田んぼの用水は「幹線用水路→支線用水路→末端用水路」を経て供給され、排水は「末端排水路→支線排水路→幹線排水路」を経て排出されます。
「水口・水じり(落水口)」は、耕区と用排水路を繋ぎ、円滑に用排水を導くためにあります。
今回は水田内の「水口・水じり(落水口)」に関する設計についてまとめます。
「水口」の設計について
水口は、末端用水路(小用水路)から各耕区へ取水するための入り口(取水口)です。
用水路からの水の流入量を調節し、過不足なく迅速に水を供給できなければなりません。
水口の設計を行うために、以下のことについて順に検討する必要がある。
【水口の設計手順】
- 水口の設置数・配置
- 水口の断面
- 水口の構造
①水口の設置数・配置
水口の設置数は各耕区ごとに1箇所が原則ですが、水口間隔が50m以上の場合は水回りを早めるために設置数を2箇所以上にします。
水口の設置が1箇所の場合は、水口の位置は辺の上流側に設けるのが基本です。
水口の敷高は、田面洗掘防止のため田面から0~10cmの範囲で設けます。
ただし急傾斜地水田では、水口の敷高と田面の落差が最小の位置に設置することや、管水路にして落差を解消するなど、工夫が求められます。
②水口の断面
水口の断面を決めるには「水口の幅」を決める必要があります。
水口幅は、対象耕区を24時間で必要水量(一般的な代かき用水量200mm)を灌水できる幅です。
幅が大きすぎると水口の開閉操作が不便になるので、水口幅は50cm以内にします。
基本的には水路の高さが決まっていれば、簡単に手に入る既製品の大きさが必要水量以上であれば、経済合理性を考えて既製品幅を用いられることが多いです。
ただ、水稲の倒伏・田面洗掘を起こさないように注意が必要になります。
水口付近の許容流速は約40m/sが定説で、水路幅・末端水路の最大水位・田面の落差を用いて許容流速未満であることを確認しましょう。
③水口の構造
水口の構造は、コンクリートなどの固定構造を基本し、角落し・水門形式・分水栓などがあります。
また、都市化した農村地域の場合、ゴミなどが水田内に流入しないようにネットを設置することもあります。
角落しは、縦溝をつけて数本の角材を落とし入れ、水流を調整したりせき止めたりする装置です。
水門は、角材を落とし入れるかわりに、スチール製などの水門を上下にすることで簡単に給水を調整できます。
手動が多くを占めますが、IOTを導入して自動でも給水が可能です。
分水栓は、弁の開閉で給水の調整ができ、安価に設置可能です。
外側・内側どちらにもつけることができます。
ただ、直接水路に手を入れることができる浅い水路にしか適用ができず、開閉に労力が必要になるので、弁開閉レバー付きのものにしましょう。
「水じり(落水口)」の設計について
水じり(落水口)は、各耕区から末端排水路(小排水路)へ排水するための排水口です。
中干しなど落水させる際に、滞留することなく迅速に排水できなければなりません。
水じりの設計を行うために、以下のことについて順に検討する必要がある。
【水じり(落水口)の設計手順】
- 水じり(落水口)の設置数・配置
- 水じり(落水口)の断面
- 水じり(落水口)の構造
①水じり(落水口)の設置数・配置
水じりの設置数は各耕区ごとに1箇所が原則ですが、水深が浅くなった場合の田面排水を考慮して、水じり間隔が50m以上で設置数を2箇所以上にします。
水じりの設置位置が1箇所の場合は、辺の下流側に設けることが一般的です。
水田畑の場合は、明渠による排水等も考慮して数と配置を決定します。
水じりの敷高は田面より5~10cm下げるのが原則だが、畑作導入をする場合15~20cmに下げます。
②水じり(落水口)の断面
水じり幅が大きすぎると水じりの開閉操作が不便になるので、水口幅は50cm以内にします。
基本的には水路の高さが決まっていれば、簡単に手に入る既製品の大きさが必要水量以上であれば、経済合理性を考えて既製品幅を用いられることが多いです。
③水じり(落水口)の構造
落水口の開閉構造は、田面湛水深のコントロールや大雨時の田面貯留の必要性等を考慮して、越流方式にします。
畔に設けた単なる欠口でなく操作の便利な構造にするため、角落し・ゲートなどを用います。
IOTを導入することで、湛水深を自動的にコントロールすることもできます。
水じりの末端排水路側は、落差工型式にするのが一般的です
まとめ
水田内の「水口・水じり(落水口)」に関する設計についてまとめました。
「のうぎょうとぼく」の中では、農業土木に関する豊富な記事を書いています。
水田を造設すること、農業土木について詳しく学べる本について別でまとめてますので、興味があれば参照ください。
参考ページ:農業土木の勉強におすすめな参考書・問題集を紹介!