農業は1年に1作しかできないものが多く、圧倒的に経験・知識が不足してしまいます。
農業に従事し続けるには、勉強し常に新しい知見を学ばねばなりません。
勉強方法として、業界セミナー・先進地訪問・普及員による指導などありますが、私は本・業界誌・論文などを用いて勉強することが好きです。
その一環として『儲かる農業』を読みましたので、書評・要約のように綺麗に整理できていませんが、感想・勉強になった内容をまとめてみます。
目次
『儲かる農業』とは?
読みやすさ | |
---|---|
専門性 | |
役立ち度 |
- 著者:嶋崎 秀樹 (著)
- 出版社:竹書房
- 発売日:2009/7/24
- ページ数:193ページ
【目次】
- プロローグ 農業は儲かる!
- 第1章 「ど素人集団」農業に挑む―菓子メーカー営業マンとIターンの若者が始めた農業維新への挑戦
- 第2章 「一〇〇点+二〇〇点」儲かる農業の仕組み―農業に革命をもたらす「新・平成の農業」の全貌
- 第3章 間違いだらけの現代農業―なぜ農業は「儲からない」産業になってしまったのか
- 第4章 儲かる農家を育成する「水戸黄門システム」―人材育成はトップリバーのもうひとつの使命
- 第5章 若者よ、農業をめざせ!―農業を成長産業にするための新しい取り組み
- エピローグ けれど、農業はそんなに甘くない
『儲かる農業』は、脱サラから9年で年商10億円を達成し、儲かる農業の仕組みを創造し、日本に「農業革命」を引き起こす挑戦が示されている本です。
長野県に本拠を置く有限会社トップリバーには農家出身者がほとんどいない「ど素人集団」で、そんな農業法人が儲かっている理由が分かります。
村上龍氏に「農業のイメージが一変する」と、カンブリア宮殿でも紹介されています。
『儲かる農業』を読んで勉強になったこと

『儲かる農業』では、トップリバーの特徴が以下の5つにまとめられています。
- 市場出荷ではなく契約栽培がメイン
- 農地がすべてレンタル
- 生産部門の他に営業部門を持つ
- ど素人を集めた農業法人
- 社員の独立を支援
この特徴を紹介することを本書は軸に置いており、重要だと思ったところは章ごとにまとめてみます。
第1章 「ど素人集団」農業に挑む―菓子メーカー営業マンとIターンの若者が始めた農業維新への挑戦
菓子メーカーの営業マンとして働いていた著者は、仕事を辞め、妻の実家に戻り家業の青果出荷組合を手伝うことになります。
そこで、利益が全く残らない農業の構造的な問題的に気づき、産地直送など中間過程を飛ばして直接消費者に野菜を売り込むことを考えました。
基本的に卸売り市場には通さず、契約を結んだ取引先に対して直接出荷をすると、相場に左右されることなく収益も安定します。
しかし、決まった日に決まった数量の野菜を対応してくれる農家はおらず難航します。
1年目は農業経験者である農家の子弟を集めたが計画数量を確保できなかったが、2年目に農業を志す都会の若者を起用したところうまくいったのです。
ど素人集団の方が、固定概念がなく、モチベーションも高かったことが起因すると著者は考えています。
第2章 「一〇〇点+二〇〇点」儲かる農業の仕組み―農業に革命をもたらす「新・平成の農業」の全貌
既存の農家とトップリバーにおける組織上の最も大きな違いは、直接が外食・中食業者や納品業者に納めているので、営業部隊がいることです。
まず、営業が契約をまとめてきて「取引数量・取引価格・納入時期」が決まり、その契約に基づいて生産計画が作られ、生産部門が必死になって達成するための方策を考えます。
契約栽培のポイントは、「取引先が必要としているときに、必要なものを必要な量だけ供給する」ということです。
必要数量を必ず供給する姿勢に、大口顧客の直接取引を獲得するなどに至っています。
また顧客のニーズを満たすことが、他の顧客の獲得につながります。
生協に対してエコレタス(減農薬・除草剤不使用)を欠品させたことから、トップリバーで扱うレタスを100%エコレタスに変更したところ、これまで付き合いのない業者と取引できるようになったことが例として挙げられています。
第3章 間違いだらけの現代農業―なぜ農業は「儲からない」産業になってしまったのか
戦後の農地解放により、小作人に貸し与えられている小作地を政府が地主からただ同然の値段で買い取り、小作人にただ同然の値段で譲り渡してしまいました。
