研究のための重要なデータを収集するために、現地調査(フィールドワーク)をしています。
研究対象地によっては、致命的な危険と隣り合わせな場所で調査を行います。
調査者(フィールドワーカー)は、研究者・科学者・探検家・冒険家・登山家・写真家などの経験・知識を学んで、「しっかり事前準備をすることで危険を避けなければなりません。
今回は、フィールドワークで遭難した場合の「メンタルコントロール」についてまとめます。
フィールドワークで遭難した場合の「メンタルコントロール」について
フィールドワークでは突発的な事故・災害によって、程度の差はあれど遭難してしまう可能性はあります。
遭難とは生命に関わるような災難(危険)に遭うことで、フィールドワーク時では「道迷い・滑落、転落・天候の悪化・傷病」です。
令和4年度の山岳遭難者3,506人のうち、死者301名行方不明者26名を除く残り3,179名(80.7%)が生きて発見されています(警視庁:令和4年における山岳遭難の状況)。
そのため食料・水・救急道具などの準備が万全であれば、困難に対して1つ1つしっかりと対処すれば基本助かるのです。
しかし遭難時においては自分を見失うほどのパニックを起こしてしまっては適切な対処ができませんので、錯乱状態・方向感覚喪失などに陥らないように、心を沈める必要があります。
令和4年度の山岳遭難の原因1位は道迷い(36.5%)ですので、パニックを沈めて冷静に正しいルートに戻れることが大事です。
低山でもパニックになる事例(YAMAP:登山遭難体験【低山・油断編】低山で道迷い、夕暮れでパニックに)もありますので、メンタルコントロールの術を知っておいて損はありません。
冷静な判断力を維持して生き残るためには、以下のような思考・行動が求められます。
【フィールドワークで遭難した場合の「メンタルコントロール」】
- すぐ行動せず、パニックや発狂を抑えるためその場で休憩
- 優先順位をつける
- リーダーを決める(グループでいる場合)
①すぐ行動せず、パニックや発狂を抑えるためその場で休憩
遭難にあったと自覚したとき、状況を打開しようと頑張ろうという「焦り」が入ると、副腎ホルモンが分泌されます。
脈拍は上がり、呼吸は速く浅くなり、糖代謝が促進されて、視野が狭くなる傾向です。
極度にこの症状が加速すると、手足が震え、パニック・発狂を起こしてしまいます。
パニック状態でむやみやたらに行動すると、転倒・滑落などの二次被害を起こしかねません。
こうなってしまわないように、いきなり状況を打開しようとせず、その場で休憩しましょう。
水を飲み、行動食を食べ、深呼吸をするなど落ち着くことが大事です。
優先順位をつける
素直に状況を受け入れ、優先順位をつけて行動をすることで、冷静に対処することができます。
【遭難した場合の優先行動】
- 「S・T・O・P」を実践
- 飲水の確保
- シェルターの確保
人間が飲まず食わずで生き延びられる限界が72時間であり、災害救助では「72時間の壁」と表現されています。
水・シェルターは優先されますが、食は優先されません。
人の生存の目安 “rule of threes”(3の法則)と呼ばれ、以下の表でまとめられてます。
3 seconds without blood | 血液(血流)なしでは3秒間 |
3 minutes without air | 空気(酸素)なしでは3分間 |
3 hours without warmth/shelter | 保温(体温保持)なしでは3時間 |
3 days without water | 水(飲水)なしでは3日間 |
3 weeks without food | 食糧(摂食)なしでは3週間 |
3 months without human company | 同行者なし(孤立)では3ヶ月間 |
そのため、飲水の確保・シェルターの確保ができていれば、「ビバークしている間に捜索されるだろう」と落ち着きましょう。
S・T・O・P
「 S・T・O・P」とは、Stop(やめる)・Think(考える)・Observe(観察する)・Plan(計画する)を表しており、心を落ち着かせるための指針です。
- Stop:体を動かすことをやめて、座って呼吸を整える
- Think:現状を把握して、対処方法を考える。
- Observe:周囲環境・仲間・ケガなどの現状把握をする。
- Plan:効率的な戦略を立てる。
リーダーを決める(グループでいる場合)
遭難時において孤立せずに集団状態を維持できている場合、知識・経験が増え、仕事を割り振ることができるので、助かる可能性はとても高いです。
しかし困難な状態に慣れていない場合、士気の低下・怒り・あきらめなどマイナス感情に支配され、グループ内で不調和が生まれるなどの集団行動のマイナス面が浮き彫りになります。
そこで、リーダを決めて指揮系統をはっきりさせることで、チームワークを高めることができます。
リーダには、リーダーシップを発揮でき、仲間を励まし、ポジティブな感情を掻き立てる人物を選びましょう。
まとめ
フィールドワークで遭難した場合の「メンタルコントロール」についてまとめました。
十分な準備をしてフィールドワークへ挑み、良い研究に繋げていきたいと思います。
危険に遭遇しないのが1番ですが、危険対処に重要になるサバイバルキットについてもまとめましたので御覧ください。
また、事前準備として必要な知識の習得に用いた書籍をまとめましたので、参考にしていただければ幸いです。