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水路の水理設計における余裕高の計算方法について

水路の水理設計における 余裕高の計算方法について
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水路断面の設計は、水理上の安全性を確保するため、設計流量に対する水面に余裕高を加えて通水断面を決定します。

今回、この余裕高の計算方法についてまとめました。

余裕高について

余裕高

余裕高は、波を打ったりなどして、計画高水位以上の水位になったとしても、安全に水を流すために必要な高さとなります。

余裕高とは、設計流量に対する水面(H.W.L)から、

  • 擁壁型水路ではフルーム・擁壁・ブロック積・石積・コンクリート二次製品等既製品・矢板の天端まで
  • ライニング水路ではライニング頂まで
  • 暗きょ断面では頂面まで
  • 無ライニング水路では両岸水路天端まで

の高さになります。

計算式による水路余裕高の算出方法について

排水路

標準的な水路余裕高の算出方法は、水路のタイプによって大きくことなります。

  • 台形断面水路(無ライニング・ライニング水路)
  • 擁壁型水路(フルーム、擁壁水路、既製品水路等)
  • トンネル・暗渠
  • 射流・急流水路

台形断面水路(無ライニング・ライニング水路)

台形断面水路(無ライニング・ライニング水路)では、以下の式により余裕高を計算します。

Fb=0.05d+βhv+hw

  • Fb:余裕高(m)
  • d:設計流量に対する水深(m)
  • β:流速水頭の静水頭への変換係数(0.5~1.0)
  • hv:流速水頭(m)
  • hw:水面動揺に対する余裕(0.05~0.15)

擁壁型水路(フルーム、擁壁水路、既製品水路等)

擁壁型水路(フルーム、擁壁水路、既製品水路等)では、以下の式により余裕高を計算します。

Fb=0.07d+βhv+hw

トンネル・暗渠

トンネル・暗渠では、一般的な「円形・馬蹄形」のトンネル・暗渠の余裕高は、原則①②のいずれか大きいほうの高さを余裕高とします。

  1. 設計流量に対してd1/D1=0.8~0.83
  2. 用水で洪水を流下させる場合

    d2/D2=0.9~0.93
  • d:水深
  • D:高さ

これは、d/D=0.8で最大流速、d/D=0.9で最大流量を示すからです。

射流・急流水路

急流工のような急勾配水路の余裕高として、確立された設定方法はなく、総合的に判断により設定する必要があります。

  1. 空気流入量を加味しない水深や大型急流工の場合、空気混入量を加味した水深の1.5~2.0倍を余裕高にする。
  2. 大規模な急流工に関して
    F=0.6+0.037v・h1/3
  3. 小規模の急流水路に関して、
    FB=Cvh1/2 
    C=0.1(長方形水路)、0.13(台形水路)

水路余裕高の計算方法の理由について

計算

余裕高は原則として、以下の条件に対する余裕を加味して計算されています。

  • 水路粗度係数の変動に対する余裕
  • 流速水頭の静水頭への変換の可能性に対する余裕
  • 水面動揺に対する余裕

水路粗度係数の変動に対する余裕

水路表面の粗度係数は、

  • 水路表面の粗度
  • 植生
  • 水路の湾曲断面形状
  • 流速
  • 径深
  • 土砂の堆積と洗掘
  • 浮遊物質

などの影響により、かなり幅広く変動します。

この中でも、「植生・水路の湾曲断面形状・土砂の堆積と洗掘」に大きな影響を受けるので、開水路のみ考慮します。

水路の材料・断面形等によって異なり、無ライニング・ライニング水路の場合水深の5%、擁壁型水路の場合水深の7%を考慮します。

  • 無ライニング・ライニング水路
    Fb=0.05d+βhv+hw
  • 擁壁型水路
    Fb=0.07d+βhv+hw

流速水頭の静水頭への変換の可能性に対する余裕

水路の障害物への衝突・断面の急変などにより、流速水頭が静水頭へ変換が起きます。

水路の状況に応じて、50~100%の変動を考慮する必要があります。

流速水頭による水面上昇要因が特に考えられない水路、例えばゲートなど水位堰上げ施設が下流にない場合は、50%

水路の規模・需要度・構造物の配置などにより水面上昇が予想される水路、例えばゲートなど水位堰上げ施設が下流にあり、余水吐き・バイパスがない場合、100%

  • 無ライニング・ライニング水路
    Fb=0.05d+βhv+hw
  • 擁壁型水路
    Fb=0.07d+βhv+hw

水面動揺に対する余裕

水路中の流れは水路中のゲート・落差工・急流工・ポンプや風などにより波動を起こし水面を動揺させます。

水面動揺の程度は、以下の条件によって変化します。

  • 水路中の構造物の配置
  • 風向と水路の関係
  • 水面幅・水深・流速

普通10~30cm程度と考えることができ、その半波高として5~15cmを水面動揺に対する余裕として考慮します。

以下の条件を1つでも該当すると0.05m≦hw<0.10m1つも該当しないと0.10m≦hw≦0.15mで考慮します。

  • 広い地域に関係する重要な幹線水路、人家に近い盛土水路
  • サイホン、トンネル、円形、馬蹄形暗渠等の直上流部
  • ゲート、スクリーンや水路の急な湾曲等、堰上げを起こしたり波動の原因となる構造物の上下流部
  • 分水工、余水吐等の管理情況によって、予定以上の流量が水路を流下することがあると考えられる場合

余裕高を考慮した壁高の決定

水路

余裕高を求めて壁高を決定する場合、以下の3条件のうち最大の壁高を設計値にします。

  1. 壁高h=設計水深+余裕高
  2. 壁高h=1.2Qの等流水深
  3. 壁高h=洪水流入時等流水深df+0.3

余裕高を計算しても、設計値の壁高に関与しない場合がありますので、注意が必要です。

まとめ

田んぼ 排水路

水路の余裕高についてまとめました。

「のうぎょうとぼく」の中では、農業土木に関する豊富な記事を書いています。

農業土木について勉強できる本については下記にてまとめていますので、ぜひご覧ください。

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