環境破壊による生物多様性の危機について、全世界で共通認識を持ち、保全が行われています。
生物多様性は、3つの多様性(生態系・種・遺伝子)で重要性が説明されています。
そのため、「生物多様性の価値」について色んな捉え方があり、一言では言い表すのがとても難しいのです。
そこで環境破壊によって減少・失われる「生物多様性の価値」について、網羅的にまとめてみます。
「生物多様性の価値」とは
生物多様性の価値は、人間が直接・間接的に使用できるかによって「直接的価値」「間接的価値」に大別され、「消費的」「生産的」「非消費的」「遺産的」「存在的」の5つに小分類できます。
「生物多様性の価値」
直接的価値
- ①消費的価値:直接消費される生物資源の価値
- ②生産的価値:生産活動を通して消費される自然資源の価値
間接的価値
- ③非消費価値:消費されないが、人々に利用される価値
- ④遺産的価値(予備的価値):将来の潜在的利用のために残しておく生物資源の価値
- ⑤存在的価値:倫理的立場から支持される非使用的価値
提唱者によって分類は異なり、「直接的価値」「間接的価値」「文化的価値」「倫理的価値」の4分類にするなどありますが、中身が網羅的されていれば問題はありません。
①消費的価値
消費的価値は、食糧・飲料・燃料・医薬品など生物資源としての利用価値です。
日々の生活を支える必須な資源で、人間と生物多様性の関わりの根幹になります。
生物多様性が減少・損失することで、生物資源の枯渇に繋がり、人類の増減に非常に影響を与えます。
②生産的価値
生産的価値は、生産の場を提供してくれる自然資源としての利用価値です。
人間が土壌・水・木材などを利用できるのは、多くの生物が物理的・化学的に関わることで生まれています。
農業・漁業・林業で供給地として持続的に活用するためには、豊かな生物多様性は欠かせません。
③非消費的価値
非消費的価値は、消費されないが人類の営みを豊かにできる利用価値です。
芸術・祭りなどの文化的サービス、バードウォッチングなどのレクリエーション、自然景観などの観光を提供してくれます。
また、国土の保全・水源の涵養・気候調節機能などを発現します。
これら全てを含めて多面的機能と呼ぶので、多面的機能を発現する価値とも言えるかもしれません。
④遺産的価値(予備的価値)
遺産的価値(予備的価値)は、将来の人類に役に立つ可能性がある生物資源の価値です。
現在の利用価値はないものの、将来世代では利用価値が見出されることもあります。
「遺伝資源」の具体的な生物資源だけでなく、現在の科学では判明していないことも含まれるので価値判断は未知数です。
生物資源の損失は不可逆的なので、将来世代の権利として生物多様性を保全しなければなりません。
⑤存在的価値
存在的価値は、生物多様性そのものの価値です。
哲学者・倫理学者の加藤尚武による環境倫理学において、「自然の生存権」と表現されます。
長い年月をかけて形成された生物多様性そのものが素晴らしいのです。
①~④の価値は人間中心の価値基準で経済価値が算出されますが、人間の利害から外れた倫理的価値観になるので存在的価値は貨幣的価値には代えがたいものです。
まとめ
「生物多様性の価値」の分類についてまとめました。
この分類以外にも、生物多様性を基盤とする生態系から得られる恵み「生態系サービス」というものもあるので、そちらも確認してみてください。
生態学についてより深く勉強するのに、おすすめの書籍をまとめていますのでご参照ください。