登山ウェアの素材には、保温性・軽量性・速乾性などを向上させるためにダウン・フリース・化織綿(ポリエステル)の3つが主に使われています。
登山者は目的や環境に応じて、これらの素材を組み合わせたウェアの選択が必須です。
より快適により安全に行動するためにも、本記事がその一助になれば嬉しく思います。
目次
ダウン・フリース・化織綿(ポリエステル)の比較
特徴 | ダウン | フリース | 化織綿 (ポリエステル) |
---|---|---|---|
素材 | 天然素材 | 人工素材 | |
軽さ | ◎ | △ | ○ |
圧縮性 | ◎ | ○ | ○ |
保温性 | ◎ | ○ | △ |
通気性 | ○ | ◎ | △ |
湿気への強さ | △ | ○ | ◎ |
乾燥性 | △ | ○ | ◎ |
用途 | アウターレイヤー | ミッドレイヤー ベースレイヤー | ベースレイヤー ミッドレイヤー アウターレイヤー |
ダウンは、軽量で圧縮性に優れ、非常に保温性がある素材です。
適切な洗濯と乾燥など手入れ大変で、撥水加工などメンテナンスが欠かせません。
フリースは、高い通気性を持ちながら、バランスのよい素材です。
オールシーズン使用可能で、最近は静電気対策もされていますが、防風性が低いためミッドレイヤーに使われます。
化織綿(ポリエステル)は、耐久性が良く湿気に強い素材です。
通気性が低いので、速乾性の良いものを選ぶ必要があります。
3つの詳細な情報については、下記にて素材別でまとめます。
ダウン

ダウンは、優れた保温性と軽量性から、登山用ウェアの中でも特に人気の高い素材です。
ダック(アヒルの羽毛)・グース(ガチョウの羽毛)の2種類が主に用いられ、グースダウンの方が一般的に高品質とされています。
撥水加工を施したダウンなら、濡れても通常のダウンより性能が低下しにくいので、
ダウンの選び方として、機能面ならフィルパワー(FP)、環境面ならレスポンシブル・ダウン・スタンダード(RDS)が参考になる指標です。
また、ダウンとフェザーの割合も重要で、一般的にダウン90%・フェザー10%程度が良質とされています。
フィルパワー(FP)
フィルパワー(FP)は、ダウン製品の品質や保温性を示す重要な指標で、1オンス(約28.4グラム)のダウンを一定の圧力下で測定した際の体積を立方インチで表したものです。
数値が大きいほど、ダウンの品質が高く保温性に優れていること示し、以下のようなざっくりとした目安になります。
- 600~700FP:低品質、街中用
- 700~800FP:標準的な品質、登山でも利用可能
- 800~900FP以上:高品質、高山などで利用可能
- 900FP以上:プレミアム品質、雪山などアルパインで利用可能
1,000FPに達するダウンも販売されており、ダウンの限界をどんどん更新する技術開発が行われています。
レスポンシブル・ダウン・スタンダード(RDS)
レスポンシブル・ダウン・スタンダード(RDS)は、ダウンやフェザーの調達における動物福祉とトレーサビリティを保証する国際的な自主規格です。
RDSの認証を取得するための主な要件は以下の通りです:
- 動物福祉の確保
・アヒルやガチョウの人道的な扱いを保証する必要があります。
・生きた鳥からの羽毛採取や強制給餌など、非人道的な扱いを禁止しています。 - トレーサビリティの確立
・原料の出所を追跡できるシステムを構築する必要があります。
・認証を受けた農場からの原料調達を確認できるようにします。 - サプライチェーン全体の認証
・農場、屠殺場、加工工場、最終製品の製造まで、サプライチェーン全体が認証の対象となります。 - 第三者機関による審査
・認定された認証機関による審査を受ける必要があります。 - 基準の遵守
・RDSが定める動物福祉やトレーサビリティに関する基準を満たす必要があります。 - 文書化と記録
・認証に必要な文書や記録を適切に管理・保管する必要があります。 - 継続的な改善
・定期的な審査を受け、基準を継続的に満たし続ける必要があります。 - 製品表示の規則遵守
・RDS認証製品として表示する場合は、100%認証された原料を使用する必要があります。
動物福祉以外にも、リサイクルダウン・トレーサブルダウン・人工ダウンなど環境に配慮した製品作りも近年注目されているのでぜひ確認してみてください。
フリース

フリースは、合成繊維で作られた繊維の起毛で体温をキープする素材です。
通気性に非常に優れ保温性や透湿性などバランスが良いため、ベースレイヤーとアウターレイヤーの間の中間層(ミッドレイヤー)に使われます。
フリースには、様々な種類があります。
【フリースの種類】
- マイクロフリース
