棟梁点検

鋼橋梁の変状(塗装劣化・腐食・疲労・連結部の変状)について

変状の種類は、「欠陥・損傷・劣化」があります。

欠陥は、構造上の不具合で、建設当初において設計性能を満足していないと判断されるものです。

損傷は、建設当初に比べて性能が低下しているが、以降の進行の程度が小さいものです。

劣化は、ある時期に顕著となる異常で、時間の経過とともに進行するものです。

これらの変状について、まとめてみました。

鋼橋における変状

鋼橋における変状は

  • 塗装劣化
  • 腐食
  • 疲労
  • 連結部の変状

の4種類に大きく分けられます。

塗装劣化

塗装劣化は、塗装の劣化により防錆性能が低下することです。

塗装は、鋼材を被覆することで水と酸素から遮断し、腐食を防止します。

しかし、塗膜が時間の経過とともに劣化するので、適切な時期に塗装の塗り替えを行わないと防食機能が低下します。

「紫外線劣化」「下地処理(ケレン)の不具合による劣化」がある。

現象症状原因
ながれ塗膜が波状厚塗り、過希釈、低温作業
ちぢみ塗膜がシワ状下塗り未乾燥、過度な厚塗り
ピンホール針で刺すような細かい孔スプレー時の空気の巻き込み
すけ下塗りが透け上塗りの膜厚不足、過希釈、色差
ふくれ塗膜が持ち上がり膨れ結露面への塗布、未乾燥
はがれ下塗りと上塗りの間のはがれ塗膜間の付着力不足
ひびわれ塗装に割れ下塗りの未乾燥、過度な厚塗り
白化塗膜が白濁り紫外線、低温作業

紫外線劣化

紫外線劣化は、紫外線により塗装の分子構造が破壊される症状です。

棟梁全体に変状があるのが特徴で、白亜化が発症して、はがれ・われなどに進行します。

塗装表面の樹脂分が紫外線・酸素・水分などにより分解し顔料分が粉となって現れます。

特に、エポキシ樹脂系の塗料は、紫外線に弱く、エポキシ樹脂塗料を上塗りとした場合やさび止め塗料で暴露した場合は注意が必要です。


下地処理(ケレン)の不具合による劣化

ケレン不具合・不十分が原因で、局所的な変状が特徴です。

気泡・内包さびなどが発症して、はがれなどに進行します。

塗装をする前に壁に付着したサビ・剥げかけている塗膜などの除去(ケレン掃除)が適切でがないことが原因になります。

ケレン掃除には1~4種があり、それぞれ状況に応じて使用する種類が違います。これらを適切に行わず、汚れを残した状態で塗装すると、腐食防止機能が低下したり、劣化が促進されます。

種類道具使う状況
4種ケレンサンドペーパー特に汚れ等がない場合
3種ケレンワイヤーブラシ
ナイロンブラシ
サビや浮き上がった塗膜がある場合
2種ケレンサンダー
電気工具
4種・3種ケレンで落とせない汚れがある場合
1種ケレン剥離剤
化学薬品
電気工具で落とせない汚れがある場合

塗装劣化の対策

橋梁全体に一様に進行することは少なく適切な時期に塗装の塗り替えを行うことが良いです。

しかし、橋梁において全面塗替え塗装することは、予算等の制約がある中では難しい。

板厚減少を伴う腐食は桁端で発生することが多いことので、桁端などを優先的に塗装する必要がある。

また、伸縮継手・排水枡・コンクリート床版からの漏水により著しい劣化を生じている箇所に対して、部分塗り替え塗装を行う必要があります。

塗り替える場合、さび・付着した塩化物イオンを完全に除去することは困難であり、腐食のあった部位の塗膜の耐久性は、新設時と比較して大きく劣っています。

早期に塗膜の再劣化が始まることがある。過去に腐食のあった部位では、塗膜の劣化と腐食の進行により、比較的短い間隔で何度も塗替えが行われています。


腐食

腐食は、板厚減少により断面性能が低下することです。

腐食の影響は以下のようになります。

  • 断面減少:耐荷力の減少・発生応力の増加
  • 表面に凹凸の発生:応力の偏り
  • 腐食疲労:亀裂部が腐食し、亀裂の促進

腐食は、鉄の酸化反応、鉄がさびることを指します。

鉄と水と酸素による化学反応です。

この化学反応の促進因子は、温度・湿度・亜硫酸ガス・自動車排気ガス・海塩などの電解質があり、これらの影響も受けます。

2Fe+O2+2H2O→2Fe(OH)2
2Fe(OH)2+O2+2H2O→2Fe(OH)

