田んぼの水を排水するために、「末端排水路→支線排水路→幹線排水路」の順を経て排出されます。
それぞれの水路規模に最適化された設計・施工が必要です。
今回は水田圃場内の「末端排水路・小排水路」に関する設計についてまとめます。
末端排水路・小排水路とは
末端排水路(小排水路)は、耕区から支線排水路まで排水を導くための水路です。
水路断面が比較的小さいことから、コンクリート二次製品の水路が用いられるのが一般的です。
「営農作業上の障害が除去できる」「水路浚渫と除草の維持管理作業がなくなること」「水路上部が有効利用できる」などの利点から、管水路型式が用いられることもあります。
水田の全体の区画については別でまとめていますので、そちらをご参照ください。
参考ページ:水田の区画について ~農区・圃区・耕区~
末端排水路・小排水路の設計は、以下の順に検討する必要があります。
【末端排水路・小排水路の設計手順】
- 断面設計
- 配置設計
①末端排水路・小排水路の断面設計
末端排水路・小排水路の断面は、計画排水量を安全に流下させるための断面が必要です。
排水路はほ場に直接接してほ場からの排水のみを受けて、当該ほ場以外の雨水排水は受けない排水路を基本とします。
計画排水量は、田面排水にかかる要する日数が1~2日以内になるように設定します。
流出率・計画排水量を算出し、地形勾配と土工量を考慮して最も経済合理性のある断面を決定します。
通水障害物を掃流するだけの最小流速0.6m/s以上の排水流速が必要となるため、管の埋設勾配については細心の注意が必要です。
また水路内で用水が波打つなど、計画高水位以上になったとしても安全に水を流すために「余裕高」を設ける場合もあります。
圃場内で水路が溢れても大丈夫だと判断する場合は、経済合理性を優先し、余裕高を設けない場合もあるので、地域の事情に応じて対応しましょう。
余裕高については、別でまとめていますのでそちらをご参照ください。
参考ページ:水路の水理設計における余裕高の計算方法について
②末端排水路・小排水路の配置設計
末端排水路・小排水路を設置する際には、高さ・長さについて検討が必要です。
非かんがい期の地下水位が田面下1~2m以下にあり、かんがい期にも田面湛水と地下水が飽和連続せず「開放浸透」を起こす水田では、排水路は地表排水機能のみで浅いもので良いため、排水路の深さは田面下50~60cm以内となるのが一般的です。
非かんがい期に地下水位が1m以内と高い場合や、かんがい期には地下水位が高まって田面湛水と飽和連続する水田では、排水路は地表排水と地下排水の両方の機能を持つ必要があります。
そうした場合では、排水路の深さは田面下1~1.2m程度になります。
排水路の断面として深いものにできない場合は、地下排水を暗渠排水で排出することで、排水路は地表排水だけの浅いものが選択可能です。
末端排水路の長さは農区の大きさに帰属しますが、配水する耕区が多く広大になるとムラが大きくなるので、末端水路1本の長さが大きくなることは防がなくてはなりません。
そのため支線排水路を300~600mごとに配置し、末端水路1本の長さを小さくします。
稲の生育段階や栽培管理作業に応じて排水路の水位調節を実施する場合は、各圃区の排水路末端か途中の落差50cm程度ごとに水位調節堰を設けることも検討しましょう。
まとめ
水田圃場内の「末端排水路・小排水路」に関する設計についてまとめました。
水田を造設すること、農業土木について詳しく学べる本について別でまとめてますので、興味があれば参照ください。
参考ページ:農業土木の勉強におすすめな参考書・問題集を紹介!