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一時利用地の指定(仮換地)について

一時利用地の指定(仮換地)について
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一時利用地の指定とは、換地を伴う土地改良事業において、工事着手から換地処分までの間(権利関係が確定するまで)、従前の土地にあった使用収益関係を停止させます。

代わりの従前の土地に照応する他の土地(一時利用地)を耕作などの使用収益関係を設定することです。

工事前後の使用収益関係を調整し、換地処分を円滑に実施するために行うものです。

一時利用地を指定する理由

書類

一時利用地を指定する理由は、

  • 「土地改良事業の工事のために必要な場合」
  • 「換地計画に基づき換地処分を行うために必要な場合」

があります。

土地改良事業の工事のために必要な場合

ほ場整備などの土地改良事業の工事で、土置場や資材置場が必要になる。

従前の土地の使用収益する権利者に、他の土地に移ってもらい使用収益を設定します。そこで、従前の土地の使用収益関係を一時空白にし、工事にて使用します。

使用収益関係を空白にした土地は、所有者や占有者の同意なしで工事を行うことができます。

不同意者の土地をこうした土地に指定することで、工事の立ち入りが制度上できます。

しかし、現実問題として、そこまでの強行的に行うことは、まれなことです。

換地計画に基づき換地処分を行うために必要な場合

工事を着手してから換地処分が行われるには、4~6年ほどかかります。

換地処分までの間、新しく造成された土地に、換地処分に相当する使用収益関係を設定します。

この一時利用地の指定を、「仮換地」と言われます。

一時利用地指定の際の基準

基準

一時利用の指定がそのまま換地として確定するといった事例が多くなりましたが、一時利用地の指定に関しては、権利者会議による議決を経る必要はないため、権利が保障できません。

したがって、一時利用地の指定は、あらかじめ換地計画基づいて行われなければなりません。

地域の事情によって、換地計画を作成する前に一時利用地の指定を行うことが多くあります。

そこで無計画に指定を行うと、換地の円滑的な施行を妨げる原因になります。

そうならないためにも、関係権利者の合意を基礎に作成された換地設計基準・換地計画原案を定めて、これを考慮しなければなりません。

これらの基準などをもとに、従前の土地の所有者の申出・同意のあるもの、仮清算金が支払われたものについて使用収益の停止などを行うことができます。

一時利用地の指定に伴う損失補償・利益保証・仮清算

精算

一時利用地の指定により、従前の土地で使用収益できずに損失を受けたというときは、補償をしなければなりません。

その補償の対象になる損失は、法的には「通常生ずべき損失を補償」と規定するのみです。

一時利用地を指定されなかったことに対する補償は当たり前であるが、指定されたときの補償は判断が困難になります。

通常、一時利用地にしていされた土地が、以下の場合に指定された場合に損失補償を行います。

  • 従前の土地と比べて面積が著しく小さい土地
  • 従前の土地と比べて著しく条件が悪い土地(湧水地等の特殊地)

補償額の算出については、標準小作料を参考にする場合が多くみられます。

補償の逆で、利益の徴収については、以下の指定された場合に利益の徴収を行います。

  • 従前の土地と比べて面積が著しく大きい土地
  • 従前の土地と比べて著しく条件が良い土地

一時利用地の指定により使用収益の停止を行う場合には、これらの行政処分が行政手続法に規定する不利益処分に該当することとなるので、あらかじめ、弁明の機会を付与するため、関係権利者に対し通知を行わなければならない。

ただし、都道府県知事の認可に係る換地計画に基づき行われる場合には、弁明の機会を付与する必要はありません。

一時利用地の指定に伴う仮清算

清算

一時利用地は将来換地になるべき土地であることため、換地が確定してから清算金が確定するのを待たずして、指定に伴って金銭清算を行える借清算の規定があります。

換地面積の確定測量が行われる前の地積であり、確定測量により面積が変動する可能性があるので、「仮」である。

この仮清算を行うには3つの条件があります。

  1. 仮清算を行う必要があると認められる。
  2. 換地計画が定まっている。
  3. 従前の土地全てに先取特権・質権・抵当権が設定されていない。

この条件をすべて満たす必要があり、実質この条件をクリアすることができないため、実際に仮清算が行われることはほとんどない。

一時利用地の指定における使用収益権と所有権の扱い

権利作成

一時利用地の従前の権利者が使用収益を停止しない場合、一時利用地の指定を受けた者が従前の権利者を排除することができます。

それには「土地明け渡しを求める訴」を起こすことで可能になります。

しかし、使用収益権だけが移行・停止されるのみであり、一時利用地には所有権等の権利は従前に残ります。

したがって、従前の所有者が指定に反対して使用収益を停止せず苗を植えた場合、指定を受けた者が苗を引き抜いて自分の苗を植えることはできない。

使用収益と所有権について、気を付けなければいけません。

一時利用地の指定の契約

契約

この一時利用地の指定は換地処分の一連の流れ中で重要な事項であり、覚書・協定書などに明記する必要がある。

土地改良事業施行者に対して、指定状況を確認できるようにし、土地の権利関係で混乱を招かないように努めなければなりません。

まとめ

農地

一時利用地の指定(仮換地)についてまとめました。

「のうぎょうとぼく」の中では、農業土木に関する豊富な記事を書いています。

農業土木について勉強できる本については下記にてまとめていますので、ぜひご覧ください。