全面腐食

全面腐食は、塗装劣化などが生じて全面が均一に腐食する現象です。

全面腐食はゆっくり進行するため、短時間で構造物に重大な悪影響を与えることはありません。

塗装劣化が生じやすい塩分の飛来する海岸部などで生じやすいです。

異種金属接触腐食

水分などの電解質が存在する状態で、異なった種類の金属が接触すると腐食電池が形成され、アノード側が腐食します。

酸化反応をアノード反応、還元反応をカソード反応と呼びます。

亜鉛メッキと鋼の場合は、亜鉛メッキが酸化反応を起こし腐食します。

ステンレスと鋼の場合は、鋼が酸化反応を起こし腐食します。

普通鋼にステンレスボルトを用いた場合に、ボルトの周辺の普通鋼が著しく腐食します。

局部腐食

風通りが悪く雨水が停滞しやすい桁端部・箱桁・鋼製橋脚内部などの結露水の帯水により、局部でのみ腐食が起きます。

伸縮装置の排水機能・排水施設の不具合などにより、漏水・滞水・土砂堆積が発生し、それが主な原因になます。

路面から漏水が流れ込む場合、劣化促進因子の塩分を含む凍結防止剤が多量に含まれる更に厳しい腐食環境におかれることもある。

塗膜劣化に伴う表面的なさびが発生している場合に比 べて腐食の進行が早く、橋梁の耐荷力に大きな影響を及ぼします。

腐食の確認方法

目視でさびなども確認できますが、内部の腐食を見落としがちになるため、詳細調査を行います。

詳細調査では、腐食量を板厚を測定することで定量的に調査します。

  • 機械式計測法
  • 超音波法
  • レーザー法
  • 画像計測法
  • レプリカ法

疲労

疲労は、繰返し荷重を受けて鋼材の強度が減少し、亀裂発生により荷重伝達性能が低下することです。

主に構造的な応力集中部である断面急変部や溶接部に生じやすいです。

亀裂が進展することで、部材が破断することがあります。

疲労発生要因原因
荷重増大大型車両の増大(重量、台数)
振動現象照明柱などに対する風、車両走行
設計不良構想ディテールの不良
施工不良溶接不良
管理不良腐食・劣化による

連結部の変状

連結部の変状は、連結部の断面性能が低下し、荷重伝達性能が低下することです。

高力ボルトの遅れ破壊

遅れ破壊とは、高強度鋼部品が一定の静的な引張荷重が加えられている状態で、ある時間が経過したのち、外見上ほとんど塑性変形を伴わずに突然脆性的に破壊する現象です。

静的疲労破壊とも呼ばれます。

昭和54年以前は、F11Tの高力ボルトが使用されていました。現在使用されているF10Tの高力ボルトでは、発生していません。

遅れ破壊によるボルトの破断や脱落が起こります。

高張力鋼特有の遅れ破壊の可能性があり、点検や取替えなどの対策が必要です。

リベット接合

リベット接合は、昭和40年までは主要な部材の接合方法でしたが、現在ではボルト接合が主流になるにつれて使われることが無くなりました。

リベット接合は長期間供用されており、変状を受けていることが多い。

リベット接合の変状としてリベットの弛緩・破断・腐食がある.リベットが弛緩や破断した場合には、高力ボルトに置き換えられることが多い。

リベットが腐食した場合には、そのまま供用されることが多い.

まとめ

橋梁の変状についてまとめさせていただきました。

橋梁の点検では、棟梁の変状について学び、変状に適した改善が必要になります。

実際に使用したテキストなどはこちらでまとめさせていただいております。良ければ参考までにご覧ください。

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参考文献

  1. 日本道路協会編、鋼道路橋防食便覧.丸善出版
  2. 道路橋の定期点検に関するテキスト.国土技術政策総合研究所
  3. コンクリート橋・複合橋保全マニュアル (PC技術規準シリーズ).技報堂出版
  4. 新編 橋梁工学.共立出版
  5. 道路橋示方書・同解説〈1〉共通編.日本道路協会
  6. 道路橋示方書・同解説〈2〉鋼橋・鋼部材編.日本道路協会
  7. 道路橋示方書・同解説〈3〉コンクリート橋・コンクリート部材編.日本道路協会
  8. 道路橋示方書・同解説〈4〉下部構造編.日本道路協会
  9. 道路橋示方書・同解説 5 耐震設計編.日本道路協会