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玉ねぎの硫化アリル(イソアリイン)について

玉ねぎの硫化アリル(イソアリイン)について
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玉ねぎ・ニンニク・ネギ・ニラ等のユリ科野菜は、細胞質の中にR-システインスルホキシド(硫化アリル)という成分をもっています。

Rについては、ユリ科野菜間で組成が異なり、

  • ニンニク:アリルシステインスルホキシド(アリイン)が主成分
  • タマネギ:イソアリルシステインスルホキシド(イソアリイン)が主成分
  • ニラ:メチルシステインスルホキシド(メチイン)が主成分

となります。(Kubek et al. (2008) J. Chromatogr. A, 1212, 154-157, )

今回、玉ねぎの硫化アリルであるイソアリインについてまとめます。

硫化アリル(イソアリイン)とは?

硫化アリル(イソアリイン)とは

玉ねぎに含まれる硫化アリル(イソアリイン)は、硫黄化合物でシステインスルフォキシド類に分類されるファイトケミカルです。

イソアリイン自体にも抗酸化作用があるが、この成分から生成されるチオスルフィネートに注目したい。

植物組織が破壊されると、液胞中に存在する酵素アリイナーゼ(C-Sリアーゼ)がイソアリインに作用し、スルフェン酸(sulfenic acids)を生成します。

スルフェン酸は非常に反応性の高い物質であり、チオスルフィネート(thiosulfi nates)を生成し、多様な含硫成分の生成が進みます。

アリシンは多様なチオスルフィネートのうちの一つである。

チオスルフィネートは血液を固まりにくくするので血栓の生成を抑え、血液サラサラ効果があります。

また、消化液の分泌を助けて食欲を増進する作用をはじめ、新陳代謝・神経の沈静化に必要なビタミンB1の吸収と活性化を促す作用があり、疲労回復効果もあります。

細胞を破壊すればするほど酵素が反応するため、「おろす>みじん切り>繊維に垂直に切る>繊維に沿って切る」となって、調理に合わせてできる限り細胞を壊すように切ります。

また、アリイナーゼの酵素反応は緩やかに反応しますので、切ってから調理または生で食べる前に、10分おくと良いことが推奨されている。(Song K, Milner JA. The influence of heating on the anticancer properties of garlic. J Nutr. 2001;131(3s):1054S-1057S.)

玉ねぎを切った時に涙が出るのは、イソアリインが原因

玉ねぎ カット

玉ねぎを包丁で切ったときの催涙性の成分は、催涙因子(Lachrymatory Factor)と呼ばれ、タマネギのイソアリインから生成される物質のひとつで、(Z, E)-propanthial S-oxideとされています。

イソアリインにアリイナーゼが作用し、1-propenyl sulfenic acid(PSA)が生成されます。

PSAは酵素(lachrymatory factor syntase: LFS)の作用により催涙因子を生成します。(今井真介、柘植信昭 (2005) 涙の出ないタマネギを作出する鍵となる酵素の発見.バイオサイエンスとバイオインダストリー,63, 101-102.)

タマネギを加熱すると甘くなる理由は、プロピルメルカプタンではない

玉ねぎ 加熱

昔、タマネギを加熱すると甘みが増すことを、イソアリインがプロピルメルカプタン(プロパンチオール)に変わることから生ずるという説がありました。

プロピルメルカプタンは、胃の粘膜を保護して、胃の血流を増やす働きがあります。

しかし、プロピルメルカプタンは甘味のない成分であることが示される研究が発表されるなどして否定されました。(時友裕紀子、山西貞 (1993) 加熱タマネギの甘いフレーバーについて.日本家政学会誌,44, 347-353.)

ではなぜ甘く感じるかというと、生タマネギ中には遊離糖が6%程度存在し、加熱による水分の蒸発による糖濃度の上昇・組織の破壊や軟化によって甘味を強く感じるものと推測されています。

水につけるとイソアリインは流れ出る

玉ねぎ 水にさらず

水につけることで辛味を抜くことででき、食べやすくすることができます。

また、水につけると皮が柔らかくなってむきやすくなります。

しかし、辛味成分の正体であるイソアリインは水溶性で、辛味を和らげた代わりに栄養を損失してしまいます。

洗うときはサッと洗い、水につけることは避けましょう。

まとめ

タマネギ

今回、玉ねぎの硫化アリルであるイソアリインについてまとめました。

タマネギの栄養・効能に関しては、下記記事にてまとめていますのでご参照ください。

農家による経験・知恵によるところもありますが、栄養をしっかり摂るためには正しい情報・データも必要なため、書籍・論文などの文献で勉強しました。

栄養について勉強をした際に使用した書籍をまとめましたので、興味がありましたらご参照ください。

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