新規就農で農業に参入する際に、初期投資費用として数千万の借金を抱えるのが一般的です。
返済が苦しくなる一般的なラインである「年収の3分の1以上の借入金額」をたやすく超過する金額になります。
さまざまな補助金・助成金を使いつつ、完済計画をしっかり立てていたつもりが、全く返済の見込みのない自転車操業に陥ってしまうかもしれません。
一時は上手くいっていたとしても、飼料・肥料の高騰や天候不順・天災などの外部要因で急に借金返済が滞ることもあります。
農家は借金返済地獄に陥りやすく、地獄から抜け出しにくいのです。
そのため、農業で抱えた借金返済地獄を解消するための方法として「債務整理」についてまとめます。
債務整理とは
借金返済が不可能になった場合、法律的に手を打つことを「債務整理」と呼ばれます。
債務整理は、「任意整理・個人再生・破産」の3つに大別され、農業を続ける場合は「任意整理」、農業を続けない・収入が一切ない場合は「自己破産」を選択するのが一般的です。
手続は、原則として弁護士・司法書士が必要です。
裁判所 | 借金について | 財産について | |
任意整理 | 不要 | 利息・期間の変更のみ | 残せる |
個人再生 | 必要 | 最大で借金を1/5 | 一部のみ残せる |
破産 | 借金がゼロ | ほぼ残せない |
任意整理
任意整理は、債権者との話し合いで、利息・返済期間の変更を通じて借金減額を図る手続きです。
借金の元本は変わらないので借金自体大きな減少はありません。
任意整理したい特定の債務だけ自分で選んで手続を行うことができるので、農業機械・土地などの担保がある借金を除いて手続きをすることができます。
そのため、債務整理後も農業を続けたい方は任意整理がおすすめです。
借入額が少なく、利息の見直しで収支が改善して借金返済の見通しが立つ場合には向いています。
家・車などの財産を処分する必要はありませんが、信用情報に傷がつくので「クレジットカードが使えなくなる」「他の借り入れができなくなる」などのデメリットがあります。
個人再生
個人再生は、裁判所に「再生計画案」を提出・許可を得て、借金減額を図る手続きです。
財産評価によって借金の減額幅は変わりますが、借金の元本を最大で1/5に縮小できます。
自営業向けの「小規模個人再生」では、「一定の継続収入があること」「借金が5,000万円以下」いう条件がありますが、財産の没収はないので家・車を残すことが場合によっては可能です。
原則として3年程度で返済できる見通しを立てられる方に限られますが、破産よりも事業再建が早くできます。
破産
破産は、「自己破産・法人破産」を裁判所に認めてもらうことで、借金の返済免除を図る手続きです。
借金減額ではどうにもならない場合にはこの方法しかありませんが、デメリットが非常に大きいです。
生活に必要な最低限度の現金99万円以外、財産全て没収されます。
農家が債務整理をする際の「相談先」
債務整理をする際は、自分だけではなく他者の力を借りましょう。
自分1人では手続きできないだけでなく、借金に追われている状態だと正常な判断がしにくいからです。
経営を指導してくれる人もいないので、農家の経営を叩き直す最後の機会でもあります。
恥ずかしいかもしれませんが、1人だけで抱え込むのは危険です。
相談先として以下の候補があり、気軽に相談してみましょう。
農家が債務整理をする際の「相談先」
- JAなどの貸し手
- 法律事務所
- 法テラス
①JAなどの貸し手
債務整理を検討する前に、借入機関に相談して、毎月の借金の返済額を減額できないか相談すると解決の糸口になります。
JAの融資は低金利で借りられるので、農家のほとんどがJA(農協)を通じて借り入れをしているはずです。
農協や日本政策金融公庫は、農家を救済するため国の借り換え制度「農業負債整理関係資金」の窓口もなので、農業経営負担軽減支援資金・経営体育成強化資金を融資してもらえるかもしれません。
筋を通すためにも相談はしておくべきですが、融資以外にも収支計画のアドバイスをもらって状況が好転する場合があるので、一度相談してみましょう。
②法律事務所
債務整理は、司法書士・弁護士を通じて、債権者と交渉するのが一般的です。
「債務整理をするべきかどうか、どうやっていくのか」、ますは司法書士事務所に確認するところから始めます。
ツテがあればお近くの法律事務所に相談しましょう。
もしツテがなければ、全国対応24時間365日無料相談を受け付けてくれる法律事務所の利用を検討してください。
債務整理に強い法律事務所がおすすめで、弁護士法人ひばり法律事務所なら快く相談に乗ってくれます。
お問い合わせフォームから気軽に相談できるので活用してみてください。
③法テラス
法テラス(日本司法支援センター)は、総合法律支援法第14条に基づき、独立行政法人の枠組みに従って設立された法人で、総合法律支援に関する事業を迅速かつ適切に行うことを目的としています。
法制度に関する情報を無料提供する業務を行っているので、「経済的に相談できない」「相談相手がいない」など困ったときに頼りになるのです。
債務整理に関して包括的に教えて頂けるし、セカンドオピニオンとしても役に立ちます。
まとめ
農家ができる「債務整理」についてまとめました。
借金は早期に対処・対策をしなければ離農が避けられない状況に陥ります。
少しでも借金返済が苦しく感じるのであれば、他人の手を借りましょう。
借金に関する悩みから解放されて、生活を見直したり、農業に前向きに取り組む余裕が生まれます。
もし離農を考えているなら、やることがたくさんありますので、離農の手順について下記記事でまとめいますのでご参照ください。
参考ページ:【離農の手続き】農業を廃業する手順・注意点まとめ