- グリッドフリース
- ハイロフトフリース(パイルフリース)
- ストレッチフリース
- ウインドプルーフフリース
- ポーラテックフリース
- グラフェンフリース
マイクロフリース
マイクロフリースは、通常のフリースよりも細い繊維を使用して作られたフリース素材ですです。
極細の繊維のため非常に軽く、薄手に作れるので通気性・速乾性が優れています。
逆に、通常のフリースと比べると摩耗しやすく、保温性はやや劣ります。
グリッドフリース
グリッドフリースは、表面に格子状(グリッド)の凹凸がある特徴的な構造を持つフリース素材です。
凹部分は暖かい空気を閉じ込め、凸部分から余分な熱を逃がしオーバーヒート防ぐので、効率的に体温を保持できます。
また、湿気の通り道ができ透湿性に優れています。
ハイロフトフリース(パイルフリース)
ハイロフトフリース(パイルフリース)は、長い毛羽(パイル)の起毛加工が施された素材です。
通常のフリースよりも厚みがあり、動物の毛皮のような見た目から分かるように保温性が非常に優れています。
圧縮性や重量面では通常のフリースよりも劣る点もありますが、寒冷地に適した素材です。
ストレッチフリース
ストレッチフリースは、ノーマルフリースに伸縮性のある素材を混紡して作られたフリース素材です。
体の動きに追従し、岩場などで可動部の快適さを向上させます。
フィット感が高いため空気層が少なくなり、通常のフリースよりも保温性が若干低下する場合があります。
ポーラテックフリース
ポーラテック(Polartec)フリースは、アメリカのポーラテック社がポリエステル繊維を特殊な技法で開発した、高機能フリース素材です。
特性を活かした様々なバリエーションが展開されています。
- ポーラテックアルファ:軽量性と保温性を両立
- ポーラテックアルファダイレクト:耐摩耗性の向上
- ポーラテックサーマルプロ:保温性の向上
- ポーラテックハイロフト:さらに保温性の向上
- ポーラテックパワーグリッド:格子状の凹凸構造
- ポーラテックパワーストレッチ:伸縮性の向上
グラフェンフリース
グラフェンフリースは、炭素化合物を練り込んだ繊維で作られたフリース素材です。
遠赤外線効果と優れた熱伝導性により、人体から発せられる熱を効果的に保持できます。
逆に高温時にはクーリング効果もあるので、環境温度が変化しやすい環境に適しています。
化織綿(ポリエステル)
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化織綿(ポリエステル)は、ポリエチレンテレフタレート(PET)ポリマーを用いた合成繊維素材です。
軽量で丈夫で吸水速乾などの機能を持ち、防臭・抗菌機能など様々な効果をもたせることができます。
汗を吸収して素早く乾かすベースレイヤーに最適ですが、特殊な加工を施した素材を活かしたアウターレイヤーも多くあります。
- PRIMALOFT®(プリマロフト)
- CLIMASHIELD®(クライマシールド)
PRIMALOFT®(プリマロフト)
PRIMALOFT®は、米軍向けに開発された合成断熱材で、ダウンの代替品として設計された高機能素材です。
湿気に強い化繊維インシュレーションとして非常に人気があります。
以下のようなグレードの違いがあり、 Activeが付くと通気性等運動に適した素材になります。
- PrimaLoft Gold: 最高性能グレード(550FP相当)
- PrimaLoft Silver: 中間グレード(450FP相当)
- PrimaLoft Black: エントリーグレー(350FP相当)
CLIMASHIELD®(クライマシールド)
CLIMASHIELD®は、プリマロフトに続く、次世代の中綿としてアメリカ軍に現行採用されている素材です。
厳しい寒さの環境下で高いパフォーマンスを発揮できるように、耐久性が高く多湿な環境の中でも高い保温性をキープします。
使用用途に合わせたラインナップで分かれています。
- APEX: 最も軽量で熱効率の高いモデル
- COMBAT: 過酷な環境向けに開発された軍用モデル
- CONTUR: 柔らかく、4WAYストレッチ性のあるモデル
- PROTECT-FR:難燃性をもたせたモデル
まとめ
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ダウン・フリース・化織綿(ポリエステル)の素材の違いを紹介しました。
目的や環境に応じて、ダウン・フリース・化織綿(ポリエステル)を適切に組み合わせることで、より快適で安全な登山になるでしょう。
自然の中で最高のパフォーマンスを発揮し、忘れられない思い出を作りましょう。