますか?
・A2 朝早く起きて暑くなる前に収穫を終わらせ、暑い時間は基本田畑に出ない。
・Q3 ハイテク農業に興味がない私は、新規就農に向いていない?
・A3 市場規模が小さい作物の機械化はあまり進まないので大丈夫。
・Q4 農業を始めるのに、どの程度の資金が必要ですか?
・A4 扱う作物によるが、一般論では2000万円は用意してください。
・Q5 最低限の資金である800万円も用意できません。
・A5 就農支援金に最初から頼るのは良くないので、貯金または家族から借りる
・Q6 農業法人で修行してから独立するほうがいいのでしょうか。
・A6 悪くない方法だが、給料が安い労働力として便利に使われる恐れもある。
・Q7 人付き合いが苦手。他の農家とうまく関係が作れるのか不安です。
・A7 サラリーマンとして勤められているなら大丈夫。
・Q8 高校生です。将来農業をやるなら農学部に進学すべき?
・A8 基本そうしたほうがいい。その後行けるなら農協職員・農業普及指導員を選ぶ。
・Q9 大学生です。将来農業をするには農業系の会社に就職するべき?
・A9 どんな業種でも頑張って仕事をすることで、得られるスキル・ノウハウはある。
・Q10 田舎には想像を絶する慣習があると聞きます。対処法は?
・A10 就農候補地に住む前に地元の人の話をどれだけ聞けるかにかかっています。
・Q11 独身女性です。就農すると農家の嫁候補にされないか心配です。
・A11 昔のような状況に陥る可能性は激減しているが、対策は必要。
・Q12 パートナーや子どもが農業をしたいと言っていて不安です。
・A12 彼等の幸福につながるのか・農業に適性があるのか見極めましょう。
第7章 20年後の農業の姿
2040年には、高齢化による農業人口の減少によって、農業は劇的に変わります。
大規模農家すら高齢化が起こり、後継者がいなくなってきます。
国内農家が作る量では需要が賄えなくなりますので、輸入に頼る作物が増えてきてしまいます。
こうなる状況を挽回できる技術革新の発明が第2次農業革命を起こします。
- 農業機械の自動化
- ほ場の精密管理
- ゲノム編集による品種改良
などが本格的に導入され、生産量の底上げが行われます。
『農業に転職! 就農は「経営計画」で9割決まる』を読んで今後勉強すべきこと
『農業に転職! 就農は「経営計画」で9割決まる』を読んで、農業で起業するために考えなくてはいけないことが色々学べたと思います。
より就農するための知識をつけるために、他の本でも勉強したいと思います。
まず、「土地なし、ノウハウなし、資金なし」でも、年収を落とさずに農業をはじめるため就農本である、『絶対にギブアップしたくない人のための成功する農業』を読んでみます。
また、就農をする前の段階として家庭菜園・貸し菜園から始めると良いと書いてあったので、その段階に適した本を読みたいと思いました。
仕事をしながら副業でもできる『確実に稼げる 週末農業 副業入門』を読んでみます。
まとめ
『農業に転職! 就農は「経営計画」で9割決まる』を書評・要約のようにまとまっていないかも知れませんが、感想・内容を紹介しました。
まだまだ勉強不足ですので、これらからもしっかり勉強していきます。
最新の農業情報を得るためには、本だと出版までのタイムラグがあるので、農業の専門雑誌を読むほうがおすすめです。
毎月購入すると結構コストがかかってしまうので、ネットで農業雑誌・家庭菜園誌が読み放の「楽天マガジン」がおすすめですので、利用してみてください。