平成23年(2011年)東日本大震災をもたらした東北地方太平洋沖地震により、地震前に整備された緯度経度・標高が現状に合わない状態になりました。
そのため、国土地理院は、三角点1846点・水準点1897点の現地測量結果を用いて、1都19県における三角点位置43312点・水準点標高1897点の再計算を行い、改定値を定めました。
この測量成果を基に「測地成果2000」から「測地成果2011」に改め、基準点成果表の書式も変更しました。
日本緯度経度原点・日本水準原点が同時に改正されるのは初めてであり、測地成果2000から測地成果2011への移行について学ぶ必要があります。
東北地方太平洋沖地震による具体的な影響
原点位置が移動したことにより、原点の位置と測量法施行令第2条で規定する原点数値と乖離が生じました。
日本経緯度原点は約27cm東へ、日本水準点は約2.4cm沈下しました。
この乖離を集成するために、原点数値を改正する必要があります。
改定値の求め方
引用:国土地理院HP
2011年3月14日に1都15県の「測地成果2000」の公開が停止になりました。
その後、電子基準点の改定に伴い、2011年5月31日に追加で4県の「測地成果2000」の公開が停止になりました。
2011年10月31に1都19県の三角点・水準点の測量成果を「測地成果2011」として公開されました。
日本経緯度原点の改定
- 国際観測により、つくばVLBI局の2011年5月24日現在の位置を測定
- つくばVLBI局の位置を基準に、日本経緯度原点・周囲の電子基準点を測定
日本経緯度原点の改定値は以下のようになります。
経度は東経139度44分28秒8759→東経139度44分28秒8869(+0.011秒)
緯度は北緯35度39分29秒1572で変更なし
日本水準原点の改定
- 日本水準原点と定期的に水準測量を行っている油壷験潮場の地震前の標高を算出
- 油壷験潮場の地震前の標高を基に、水準測量により日本水準原点を測定
- 精度検証のため、別の水準路線により検測
日本水準原点の改定値は以下のようになります。
東京湾平均海面上24.4140m→24.3900m(-0.024m)
電子基準点の改定
全国1300箇所に設置されたGNSS連続観測点基礎部に電子基準点付属標が埋設されています。
この電子基準点付属標の高さは、水準点を既知点として水準測量で求めており、二級水準点相当の精度で定められています。
地震により、電子基準点付属標の高さが変化したことにより、東日本を中心に電子基準点364点の測量成果公表が停止し、最新のVLBI・GPS測量により、成果を計算しました。
VLBI(Very Long Baseline Interferometry:超長基線電波干渉法)は、数十億年の宇宙彼方にある電波星(準星:クエーサー)から放射される電波を地表の2地点A及びB局で同時観測し、その到達時間の差から受信アンテナ間の相対位置関係(基線ベクトル)を高精度で決定する技術です。。
計算の過程で、測量成果公表停止地域の境界付近の精度が確保されていないことが判明し、追加で、富山県・石川県・福井県・岐阜県を含めて改定しました。
測地成果2000から測地成果2011へ
参照:国土地理院HP
地震に伴う変動に小さい北海道・西日本地域において、従来通りの測地成果2000で設定されたITRF94のフレームを採用しています。
フレームは地球上の位置を測るための物差しとして使われるもので、地球の重心位置や軸の向きなどによって決まります。
東日本で改定した新たなフレームのITRF2008とITRF94の2つが混在しています。
そのため、この異なるフレーム間で数値に差がありますので、JGD2000のデータをJGD2011に補正するには、「東北地方太平洋沖地震補正パラメータ」を用いて、「PatchJGD」で座標値補正を使用します。
引用:国土地理院HP
PatchJGDを用いて改算を行った場合、公共測量の作業規程の準則第13条に基づく点検測量を行いますが、点検測量の結果次第で改測を実施する必要があるため、取り扱いには注意が必要です。
まとめ
東日本大震災をもたらした東北地方太平洋沖地震により、測量成果が更新されました。
今後、地震によって測量成果が更新されることがあります。
紹介させて頂いた知識は測量士・測量士補の試験にも出てくるほど重要な知識です。
参考までに、勉強に使用した書籍をまとめさせていただきます。