しかし、農地を細かくばらまいた結果、農業が儲からないものになりました。
トップリバーでは、「小作農の復権」として農地を持たずレンタルをしており、農地を集約して経営規模を大きくしています。
儲からないはずの農家には補助金を突っ込んで補償してもらえるので、農家が経営を成り立たせるための自助努力の機会も奪ってきました。
価格決定権もなく、農家と小売の取り分が同じである、安売り合戦をするなど構造上の問題がたくさんあり、それを改善して「儲かる農業」に構造的に変わっていくしかありません。
第4章 儲かる農家を育成する「水戸黄門システム」―人材育成はトップリバーのもうひとつの使命
トップリバーを支えてくれるのはたくましい若者達で、農家の生まれではないが農業に対して強い情熱を持ち、高い目標を掲げて努力してくれます。
嶋崎氏はそんな彼らを受け入れ、育て、立派に独立させることが役目であると言います。
トップリバーの研修は3つの段階に分かれています。
- 短期研修
研修期間:7日
給与:なし(生活費支給)
研修内容:定植・収穫などの基本的な作業
住居:事務所2階・アパート等
保険:なし
選考方法:担当者と面接 - 長期研修
研修期間:3〜6ヶ月
給与:日給5000円(生活費支給なし)
研修内容:定植・収穫などの基本的な作業
住居:事務所2階・アパート等
保険:なし
選考方法:短期研修終了後、担当者と面接 - 研修生(正社員)
研修期間:3〜6年
給与:初年度2116000円/年
昇級あり:年1回・10000円/月
ボーナス:年1回・100000円×正社員年数
研修内容:圃場の管理・企画
住居:基本的に自分で住む場所を見つける
保険:社会保険・厚生年金・労働保険
選考方法:長期研修終了後、担当者と面接
入社5・6年でトップリバーを退職し、独立農家としてやっていくことになり、独立後も望めばトップリバーの協力農家になれます。
独立までの5〜6年で最低500万円は貯めて独立しろという経済面での支援もあり、「儲かる農業」を育て上げています。
第5章 若者よ、農業をめざせ!―農業を成長産業にするための新しい取り組み
新規就農者を育成し、新しい若い世代を農業界に送り込んで、早く世代交代を進めなければいけないという理由として以下のことが挙げられています。
- 農業の活性化に新陳代謝が不可欠であること
- 農業人口を増やし、食料維持率を改善する必要があること
- 高齢農家が時代の要請に対応できなくなっていること
これらの背景から、昔と比べて補助金・支援金などもあり、新規就農しやすい環境が整ってきています。
エピローグ けれど、農業はそんなに甘くない
「農業は儲かる」「若者よ、農業をめざせ」と勇ましいことが述べられてきたが、最後の最後に厳しい現実が告げられています。
- 楽しい農園生活を夢見ている人には農業はできない
- 職を失ったから、とりあえず農業でもやってみるかという人には続かない
- 他人と関わるのが嫌だから、田舎で農業でもやってみようという人には向かない
現実の農業は、厳しい労働と長い拘束時間が求められ、自分の時間などまず持つことはできない。
トップリバーの研修生たちも「何度も逃げようと思ったことか」と告白しています。
それほど過酷な状況で続けていくことができるのは、農業に対する強い情熱と誇りがあるからです。
『儲かる農業』を読んで今後勉強すべきこと

『儲かる農業』を読んで、農業でスマールビジネスを立ち上げる方法を学べました。
より深く知識をつけるために、同分野の農業事業立ち上げの本をもっと読み進めます。
まず、経営計画書についての理解は重要だと思うので、経営計画に重きを置かれた就農本である『就農は「経営計画」で9割決まる 農業に転職!』を読んでみます。
また、本書の中で著者が参考にしたという『農で起業する!脱サラ農業のススメ』を読んでみます。
まとめ
『儲かる農業』を書評・要約のようにまとまっていないかも知れませんが、感想・内容を紹介しました。
まだまだ勉強不足ですので、これらからもしっかり勉強していきます。
最新の農業情報を得るためには、本だと出版までのタイムラグがあるので、農業の専門雑誌を読むほうがおすすめです。
毎月購入すると結構コストがかかってしまうので、ネットで農業雑誌・家庭菜園誌が読み放の「楽天マガジン」がおすすめですので、利用してみてください。